即席めんと高齢者層とステマ(もどき)

少し気なったので。後の文章でも言っておりますが、この文章全体について即席めんを否定したり、その使用が悪いといってるわけではありません。ただ、それを高齢者に売るために行っているマーケティング活動が、「なんだかなあ」と感じたので、そのことについて書いています。

以下の記事について書いています。

即席麺使い高齢者に健康的な食事を…兵庫・朝来市で実習

 過疎化の進行や公共交通の廃止・減便などで、食料品を自力で購入できない「買い物難民」になったり、面倒な調理を避けて栄養バランスを崩したりするお年寄りや単身者が増えていることから、どこでも安く買えて、調理も簡単な袋入り即席麺を活用したレシピの普及を目指した活動。日本栄養士会が、日本即席食品工業協会と協力して全国各地で開いている。

記事を表面的に読めば、高齢者の「買い物難民」の問題や栄養バランスの改善に貢献することが目的のようですが、その実、即席食品における高齢者層の市場を開拓しようという意図が全面に押し出されており、まるで買い物難民の問題や栄養バランスにかんしてはあとからとってつけたかのようないい加減さがにじんでいるように自分は感じました。

繰り返しますが、インスタントラーメンが悪いわけではないです。また、活用することで、上記問題がが改善されるなら何も言うことはありません。

が、『過疎化の進行や公共交通の廃止・減便などで、食料品を自力で購入できない「買い物難民」になったり、面倒な調理を避けて栄養バランスを崩したりするお年寄りや単身者が増えている』問題を解決する事に、『どこでも安く買えて、調理も簡単な袋入り即席麺を活用したレシピの普及を目指した活動』が貢献する可能性は低いのではないかと個人的に考えます。

そこには、以下のような2つの理由があります。

まず、即席麺が「買い物難民」問題を解決する手段として選択される必然性は全くないといえます。そもそも「買い物難民」が「即席麺を『買える』」ことを前提にしているという矛盾が存在します。食料品を購入できないはずの「買い物難民」がどうやって即席めんを購入、あるいは入手するのかという問題がです。ひょっとすると、即席めんは、ほかの食品に比べて入手しやすいのかもしれませんが、そんな話もデータも、僕はついぞ知らないので、知っている方がいたらぜひ教えていただきたいです。大体、即席めんが置いてあるような店であれば、たとえば米やお菓子など、ほかの日持ちがする商品も売っているはずです。

「即席麺は長期保存が可能なので、買い物難民問題の解決に役立つ!」という主張に関しては、その主張を認めつつ、一方で「でも、コメのほうが利便性が高いのでは?」と強く思います。米も、買いだめと長期保存が可能ですし、炊いたあと食べきれない場合にも、1週間程度であればラップやタッパーなどに入れて冷蔵庫で保存しておくことができ、その冷ごはんは電子レンジで温めればすぐに食べることが可能です。即席麺は、一度調理してしまうと、保存がきかず食べきるか捨てるかしなくてはなりません。「買い物難民」の問題を解決するためにインスタントラーメンが登場する必然性は全く無く、「米でいいじゃん」ということになります。

以上から、即席麺が「買い物難民」問題を解決する手段として選択される必然性は全くないといえます。

また、2つ目の理由は、即席麺を用いたメニューの提供が、栄養バランスを改善するよりもむしろ悪化させる状況のほうが想定しやすいことです。もそも論ですが、面倒な調理を避けて栄養バランスを崩したりするお年寄りや単身者がはたして即席麺を栄養バランスに気を付けて使い続けることができるでしょうか。

たとえば、普段から面倒な調理を避けて栄養バランスを崩しがちな人に、たとえばインスタントラーメンと、それをアレンジするための食材とメニューを一緒に提供したとします。その人は、どのような行動をする可能性が高いでしょうか。僕は、手軽に利用できる即席麺を頻繁に利用するものの、アレンジを加えないまま食べてしまうのではないかとおもいます。普段から栄養バランスが崩れがちな人の栄養バランスを、さらに崩してしまう危険性があるように感じます。栄養バランスが崩れるのは、食べるものが悪いというよりは食べるものが偏るような食生活、習慣に問題があると考えられます。つまり、栄養バランスが崩れている人は、普段からの食習慣に何らかの偏りがあると考えられますが、その偏りを助長しかねず、栄養バランスの改善という観点からは、あまり適切な提案であるとは言えないと思います。

以上から、即席麺を用いたメニューの提供が、栄養バランスを改善するよりもむしろ悪化させる状況のほうが想定しやすいと考えます。

(付け加えると、使用する食材も問題解決にそぐっていないように思います。高級感を出す狙いで使用したのかもしれませんが、松葉ガニや丹波牛肉といった、調理も必要な具材を使用している点が、明らかに「面倒事を避ける人」向けではないと感じました。それよりは、ツナ缶をはじめとした缶詰類やハムなどの製品、乾燥わかめなど保存がきいて、いつでも手に入るもので、かつ、調理が不要なものを使用したほうが、手間がかからず簡単にタンパク質や食物繊維などを追加できると思います。)

以上2つの理由から、大義名分と実際にやってることがちぐはぐだという印象と、強い違和感を覚えました。

確かに、「買い物難民」や「栄養バランスの不良」といった問題解決のために講習会を行うという方法論自体は、間違っていないように思います。ただ、その内容が上記の問題の本質とそれを踏まえた解決方法からかい離しており、また、講習会で即席麺を使用する事が前提になっているところがどうしても整合性が取れず、違和感の原因になっているように思います。

そもそもの出発地点が、「即席めんのマーケティング」にあるのであれば、「即席麺の使用」が必然性を持つような問題を取り上げるべきだったのではないでしょうか。日本即席食品工業協会殿。やってることと言ってることの整合性がいろいろと不自然すぎて、ただマーケティングがまずいという問題だけでなく、日本即席食品工業協会から日本栄養協会へ向けての資金の流れが透けて見えるのも企業イメージとしてはよろしくないです。

今回の講習会が、問題解決に役立ったかどうかは、いずれにせよ、統計的なデータがぜひほしいところです。

そのデータは簡単でシンプルなもので構わないと思います。たとえば、参加した人の群とそうでない一般人からなる群を比較して、栄養バランスを崩している人の割合比較の研究を行うとか。ひょっとすると(たとえ善意でやっていたとしても、)参加した群のほうが栄養バランスを崩しているなんていう結果が出ることも考えられなくはないので、日本栄養士会並びに日本即席食品工業協会には、ぜひそのあたりのデータは取っておいてもらいたいなと思います。

若者が金を使わなくなってきており、さらにその絶対数も減っているため、高齢者をターゲットにしたマーケティングはこれから、増えると思いますが、ステルスマーケティングチックなものはできるだけしないほうが健全だなぁと思ったのでこの記事を取り上げました。

さて、この問題に作業療法としては何ができるでしょうか。


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