作業療法士に役立つよくわかる触診のコツ。ひろえもんの触診の方法論と、出来るようになるためにやったこと。

作業療法の、どの領域においても、作業療法士にとって評価の基本的手技である、触診についてのコツと練習方法を紹介します。

はじめに

作業療法でも、触診て、案外重要なんですよね。

「PTさんの仕事やん」

て言う人もおりますが、触診のできない作業療法士よりできる作業療法士の方が、関わってもらいたいと思うし、安心感が違いますよね。

実は、OTSさんとtwitterにてこんなやり取りをばいたしました。

何から評価したらいいかわからないと言うのは、作業療法学生と新米作業療法士のあるあるネタだと思います。

実際、自分も実習中にどの評価から始めるか、非常に苦労したなあということを思い出しました。

ですので、この記事を読む前よりも、「ああできそう」と思ってくれる作業療法学生さんと、新米作業療法士が増えたらいいなと思って書きます。

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評価に必要なこと

まず、作業療法における評価において必要なことはなんでしょうか。

私は以下のようなことが必要と考えています。

・正しい知識

・正しい推察

・正しい確認、検証

正しい知識

触診であれば、筋肉や腱などの体の構造を知らなければ、どこに触っているのかわかりません。

地図もなく、文字も読めない外国の街を歩いて、目的地を探すようなものです。

とても効率が悪く、見つかる保証もありません。

作業療法の時間は、身体障害領域においては、1単位が20分です。

大げさに言えば、評価に無用な時間を要することは、作業療法対象者の十分な治療を受ける権利を奪うことに繋がらないでしょうか。

正しい推察

上記でも述べたように、時間のリソースは限られています。

正しい知識を十分に生かすための、戦略が重要です。

より効率的に、問題を特定するには、推察が欠かせません。

先ほどのように旅行に例えましょう。

目的地にたどり着くために、街をやたらめったら歩いて見つけるのは筋が悪いですよね。ではなく、きちんとランドマークを特定し、ランドマークとの相対的な方向や距離から目的地の場所を探すと、おおよその場所の目安がつけられるので、見つかりやすいはずです。

研究ではあり得ませんが、臨床においては、「だいたいこんな感じ」というのは極めて重要です。

正しい確認、検証

ただし、「だいたいこんな感じ」が、活きるためには、

「これで良い」

を確認できる根拠が必要です。

そこには、結果を知識に基づいて、分析する能力が必要です。

ここでも旅行に例えます。

到着した場所が、目的地だと理解できること、そしてそれによって、自分が通ってきた道のりは正しかったと言えることが、正しい確認と検証に対応します。

コラム やはり慣れは重要

上記3つの要素に加えて、重要なファクターとして「慣れ」があると思います。

例えば触診であれば、「患者様に触れる」と言うそれだけで、慣れるまでは緊張してしまいますよね。

こうした緊張に影響されやすい作業療法士は、結局、回数を重ねることでしか、「できる」感覚は味わえないものなのかもしれません。(ちなみに、私はこのタイプです。)とかいきなりこんな事を書いてしまっては、しょうもない、と思われるかもしれないですが、始めたばかりでできないのは当たり前なので、落ち込む必要はないと言うことです。

要するに、何が言いたかったかと言うと、継続が重要ということです。

触診の重要性

さて、そんな感じで触診なのですが、触診はもちろん、作業療法士にとって重要な技術の一つです。

死ぬほど抱えた苦手意識がいつの間にか消えて、できるようになっていたってだけで、よくよく考えると自分も触診苦手意識あったなあーということを思い出しました。

現在、精神科勤務なので、がっつり触診が必要になることは少ない、むしろ全然ないのですが、それでも、ときに不全麻痺の作業療法対象者の方とかもおられますし、筋肉の痛みを訴えておられたらそれが身体的なものか、精神的なものかを判別できないと介入するべきポイントが全く異なるのでやっぱりできるに越したことはないなあと思います。

触診は、「評価で必要なこと」の「正しい確認、検証」における強力な武器です。

重要です。

触診のポイント

触診でのポイントと、習得方法についてざざっと書いてみたいと思います。

間違っていたらすみませんです。ご指摘ください。

とくに、身体障害系で日夜、触診されている方のご意見伺ってみたいです。

よろしくお願いいたします。

触診とは

患者様に触れることによって、観察対象の状態を見ることです。

観察対象とは、具体的には、筋肉や骨、靭帯の状態や、その機能をみる事だと思います。

その認識で話を進めます。

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MMT(徒手筋力テスト)できますか?

触診の中でも、非常にポピュラーというか知名度が高いのが、MMT(徒手筋力テスト)です。

たとえば、脳卒中後の検査でMMTは、やって当たり前ですね。

MMTは、触診として典型的かつ代表的で語りやすいので、まず、MMTを念頭において話をしていきたいと思います。

触診は、目的の意識がとても大切ですが、MMTにおいては、明確に筋肉を調べたい、特にどの筋肉がどの程度作用する能力を持っているのかを調べたいという明らかな目的があります。

やり方は一意であり、その評価の方法も非常に単純で、多くの人に共有される方法論です。国家試験にも当たり前の知識として出てくるものでもあり、すべてのOTRが一度はきちんと暗記するものでもあります。

このような書籍もあります。詳細が書いてあります。高いですけど。

できて当たり前と思われる内容ですが、できない人はできないです。

全員習っている内容なのに、なぜでしょうか。

きっといくらかわからないポイントがあるのだと思うので、自分の中にある思い当たる節を書いていきます。

基本的な用語わかりますか?

