はじめに
日本だけでなく世界的な問題になりつつある認知症の問題。
現在のところ、一度発症すると病状を劇的に回復する手だては見つかってい無い一方、進行を遅らせる効果のある治療法は徐々にエビデンスが確立してきています。
そこで、認知症の進行にともなって将来起こりうる問題を、発症早期からの介入という手段で防ごうという動きが活発になっています。
その流れにとって大きな助けになりうる検査が開発されたようです。
検査の内容
検査の方法としては血液を用います。
そしてその血液を調べるだけで、3年以内にアルツハイマー型認知症を発症するかどうかを、なんと90%の確率で予見できるとのことです。
米ジョージタウン大学メディカルセンターのハワード・フェデロフ(Howard Federoff)教授(神経学)は「治療計画を作ったりするときや、認知症への対処方法を変える可能性を秘めている」と声明を発表しておられるようです。
また、治療そのものにも効果をもたらす可能性にも言及されています。
初期認知症の誤解?
ところで、寝たきりなど重度に進行した認知症と対比して、物忘れなどがひどくなってきた、と感じるレベルを初期認知症、または軽度認知症と表現することがあります。
しかし、臨床的にはしっくりくるこの表現は、生理学的には大きな誤解を生んでしまっているとの論があります。
どういうことかといいますと、認知症の初期症状としての物忘れが現れる前の10年前後で、目に見える症状としてはあらわれなくても、細胞レベルでは徐々にアミロイド蛋白の沈着などの症状進行が進んでいるというのです。
認知症の治療がうまく行かない原因がこの辺りにあるのではないかと考える医療関係者も増えてきているようです。
病気の早期追跡の可能性
今回の血液検査がもしも、臨床的に実用に足る物であれば、病気に対する早期からの介入が可能になるだけでなく、ひょっとすると現在確立できていない病状進行の逆行、つまり、病気を発症する以前の状態に戻すような治療法が確立できるかもしれません。
一治療者の立場としても、ご本人の認知機能が低下するまえに今後について家族を交えながらお話ができるので、ひろえもん的にはおおいに期待しているところであります。
さらに、大それた話をするならば、この予測を前提とした行政、福祉のシステムが確立するかもしれません。(たとえば、健康診断に組み込まれるようになるとか)
そうなると、現在支援が十分に行き届いているとは言いにくい若年性認知症の人たちが、今よりも充実した支援を受けられるような社会にも変わっていくかもしれません。
というか、そういう方向に話が進んでいったらいいですね。
おわりに
ちなみに今回の血液検査で調べるのは脳の代謝物なんだそうで、その中でアルツハイマー型認知症の徴候となる物に着目したんだそうな。
こんなふうに、あたらしい検査の方法や、治療の方法がどんどん出てくることを期待せずにはいられません。
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