とあるインテリの、きらきらとした、生と死の突端の記録 「流通ジャーナリスト 金子哲雄 僕の死に方 エンディングダイアリー500日」

はじめに

一気に読んで、どうしてもご紹介したくなったので、記事にしました。

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書店で購入

この本は、今年の、十月前後に肺カルチノイドという聞いたこともないような病気で急逝した(ようにみえた)金子哲雄氏の遺稿というか、辞世の句のような、別れ歌のような書籍です。
昨日、ふと書店に行って、手に取ってみて、気まぐれで買いました。
単純に金子氏は自分の死をどのようにとらえていたのか、そのことについて触れているのか、自分の最後の書籍としてどのような文章を書いているのかが気になったからです。

まさに「一読の価値」あり

結論から言うと、金子氏に迫ってくる死を、読んでいて追体験して感じることができる臨場感にあふれる本でした。
「死に行く当事者としての死」を疑似体験するうえで非常に優れたコンテンツだと強く確信するので、その側面を絶賛しつつ紹介します。

なぜならば、この本は自分が、今後終末期医療というものを考えるとき、そしてその時の作業というものについて考えるときに絶対に参考にすべき内容が詰まっていると感じたからです。

ひろえもんの金子哲雄氏への印象

本自体の紹介をする前に、自分が金子氏にどのような印象を抱いていたかについて少しだけ。

初めて金子哲雄氏を目にしたのは「ホンマでっかTV」だったと記憶しています。
第一印象は、「適当なことを言ってんだろうな、どうせ」、でした。
また、よくわからない人間がポッと出てきて、バラエティーで消費されて、まるでマイナスイオンのように、いつしか消えていくのだろうと思いながら見ていました。

徹底した現場主義

しかし、プレジデントという雑誌に対する寄稿を読んでから印象が変わりました。
その記事は、彼のにじみ出ている胡散臭さは、あれは計算してやっているんだと思いました。
その一部は、プレジデントオンラインで読むことができます。

プレジデントオンライン 金子哲雄

このような文章を作成するにあたって、彼の文章や発言は、とても消費者目線が強いものでした。
(彼自身も、著書の中でそのことについて触れています。わりとざっくばらんに書いてありました。)

ああ、この人まじめな人なんだ

一見するとふざけているように見える彼の言動は、狙いを持って行われていること、彼の胡散臭い発言の裏には地道な実地調査があること。
しかし、それらを消費者には見せることなく、そうすることによって消費者が、気軽にコンテンツを消費できるようにしていることが、しだいに彼の仕事ぶりから伝わってきました。
同時に、最初に金子氏に抱いた印象は、とても誠実で、まじめな人なんだろうなという印象に変わっていました。

会葬礼状

ほとんどテレビを見ていないので、知りませんでしたが、金子氏が激ヤセしているということが話題となっていたようでした。
その話題を知らなかったものですから、ヤフーニュースで、彼が亡くなったと知った時には「はやいな。急にまたなんで?」と非常に驚きました。
肺カルチノイドとかの病名が書かれた、ニュースを見ていて、その中で一つ目を引いたものがありました。
金子氏が生前作成していたという、会葬礼状がそれです。
以下書籍中から引用します。(ネットでも検索すれば出てきます。)

 このたびは、お忙しい中、私、金子哲雄の葬儀にご列席賜り、ありがとうございました。今回、41歳で、人生における早期リタイヤ制度を利用させて頂いたことに対し、感謝申し上げると同時に、現在、お仕事等にて、お世話になっている関係者のみなさまに、ご迷惑をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます。申し訳ございません。

もちろん、早期リタイヤしたからといって、ゆっくりと休むつもりは毛頭ございません! 第二の現場では、全国どこでも、すぐに行くことのできる「魔法のドア」があると伺っております。そこで、札幌、東京、名古屋、大阪、松山、福岡など、お世話になったみなさまがいらっしゃる地域におじゃまし、心あたたまるハッピーな話題、おトクなネタを探して、歩き回り、情報発信を継続したい所存です。

今回、ご縁がごさいまして東京タワーの足下、心光院さまが次の拠点となりました。『何か、面白いネタがないかな?』と思われましたら、チャンネルや周波数を東京タワー方面に合わせ、金子の姿を思い出して頂けましたら幸いです。

