はじめに
誤解を招く言い方をすると
「『勘違い野郎』ほど、鬱になりにくい」
そうです。
つまりひろえもんは、多分鬱にはならないんでしょう(?)
作業療法の場面における、鬱病に対してのアプローチもこれが影響して変わるかもしれません。
本研究の意義について
今回の研究は、タイトルにもあるように「優越の錯覚」というものについて明らかにしたものです。
「優越の錯覚」は、いわゆる「根拠のない自信」の一つといってよいとおもいます。
この優越の錯覚ですが、心理的に健康な状態のヒトであれば、誰もが持っているものなんだそうです。
つまり、ヒトは通常、『自分は平均よりも上に違いない』という、根拠のない確信を持って生活をしていて、むしろ、その方が、心理的には健康であるということなのです。
これが、実際の脳の働き、活動とどのように関連するのか気になりませんか?
心理学や、社会人類学などにおいては、そういった現象が認められるということが多くの研究から浮かび上がっていたにもかかわらず、実は、いままで、どうして人が「優越の錯覚」をするのかという事が良くわかっていませんでした。
つまりこの研究は、世界で初めて、生理学的に「優越の錯覚」というものが存在するのだということを証明したという事になります。
「優越の錯覚」が良くわからないけどある、モノから、「実際に生理学的に観察できる脳内の現象」として新たに位置づけられたといってもよいと思います。
本研究は、山田 真希子(放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究プログラム 脳病態チーム 主任研究員)先生によって行われました。
内容のおいしいところ
この研究のキモは、なんといっても、次の内容だと思います。
すなわち
『優越の錯覚は、線条体と前頭葉の機能的結合が弱いほど起こりやすいことが分かった』
という事です。
また、
『前頭葉と線条体の機能的結合の強弱は、線条体におけるドーパミン受容体の密度に比例する』
というところも重要です。
本研究の手法
まず優越の錯覚を認知心理検査で測定
↓
PETとfMRIを使用して、線条体のドーパミン受容体密度と安静時の脳活動を測定
↓
ブートストラップ手法を用いた解析方法で関係性の解析
これまた、機械の進歩によるところも大きそうですね。
鬱病との関連
作業療法の人間としては、今回の研究と鬱病との関連性が非常に気になるところです。
それについても言及されており、今回の研究で、同時に判明したこととして、
抑うつの指標である絶望感が高いほど優越の錯覚が低いことが判明し、優越の錯覚が低い背景には、線条体のドーパミン受容体密度の低下による線条体と前頭葉の機能的結合の強化が関わっていることが見いだされました。うつ状態は、多様な要因により生じ、また、その症状も多様であるため、新型うつ病に代表されるようにその診断や治療は一筋縄ではいかないのが現状です。特定の症状を説明する認知現象の脳内メカニズムの解明は、新たな治療薬や診断技術を開発する上で求められており、今回の研究成果が、抑うつの特定の症状のバイオマーカーの創出につながり、精神医療において症状を標的にした新たな診断や治療戦略を打ち出すことが今後期待されます。
とのこと。
今回の研究が、鬱病の病態の本質に一歩近づくものであったことは間違いありませんが、このコメントを読むと、やはりまだまだ、根本的な解決に結びつけるには時間がかかりそうだなあという印象を受けました。
しかしながら、ひろえもん個人的は、非常に大きな前進だと確信しています。
おわりに
パーキンソン病など、脳の変性疾患における鬱病との関連も今後こういった研究の対象になっていくとしたら、現在「こういう傾向だよね」程度の理解の者が、「こういう機序で、こうなるから、こうしたほうが良い」という具体的な対応ができるまでに研究が深まることを期待せずにはいられないですね。
今回の研究の一部は、文部科学省 脳科学研究戦略推進プログラム「精神・神経疾患の克服を目指す脳科学研究」の一環だそうです。
コンクリートに公共投資するのもいいですが、こっちに莫大な資金を投入しても結構景気対策になって面白そうだと思います。
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