MMTにかぎりませんが、触診関連の解説書や指南書には、解剖学的肢位とか正中線とか、肩峰とか、解剖学的な用語が基本的に理解の前提として当たり前のように出てきます。

つまり、解剖学などの専門用語があやふやだと、解説書に書かれている事柄を実践するだけでも難しく、ましてや、意味をしっかりと理解しながら、正しい方法を身に着けることもできません。

解剖学などで、出てきた用語に自信がない場合には、それを放っておかずに、時間を見つけて調べることをお勧めします。

筋肉の前の骨学

筋肉を単体で覚えようとするとかえって理解が難しいです。

冒頭でランドマークが大切という話をしました。

筋肉を触診することは多いですが、その場合、筋肉を触るよりも、骨を触った方がわかりやすいので、骨をランドマークにしてそこからの相対的な位置を頼りに筋肉を探すべきです。

どこから起こって、どこで終わる筋肉なのかが、名前と一緒に把握できていると、おおよその機能の正しい推測ができます。なんと、逆に、筋肉の機能から筋肉の走行を予測することもできますが、それは骨に対する正しい知識があればこそです。

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筋の走行の深さ

触診をきちんと行えるためには、きちんと筋の走行を知っておくことは大切だと思います。

一方で、深いところにある筋肉を頑張って触ろうとする新米作業療法士がいました。私のことです。頑張ってもさわれません。いくら走行が正しくても、です。

つまり、皮膚からどの程度の深さのところに、どの筋があるかなどは、大まかに把握しておく必要があるということです。

こればかりは、経験関係ないです。書籍などで別途勉強するしかありません。

実際に人体解剖に立ち会える人はあまりいらっしゃらないと思いますが、解剖学の教科書などに書かれている筋肉の断面図や人体模型などで、ある程度勉強できると思います。

今持っている解剖学の教科書にしっくりとこない人はこちらの名著がお勧めでございます。もっさりしていて、面白さのかけらもありませんが、役に立ちます。



物理学的な知識

物理嫌いな作業療法士が多くて個人的に悲しいです。

少し分かってるだけで、骨と筋肉と機能との関係性が、動的で生き生きとしたものになります。触診だけでなく、動作指導などにも使えます。作業療法士の強力な武器だと思うのです。

例えば、モーメントや、力の概念、運動方程式などがそうです。

とくに、モーメントの考え方は、国試の勉強の時にも役にたちますし、臨床に出てからも移乗とかでかなり使うように思います。すでに就職している人は、なおのこと勉強して感覚と結びつけることが必要だと思います。

国試の問題では、たとえば、トレンデレンブルク徴候とかの理解にもつながりますし、わかっておくといろいろ助かる場面が必ずあります。

 触っている感覚

そして、個人的にとても重要だなとおもっている物があります。

それは、筋肉や、骨に触っているという感覚です。

何を当たり前のことをと思われるでしょうが、この当たり前の感覚が得られるまでには、何度も触診を繰り返して、経験を重ねることが必要だと思います。「筋肉に触っている」という事がわからないと、実は触っているのにいつまでたっても「触診が出来る」という感覚に至れませんよね。

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おすすめ触診の練習法

作業療法士が、触診上達するためには、最後に述べた感覚を身につけることが近道だとおもってます。恐れずに挑戦しましょう。

そのためには、次のような方法をお勧めします。

自分の上腕二頭筋で遊ぶ

まず、自分の上腕二頭筋に触れてみましょう。

なぜなら、上腕二頭筋の走行は単純です。さらに、機能もわかりやすい。

見た目でもわかりやすい。

さらに、皮膚表層に近い筋肉で触りやすい。

筋腹周りに紛らわしい筋肉も無いので、同定もしやすいです。

どうしてもわからないひとは、前腕外転位にして、肘を屈曲しましょう。

かなりわかりやすくなると思います硬くなったのが上腕二頭筋です。

わかりましたか?

これは内転位ですよ。

分かったら、肘の曲げ伸ばしをして、そして触ってみた違いを認識しましょう。

ある程度、触ってると力が入っている時の筋の触り心地と、脱力時の違いが何となくわかるようになってきます。

そのうち、力が入っていない上腕二頭筋でも走行がわかるようになってくると思います。

自分で、自分の上腕二頭筋触って、走行がわかるようになったら、他人の上腕二頭筋を同定する練習を学友やら同僚と一緒にしましょう。

このとき、相手も自分の上腕二頭筋を触って遊んでいると、自分のを触ったときに「上腕二頭筋を触られる感覚」も同時に習得しているはずなので、触っているところが上腕二頭筋かどうかの判定って容易だと思います。

あとは大きい筋肉で、色々試していきましょう。このようにして、いろいろな筋肉で、触っている感覚をつかんでいくことで、筋の触診って出来るようになっていくように思います。

機能が重複していて、同定が難しい筋肉もありますけれども(股関節内転筋群とか)、そもそも臨床にて筋単体の働きが重要になることって、手の外科等をのぞけばそんなに無いような気もします。

ですから、そんなに、過敏になる必要もないのかなあとおもったりします。

コラム 神経

支配神経と神経レベルがある程度理解できていると、麻痺のある患者様とお話しさせていただくときに、不必要におどおどする事が少なくなるので、触診のついでに神経について学び直すのもお勧めしたいです。

国試にも出ますしね。

おわりに

そんな感じで、触診苦手意識MAXだった私が、いつのまにか何となく触診できるようになった方法とかについて書いてみました。

自分自身書いてみて、学生時代あれだけ苦手意識あったのに、実習とOTRの経験をとおしてそれなりには出来るようになるもんだなあとしみじみとおもいました。

ひょっとすると書き落としがあるかもしれません。

何かあったときには、随時、追記したいと思います。

まとめ

触診は、作業療法の評価法の一つで重要。

触診は怖くない。


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