この度、葬儀を執り行うにあたりまして、葬儀社のセレモニーみやざき (担当者名)さまには生前より真摯に相談に乗って頂きました。また、自分の歩んできた道とゆかりのある港区東麻布を終の住処とすることをお許し頂きました、浄土宗 心光院 御住職 (住職氏名)先生には公私に渡り、死生観などのアドバイスを頂戴しました。この場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。

最後になりますが、本日、ご列席下さいました、みなさまの健康とご多幸を心よりお祈りしております。41年間、お世話になり、ありがとうございました。
急ぎ、書面にて御礼まで。

平成24年10月1日流通ジャーナリスト 金子哲雄

最後の最後まで真面目なんだかふざけてるのかよくわからない不思議な魅力を持った人だということが伝わってきます。
ほかにも、この会葬礼状から伝わってくることは人によってさまざまだと思います。

しかし、私は読んだ瞬間に、「このような精神状態を表現するためには、かなり綿密な準備があったはずだ」と直感的に思いました。
つまり、金子氏は、死ぬ大分前から、自分の死について告げられていたのではと、思ったのです。
そして、それを周囲に隠して、にこにこと、テレビに映っていたんだろうなぁということに思い至り、すこし居た堪れなくなりました。

長々と前置きましたが、本の内容に触れていきたいと思います。

「死」との向き合い方

タイトルにもあるように、実は金子氏は死ぬ前500日ほど前に宣告を受けていました。
彼は、そこから、死ぬまで、自分の人生の終わりをデザインしようとしていました。

本の内容によると、金子氏は最初、いろいろな情報を集めて、なんとか生き延びることができる方法を探していました。
しかし、彼は、頭が良いので、自分が助からないことも途中でわかってしまいました。

もちろん、治療は継続していたのですが。

しかし、どうあがいても死から逃れられる可能性は、とても低いということは分かっていたのではないかと思います。
そんな彼の、死との向き合い方は、どういったものだったのでしょうか?

なんと、彼は、「自分の仕事を続けること」を選択しました。

金子氏にとっては、仕事を続けることこそが、「死」と向き合うことであり、つまり、「生きる」ということだったのだなあと思います。

そして、本当に、死のまさにその直前まで、仕事を続けておられたそうです。体力的に外出が困難となってからも、執筆活動を続けていたそうです。

金子氏にとって仕事をすることが作業だった

念のため書いておきますが、この本、作業療法士は一切出てきません。

出てきませんが、内容は非常にOTっぽいなぁ、と思います。
なぜなら、金子氏が最期まで自分らしくいることができたのは、仕事という作業ができたからです。
生きがいを全うすることができたからです。

ひりひりとするような、そんな迫りくる死と、恐怖と、病魔による肉体的な苦痛がありながらも、前のめりになって彼が死んでいくことができたのは、彼が最期まで仕事をしていたいと望んで、そしてその望みが最後まで遂げられたからです。

終末期OT、かくあれかし。

実際、作業療法士ができることは、この本からもたくさん見つかるなと、個人的には思いました。

現実的には、多くの人の支えが必要となることや、金銭的な問題などがネックになると思います。
金子氏の場合は、自分の稼ぎでその点が問題にならなかったことも、非常に大きい点だなあと個人的におもいます。

必見の「エピローグ」

エピローグには、死ぬ数日前の人間の飾り気のない本音の吐露が書かれています。
なかなか、出版物として世に出ない、本音です。

これが、出版されたことの意味は大きいと思います。

また、それまでの文章とはテイストがかなり異なっていて、そのことがより一層、死が本人に迫ってきていたことを感じさせます。

非常に読んでもらいたいとお勧めする、一方で、なかなか精神的に来る物もありますので、メンタルに自信がない方は読むのをやめておかれたほうがよいかもしれません。

書籍の全体的構成について

全四章で構成されています。

1、2章は流通ジャーナリストとしての金子哲雄先生のキャリアについて書かれています。

3、4章は金子哲雄氏と闘病についてのはなしです。

そして、エピローグです。

この本は章立ての順番で、時系列に沿って書かれたのだと思います。
なぜそう思うかというと、番号の若い章の文章のほうが、ゆとりを感じさせる完成度の高い文章だからです。読み手を想定して完成された文章となっています。

しかし、後半に文章が進んでいくにしたがって、文章は切迫し、最後のエピローグでは自分語りとなっていきます。

金子氏が死に向かう工程をそういった面でも追体験することができました。

最後に

つらつらと書きましたが、この本の魅力はたぶん実際に読まないとわからないので、是非書店などで買ってみてください。
ぜひ。
すでに10万部は売れてるそうです。

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