介護病棟および老人保健施設とマンパワーの問題の根本的解決法は無いんじゃないかという

はじめに

結論としては、「量が質」だが、量が増えることは無い、という話。

長いですし要領を得ないので、要点だけ読みたい人は、下記の「現場のマンパワーが不足する本質」だけ読んでみて下さい。

就職してから、精神科だけでなく老人保健施設系への関わりもできました。

働く中で、社会的な構造の問題で、今の方法では今後必ず対応困難になるという思いを強くしたので、その解決法を思案してみました。

しかしながら、解決が出来そうにないという考えに至りましたので、そんな考えになった考えの道筋を書いてみたいとおもいます。

ちなみに、この文章は、誰かに否定してもらう事を期待して書いている文章です。

割と。

認知症と精神病院

認知症の症状は、正常発達した知能の低下と言われます。

その症状は大きく中核症状と周辺症状の二つに分類されます。

二つの症状が進行し社会での生活が困難になると、患者さんとして精神病院に入院することになります。

病院に入院すると、基本的には薬物療法とか作業療法にて加療を行いながら、入院の直接的な原因となった症状の緩和や環境や人的資源、社会的な資源の調整などが行われます。

ある程度、病院が問題ないと、医師や家族が判断した時点で自宅や施設へ退院となります。

寝たきりの発生

認知症が進行すると出来ない事が増えます。

認知症の症状として徘徊などを思い浮かべられるかもしれませんが、次第にそういったものも消失し、やがては無為自閉的な傾向が強まり、自発的な表出が見られなくなっていきます。

つまり、日常生活に多くの促しが必要になっていきます。

その促しが十分に行われず、あるいは促しの量が現実的に困難な程度になると、必要以上の介護が行われるようになり、結果として活動量がどんどん狭まります。

そして、その先には、寝たきりの生活が待っています。

認知症になったからといって、必ずしも寝たきりの段階に至るとはかぎりませんが、そうでない場合と比べると最後に寝たきりに至る可能性は高いと考えます。

必要な資源の試算

ここで、生活のほぼ全てに介助が必要なレベルの患者様ばかりが入院されている病院、あるいは病棟を想定してみたいと思います。

そういった病院あるいは病棟はまれかもしれませんが、高齢者がふえ、認知症がふえる日本社会においては、これからどんどん増えていく事でしょう。

簡単のため病床数50床としたいとおもいます。

そして、人件費を社会保険料などもトータルして1人頭以下のように仮に考えてみます。

介護士 20万円 /月人

看護師 25万円 /月人

医師 100万円 /月人

んで、病棟に介護士が5人、看護師が5人、医師が1人で回すとすると、ひと月あたり最低でも325万円ものお金が必要になる計算です。

と、すると患者様一人当たりに換算すると、最低でも約6万円のお金が必要になることになります。

これからたとえば、65歳以上の認知症有病率が10%で、そのうちの半分が寝たきりになったとすると2050年には、

4000万人 × 0.1 × 0.5  = 200万人

んで、1人が最低6万として

200万人 × 6万円 = 1200億円

が月々必要な計算になります。

2050年の働き盛り世代は3000万人とすると

1200億円 ÷ 3000万人 = 4000円

を月々負担すれば良い事になります。

あれ?

意外と行けそうですね。

んでも無理な現実

色々なコストを省きに省いてのこの結果でさえ、4000円と考えるのが妥当です。

土台無理な試算を行った結果でも4000円は必要ということです。

実際、病棟スタッフがそんなに少ない訳はなくて、ひと病棟あたり、看護介護合わせると質的に十分な医療を行う為には、20人は必要です。(算定上は必要ありませんが。

そこまで雇わないにしても、職員は、労働基準法上公休と有休の消化が必要ですから、のべ人数の1.5倍の人数を雇用する必要があります。

さらに、医師不足の昨今ですので、も少し高そうです。

さらに病院側は、年金や社会保険料などの国に納めるお金の分もコストに含める必要があります。

それらは本人と折半なので、さらに1.5倍くらいすればいいでしょうか?

なので、ざっと計算すると

4000円 × 1.5 × 1.5 = 9000円

ですね。

でもホントは、職員のおボーナスとかも計算しないといけないので、もっとふえます。

12000円くらいでしょうか?

で、さらに、マンションで言うところの共益費というか、維持管理費用が必要です。

これが意外とするので18000円くらいでしょうか。

施設の増築や、地域支援のあたらしい拠点を作る為の設備投資も必要かもしれません。

21000円。

さらに、経営サイドへの報酬。

26000円。

とまあ、いろいろあります。

利用者サイドの不利益に繋がっている部分に関しては、国が積極的に監査をいれてって欲しいなあと思うところではありますが、現状のシステムだとたぶん1人あたり40000円でもキツいとおもいます。

経営者の立場になると

そこの実際の理念がどうかというところに大きく左右されることは間違いないです。

お金儲けが好きな人が経営しているのか、医療を全うするところに力を注いでいるのかという、その理念の違いが大きいです。

利益追求にいとまがない病院の場合は、まず人件費を削ります。

病棟には算定基準というものがありまして、職員の人数がそれを満たしていさえすれば算定ができるので、できるだけその人数ぎりぎりでまわせるほうが、経営者としては美味しい訳です。

お金儲けは悪いことではないですが、そちらに偏りすぎるとスタッフが疲弊してモチベーションが低下し、結果として質が下がります。

仕事の絶対量にたいして、マンパワーが不足しているので、個人がどれだけ100%の力を出しても追いつかないからです。

ですので、その病院や介護施設の質を見るには、算定基準よりも多い人数が働いているかどうかが一つ有効な基準として使えると思っています。

優秀な経営者とは

お金が自在にコントロール出来る人だと言えるとおもいます。

そして、お金儲けに力を注いでいる経営者は、お金をたくさん持っているのでその能力が高いです。

結果として、優秀な経営者に占めるお金儲け優先理念の経営者の割合はどうしても高くなる傾向にあるのではないでしょうか。

つまり、全国的には私立の施設であれば、お金儲けを考える経営者の方が割合的に高い方が自然です。

コレは、ある種、日本が資本主義社会として成立している以上、仕方の無いことです。

現場のマンパワーが不足する本質

以上から

1.寝たきりの人が増えるので需要が増加すること

2.利潤追求の経営者が世の大勢を占めること

という二つの理由で、現場のマンパワーは不足します。

構造の概要はこうです。

需要は高いので、その気になれば病院や老健のベッドは常に満床にできます。

その一方で、経営者は病棟あたり、もしくは施設あたりの人間を必要最低限にとどめます。

結果として、質は低下しますが、1の理由から需要が過剰な状況なので、質の低下に関係なく顧客は確保できます。

さらにその結果として、経営者はそのまま必要最低限の状態を維持します。

つまり現場のマンパワーの慢性的な不足が持続します。

以上が本質です。

おわりに

これは、国が医療と福祉の充実を民間の力を借りて行っている以上、どうしても避けられない現象だなあと思います。

唯一できることがあるとすれば、算定上必要な人員の数を今よりも増加させることかもしれません。

そうすれば、経営者サイドとしてはマンパワーの確保に動かざるをえません。

しかし、それをすると人員が確保できずにつぶれてしまう病院がたくさん出てくることになるはずです。

先に述べたように、国は、民間に頼っているという構造があるので、強気にはでれないはずです。

となるとやはり、根本的な解決法は存在しないのではないかと思います。


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