作業療法における研究エビデンスの質の考え方

エビデンスに基づく作業療法(EBOT)は、エビエンスに基づく医療(EBM)のひとつであり、現在ホットな考え方であります。

EBOTにもいろいろな捉え方がありますが、データの蓄積を作業療法の中に生かそう、普段の作業療法の臨床にきちんとした根拠を持っていこうというそういう考え方です。

つまり、作業療法実践に後から理由をつける(考察する)だけでなく、それらの蓄積をきちんと統計処理したデータとして根拠に変換していこうじゃないか、それをもとにして作業療法の介入を行おうじゃないかというそういうこころみ。これがこの記事で使うEBOTの意味だと思ってください。

エビデンスには「質」がある

そのエビデンスには「質」があるという考え方はご存知でしょうか?

簡単にいうと、どの程度信頼が置けるか、ということの格付けです。

そもそも、エビデンスとは根拠のことです。根拠とは、人が何かの行動をしたり判断を下したりするときの判断材料となるような情報のことですから、「質」とはつまり、こういうことです。

判断を下すうえで、

とても参考になる情報は、エビデンスとして質が高く

あまりあてにならない情報は質が低い

こういうことになります。

「何を当たり前のことを」

と思われるかもしれませんが、とても大切なことです。

 

なぜなら、自分の感覚であてになると確信して判断したことが、実際にはあんまりいい結果につながらなかったという事はよくあることだからです。

たとえば、目の錯覚は、人の視覚が現実を歪めて認識するために起こる現象です。

感覚の歪みと同様に、歪みは人間の思考や判断にも起こり得るため、どんな情報が根拠として優れているのかということを主観的に判断する事はあまり得策ではありません。

どういった情報があてになって、どういった情報には価値が低いのかということを客観的に明らかにしておくことにはとても意味があるのです。

エビデンスの「質」 本題

前置きが長くなりましたが、本題の研究エビデンスの質の話です。

皆さんは、自分が書いた事例報告と、権威ある先生がいった一言はどちらがよりエビデンスとしての質が高いと思いますか?

研究エビデンスの質のクラスは、以下のようになります。(上から順に質が高い

1a 複数のランダム化比較試験(RCT)の体系的レビュー

1b RCTが一つ

2a 複数のコホート研究の体系的レビュー

2b コホート研究が一つ

3a 複数のケースコントロール研究の体系的レビュー

3b ケースコントロール研究が一つ

4  事例研究、報告

5  権威者の意見

ご覧の通り、権威者の意見は、裏付けとなる証拠がない場合や批判的吟味がされていない場合、あなたが書いた事例検討に劣るエビデンスしかありません。(と、EBM Oxford Centerは言ってます

補足

ランダム化比較試験というのは、統計学的な研究手法の一つです。

素晴らしい手法なんですが、その理由が気になる方は、下記参考文献をご参照ください。

コホート研究は、影響を与える因子の投入・暴露の前後を比較対照する実験で、放射線の健康調査などでよく行われます。

ケースコントロール研究は、後ろ向き研究ともいわれ、結果が得られている状態で、その結果を左右した因子は何かを比較対照によって明らかにする研究です。

研究法の詳細については、各種研究法の教科書が出版されているのでこちらもとりあえず下記参考文献にてご紹介します。

最後に

作業療法のエビデンスの最新情報は、やっぱりインターネット上で、しかも英語で確認ができるとのことです。

英語、大事ですね。

参考文献

文光堂;作業療法士 プロフェッショナル・ガイド 作業療法とは何か;編集主幹 杉原素子 古川宏

三輪書店;作業療法士のための研究法入門;鎌倉矩子

医学書院;作業療法研究法 (標準作業療法学 専門分野);山田孝

ダイヤモンド社;統計学が最強の学問である[実践編]—データ分析のための思想と方法;西内 啓


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