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提言 作業療法士と職域のこれから

投稿者:ひろえもん 最終更新日時:2017年10月 1日 13:49

作業療法の職域は、まさに現在変化の只中にあるといえます。

それは、作業療法士の本来の視点である、生活に直結する介入が社会にとってますます必要なものになってきているからです。真新しいことは、何も書いてませんが再確認の意味をこめて。

作業療法を取り巻く環境の今

個人レベルでの作業療法の重要性はむしろ、変わっていません。今も昔も、作業療法の視点は大切なものです。それを今後は地域のなかで実践していくことを社会から期待されるようになってきているのです。

「理学療法士および作業療法士法」が制定されてから30年あまりが経過した今、社会は超高齢社会に突入しつつあります。

それに伴って、認知機能に障害をもつ生活者の方や脳卒中の方など、これまで作業療法が対象としてきた疾患を抱えながらも生活を再構築していくことが必要な方の割合がますます増えていくことを多くの識者が予言されています。

そして、事実日々そうした方々の割合が医療の中でも比重をましてきている実感があります。

また、社会構造の急速な変化のひずみなのでしょうか、精神疾患で受信される若い人々も、これまで統合失調症がもっとも多かったけれども、本当に急速に薬物依存やうつ病、あるいは適応障害などの診断を受ける方が増えています。

発達障害などの診断も細分化し、発達領域での専門性もこれまでになく問われています。

このように作業療法を取り巻く情勢は急速に変化しています。

言い換えると、作業療法が今後、どのような方向性で、どのような役割を果たしていくのかが問われていると言うことです。増え続ける対象者の方々へ、きちんと専門性とサービスを届けられるかを、社会から厳しく判断される過渡期にあるといってもよいかも知れません。

これまでの作業療法の職域

私見で作業療法の今までを適当に述べます。

これまでに影響力のある作業療法士の職業は、主に病院づとめか、大学・専門学校などの養成校の教育者でした。
それは、作業療法士がどの領域で活躍してきたひとが多いかということを象徴しているように見えます。

作業療法士はいくつかの世代に区切ることができるように思います。

海外から作業療法を日本に持って帰った留学経験者などの第一世代。
そうした人々から教育の現場で、作業療法の教育を受けて、日本の作業療法の土台を作った第二世代。
大量に増えた要請校で排出された人材が、主に病院に就職してサラリーマン的に働くようになった第三世代。

当然、作業療法士全体の割合を見ると、第三世代が一番たくさんいます。

ある程度できあがった流れの中に就職していく人間が多いので、良くも悪くもサラリーマン的になりやすい環境がととのっています。そして、それに順応して働いている作業療法士の方も少なくないと思います。

ある意味、作業療法士の数が増え、提供できるサービスにも広がりがあった、牧歌的な時代だったといってよいと思います。

蛇足ですが、私自身は第三世代の人間ですが、教員の先生は第一世代から第三世代までおられるわりと恵まれた環境でした。そろそろ第一世代の先生方が定年で辞められ始めたことを考えると、今後の教員の先生方は第二世代や第三世代の方が増えていくのだと思います。若い先生方の活躍が今後の日本の作業療法を大きく左右することになるでしょう。

日本の財政的背景

日本の財政はあまり芳しくありません。今後ますます、日本のお金を発生させる能力は低下します。

そこで、将来を見据えてこれまで医療や福祉に投下していたお金の流れを見直す方向に来ています。

具体的には、ここ最近の日本の医療や福祉の基本的な考え方は、財政収支のバランスの悪化を改善などの目的の下

  1. 入院中心のサービス業から、地域における総合的なサービス提供への転換
  2. 権限委譲を含めた広域圏から中・小圏域への転換
  3. 機能集中から機能分化とその効率的相互作用への転換
  4. 施策実施のための財源の考案

といったものであるといえます。

単純に言うと、財政支出を減らすということで、なんとか保険の点数を切り下げよう、あるいは効果の乏しいものについては点数そのものをつけるのをやめようという方向に話がすすんでいくようです。
そして実際に、このような考え方に基づいて、医療保険から介護保険へのつけかえが行われたり、リハビリテーション医療の地域移行などが行われようとしています。

作業療法の職域のこれから

厚生労働省に作業療法士の代表が話をしにいくと、「言っていることはもっともである」「だから、そのエビデンスをしめせ」といわれるそうです。

エビデンスが示せないものについては、お金を出しません。

という流れになりつつあるようです。

そのエビデンスが作業療法では圧倒的に不足しているのではないか、というのが厚生労働省の見解らしいのです。

ここでまたまた私見ですが、エビデンスがないのはおそらく、多くの作業療法士が所属している病院という組織のあり方と作業療法士という職業が実は結果を出す上でマッチしていないのではないかと、邪推しています。

つまり、病院内でのリハビリテーションでは、作業療法の強みが100%生かせるような環境には無いということです。

生活の場を想定したリハビリテーションが、果たして病院でできるでしょうか。
というのも、病院という環境のなかで発揮されるその方の言動は、その方のほんの1部分を切り取ったにすぎないからです。
もちろん在院中から、しっかりとその方の退院後の生活を見据えた介入を的確に行い、結果をだされている作業療法士の先輩もたくさんしっております。

しかし、多くの若手の量産型作業療法士には、病院の中で働きながら、退院後の生活を的確に想定するのは、少し荷が重いのではと感じています。

そうした意味では、むしろ現場が具体的に把握できる、訪問などのアウトリーチ型サービスで働くほうが若手にとっては仕事がしやすいのではないかとも思っています。

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そして、しっかりと、生活上の具体的問題を解決することが作業療法士の強みを発揮することに直結します。

