はじめに
専門家が読む本とか、消費する論文とかは、さも当然のごとく専門用語、テクニカルタームのオンパレードになります。
無駄に冗長になるのを防いだり、定義を厳密にすることによって、誤解を減らす事ができるなどのメリットがあるので、慣れれば、書く方も読む方もその方が楽というのが、最大の理由かと思います。
でも、専門用語をつかえば使うほど、浮世離れしてしまいます。内容がいくら、身近な事柄を扱っていたとしても、読み手が身近な問題として感じる事が難しくなってしまいます。
たとえば、興味を持った人がそれを知りたいと思ったときの門戸をせばめてしまいます。
たとえば作業療法学の場合
作業療法学も、抽象的な概念やイメージが作業療法の特性上権威付けとかいろんな理由から、専門用語がたっぷり出てきます。
正直、何度も読み直したり、別のテキストを開いたり、あるいは詳しい人に質問したりとかそういうことをしないと理解できないという事も少なくないです。
そんな、作業療法学のコンテンツを、一般の人にとってもっとも身近な言葉、日常生活で使われるような言葉を使って説明するのって難しいなあというのが、ひろえもんの実感です。
「簡単」に伝えることが重要な理由
パターナリズム的な医療が提供されていた時代や、科学者がとてもとても尊敬されていた時代においては、権威者や専門家が、消費者が「理解できたと感じる」ような説明をする必要はなく「なんとなくただしそうな」説明ができてれば、許されていました。
時代は変わりました。
いまや、科学への不振や、無理解が進んでいます。
別の言い方をすれば、科学はどんどん発展していきます。人間を置き去りにして。
それに伴っていろいろな問題が発生しています。とてもとても価値がある研究の意義がなかなか理解されなかったり、「よくわからないから」と敬遠されたり。
このままじゃ、科学の発展の未来は暗い訳で、そういみでヤバい訳です。
対策
問題解決に対する提案として、以下のような5つのわかりやすく伝える工夫があげられていましたのでご紹介です。
1)数値は直感的に理解してもらう
(1ナノメートルは「10のマイナス9乗メートル」と言うよりは「1ミリの1000分の1のさらに1000分の1」などと言う)。
2)身近なものに置き換えて説明する。
(大気圏の幅は「およそ100キロ」ではなく「地球がりんごの大きさだとすると、その皮ほどもない」などと言う)。
3)比喩(=例え)を適切に使う。
4)大事な概念や専門用語は、数を絞ったうえで丁寧に解説する。
5)分かりやすさと正確さをてんびんにかける。
(正確さを追求すると話が分からなくなってしまうなら思い切って単純にする)。
NHKニュースより
これらから言えるのは、「聞いている人」のことばで話す事。
つまり、「聞いている人」にとって身近なことばを使う事がポイントだとひろえもんは解釈しました。
わかりやすく伝えることは専門家の業務の一つ
専門的な事柄については、従来であれば、知りたい人が専門書や大学などで、自分で勉強してくださいというのが、専門家の基本的なスタンスでした。
が、先ほどでも述べたようにそのモデルが知識の偏りや、「わからない」と感じる人の不振を生む原因になってしまう問題が発生しています。
これを解決するには、もちろん、「わからない」と感じる側の人の努力も必要になると思いますが、それと同じかそれ以上に専門家に努力が求められる時代がくると思います。
自分の専門とする内容について説明することも、専門家の仕事の一つになるとおもいます。
作業療法も「わかる」説明を
作業療法学のテキストは、紙面の都合などによって、専門用語が多様され、理論などの内容においては抽象度が非常に高くなりがちだとおもいます。
しかし、それでは、一般の人にはなかなか作業療法について知ってもらう事は難しいのではないでしょうか。
ひろえもん個人の考えとしては、事例紹介などの論文は、もっと、作業療法についての知識が無い人がよんでもわかるような文章にするか、もしくは、論文を理解できるための補足などがあればいいのだろうなと思います。
作業療法は、クライエント、患者様との協業がとても重要になります。患者様に気持ちよくリハビリテーションに向かい合っていただくためには、「腑に落ちる」説明や、「わかる」具体例、あるいは具体的体験などが必要になると思います。
自分が患者様の立場に立ったときには、そのプログラムの意図がわかっている方が、具体的な目標を持って取り組む事ができますし、なにより、「理解できた」という感覚が、安心感に直結すると思います。
上に挙げた5つの項目のように、作業療法学においても、作業療法学を学んでいない人が、作業療法学を理解できるようなそういう要点をおさえた説明ができる必要があるなあとおもいます。
おわりに
ひろえもんも、親戚などに作業療法の説明をする事があるのですが、なかなかしっくりとくる説明ができないで四苦八苦しています。
理解してもらうためには、実体験してもらうのが一番だとおもいます。
しかし、それが難しいとき、言葉で説明することが必要になります。
作業療法学を学んだOTRとして、専門用語に頼らなくても作業療法について必要十分な説明ができるよう、自分自身を鍛えていく必要があると思いました。