作業療法における「作業」という言葉の意味

作業療法における「作業」とは何でしょうか。日本で一般的に使われる作業という言葉と、作業療法における「作業」という言葉は、その広さに大きく隔たりがあります。

作業療法を理解するためには、「作業」についての意味を理解することが必要です。

世の中には作業療法を説明するための言葉が、星の数ほどあります。 管理人がwebサイトを調べた中では、社団法人広島県作業療法士協会 会長 高木 節先生の説明が、素晴らしく明快と感じたので転載してご紹介します。

私たち作業療法士(Occupational Therapist=OT)は、「作業」を利用して、生活をより良い健康な状態に導く職業です。
(中略)
私たちの言うところの作業(ccupation)の意味する事とは、 手芸や手作業などの狭い意味での「作業」とはまったく異なります。
私たちが利用する作業とは、対象となる人が生活の中で「したい事」・「しなければならないと考えている事」を指します。 作業療法士は、その作業を利用して体や心に不自由を感じている方の治療に利用します。
対象者が子供ならば「あそび」を利用して訓練をします。 「あそび」の中の関節の動きや使う力、バランス、集中力や持久力など様々な要素を利用して回復を図ります。 働き盛りのお父さんなら「仕事」になるかもしれません。 大工さんなら釘を打ったり、のこぎりを挽いたり、木を運ぶかもしれません。 営業なら、車の運転技術や計算、書字などになるかもしれませんし、 家族を支える給料を稼ぐ為に、仕事の獲得そのものになるかもしれません。 お母さんなら「家事」なるでしょう。 食事の準備や掃除、洗濯やお買いものかもしれません。 最初から目的の作業ができなければ、段階を踏みながら出来る事を増やしていくことになるでしょう。 お年寄りなら、安心して自分の家で家族と暮らせることが目的になり、 「日常の生活」をきちんとできる事が作業になるでしょう。
この様に作業療法士が提供する「作業」は、対象になる人によって様々に変化します。
それぞれが自分のしたい事ですから、やる気も湧きやすく出来た時の達成感もあります。 端的に言うと作業療法士は、対象となる人やご家族の「心」と「体」を的確に把握して、 その人が求める生活に戻れる「作業」を提供できるように努力していく職業となるのかもしれません。

http://hiroshima-ota.kir.jp/kaicyou-aisatu.html より引用)

作業療法は、さまざまな「作業」をさまざまな形で用います。 同じことをしているように見える場合でも、それぞれの作業は、それぞれの対象の方にとって個別な意味を持ちます。 そして、「その人にとって何が重要なのか」という、その人らしさに着目しながら、作業療法士は、患者様のリハビリテーションをお手伝いします。

作業療法は、occupational therapy の訳語で、その頭文字をとってしばしば「OT」(オーティー)とも呼称されています。

ほかにも、作業療法における作業とは、

「作業とは、日々の生活で行われ、名付けられている一群の活動と課題であり、個人と文化によって価値と意味があたえられたものである。作業とは、身のまわりのことを自分で行うセルフケア、生活を楽しむレジャー、社会的経済的活動に貢献する生産活動など、人々が行うすべての営みである。」(カナダ作業療法士協会(1997)、アメリカ作業療法士協会(2002))

「文化的個人的に意味を持つ活動の一群であり、文化の語彙のなかで名付けられ、人間が行うことである。」(作業科学(1991))

などの定義があります。

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レジャーも作業なんですね。

作業という言葉を使用するときの日常生活での一般的定義としては、

「一定の手順に従って仕事をすること。特に体を使う仕事を指す。その仕事。」

を意味して使われることが多いですが、上記のように作業療法における作業とは、一般に使用されるより広い概念、あるいは理念を包括する言葉として用いられています。

作業療法は、医療、福祉などの幅広い場面で用いられ、実践されています。

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