病院から地域へという国の施策とも矛盾しません。

さらにいえば、現状の枠組みで就労困難な方々によりクリエイティブな枠組みで一緒に挑戦を続ける作業療法士の方も増えてきています。働ける人が増えると、地域社会も元気になるので、これまた国の施策にぴったりフィットします。

学校などで、診断のついていないグレーな発達障害圏の子供たちと関わり、学校、親、友人との関係性のマネージメントをコンサルタントしている作業療法士もいます。

病院に対して、利用者が安心安楽で従業員も働きやすいような構造を、外部の人間としてコーチングしている作業療法士もいます。

あるいは、東日本大震災で被災した人々のところに行って、コミュニティー再建の一助を担った作業療法士もいます。

そうした作業療法士の仕事は、対象者と地域を結び、いろいろな勇気付けにつながり、社会を元気にするものです。

作業療法士は、もっと地域社会に出て行って、医療保険以外の枠組みで、さまざまなリハビリテーションに貢献することがこれからは必要になるし、作業療法士が本来するべき仕事も、示すべきエビデンスもそこにあるのだと思っています。

職人気質な業界である日本の作業療法士界にとっても、そっちのほうがマッチしているといえるでしょう。

また、質的研究が難しかった作業療法ですが、ビッグデータがわりと気軽に扱えるようになってきていることから、きちんとしたエビデンスを示す意味でも、データサイエンティスト的な作業療法士の存在が、業界から求められることになりそうです。

作業療法士の仕事は、人口減少や少子高齢社会の進行に関わらず今後ますます広がっていくでしょうし、作業療法の本来の趣旨から言っても、そうあるべきでしょう。

そのほうが、楽しく作業療法ができるし、楽しい作業療法士も増えそうです。

結果として社会もハッピーになりそうです。

現状維持な作業療法士はどん詰まり

国のお金は今後病院に流れていかなくなります。

高機能な病院に医療費を集約するのか、全体として削るのかはわかりませんが、すくなくとも医療費が増えることはありません。つまり、病院づとめの作業療法士の給料は減ります。

これから、この流れはどんどん加速していくでしょう。とくに、これから先は、作業療法士養成校が病院の需要と比べても、大漁にある昨今、病院勤務の作業療法士の数が飽和していくと考えられます。となると、病院で働くことの出来なくなった作業療法士は、仕方なく地域で活躍する道を探るようになるのでは無いかと思います。

でも個人的には、仕方なくで働けるほど、地域の仕事は楽じゃないし、続かないし、それじゃあ、何のために作業療法士やってるのかわからないし、絶対に面白くないと確信して言えます。

たしかに、病院での労働は、システマティックゆえ安定しており、作業療法士は経営者の指示に基づき、その指示を逸脱しない範囲で活躍すればくいっぱぐれはありません。しかし、そういった職場は、これからわりと不毛な奪い合いになり、殺伐とした職場になっていくかもしれません。すべては、経営者の手腕しだいですが。

あるいは、作業療法士全体の数が増えることによって、一人当たりの給料の額はさらに低下していくものと考えられます。国が配分できる予算には限りがありますから。
今現在においても、今専門学校や、大学の先生がもらっていた初任給などと比較した時、かなり少ない額なんですよわれわれの初任給。べつにお金がすべてじゃありませんが、これからも、この傾向はより顕著になっていくと考えられます。

これまでのように、「リハビリを必要とする人が増えるはずだから、リハビリ職はくいっぱぐれがないはず」といった理論は通用しないようになっていくでしょう。

でもって、臨床ではあんまり結果が出せないとなったら、なんかメンタルやられそうじゃありませんか。

提言 作業療法士の中堅以上は地域へ出よう

なんなら仕事を創ろう!

何年も同じ職場に働くことで、生産性を発揮できる場合もあるとおもいます。

逆に、ほかの領域に勤めていたからこそ発揮できる生産性もあります。

作業療法士の場合は後者のパターンが間違いなく多いです、ヒラのサラリーマンとして働くなら。

自分自身のスキルアップのためにもなるし、社会貢献にもなるし、何より自分の作業療法の対象者の方に喜んでもらえる。そんなこんなを考えたら、絶対に作業療法士は地域へ出て行くべきだ、と確信しています。

転職市場や流動性が高まれば、自然と病院側が支払う給料もあがりますしね、結果として。

今後、こういう作業療法士がほしい

あとは個人的なこーいう作業療法士が増えたら面白い説
半分冗談 半分本気

ITなOT

新しい情報が求めればいくらでも手に入る時代になり、ITがかなり安価に使えるようになりました。

情報をたくさん裁かないと、いい作業療法はできないので、どの職域においてもITのスキルは必須になるとおもいます。そして、なんなら必要なツールは自分で作っちゃえ、というそういう作業療法士さんが増えたら、もっともっとおもしろくなりそうです。

ブロガーOT youtuberOT

よりフラットに社会に向けて情報発信をする作業療法士も増えてほしいです。
自分の見たこと感じたことを、プライバシーにはもちろん影響ないように加工して発信できるOTさんが増えるといいなーと思います。

フリーランスOT

医療保険とか介護保険とか国のお金に頼らないビジネスモデルで勝負できる作業療法士が増えたら世の中もっと面白くなる。企業の働き方のコンサルとかで活躍できる要素が、優秀な作業療法士にはぜったいにあるとおもうからです。

最後に

いろいろ書いちゃいましたが、作業療法士は可能性のある仕事だと思います。
その可能性を作業療法士自身がきちんとわかって、いろいろなことにチャレンジしていくことが、いまのこの世の中を作業療法士が楽しく生きていくためには必要なことだと、臨床しながら感じています。

    
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