このわかりにくさは、作業療法の強みである「多様性」の裏返しでもあります。
作業療法士的視点で矛盾しない事柄が、具体的な実践レベルではぶつかり合って矛盾するように見えてしまうことって実は日常茶飯事。
理論レベルでは、同じことをしようとしても、その手段が異なれば当然やることは異なるわけですから。
そして、その手段の説明が異なれば、他職種や作業療法対象者からは、
「何がなんだかわからない」
ととられるわけです。
同じ理論で、同じゴールを目指しているとしても、手段が違うので、てんでバラバラに見えてしまうのです。
山登りにも似ているのですが、現在地点と山頂までの登山コースが違えば、同じ山に登るという事柄でも、違った体験をすることになります。
しかし、山頂という目指すべきところは同じであり、コースは違えど目指す方向性や「歩いて登る」という方法は同じだったりします。
理論は地図のようなもので、目指すべき方向性や、方法を指し示すものです。
地図というのは、実際の地形を抽象化して俯瞰できるようにしたものでもあります。
話を作業療法に戻し、あてはめてみるとどうでしょうか。
つまり、作業療法士の重要なスキルとして、より高次の概念で物事を語れることが求められるということになります。
そもそも、作業療法の介入は、応用動作や人間の感情といった、さまざまな要素が入り乱れる複雑な事象をより良い方向に導く手助けをするために行われます。
そこで、何よりも重要になるのは、最も重要なレベルで欠くことができない要素はいったいどれで、それらはどのように関連があるのか、どんな因果関係があるのかをシンプルかつ論理的に語ることができることだと思います。
それは、作業療法対象者や他職種にとってもわかりやすいものでなければなりません。
そのためには作業療法の根拠となっている理論が、きちんと矛盾のない論理的なものであることを示せることが必要です。
また、自分自身で自分が使っている理論の有用性に納得できることも必要だと思います。
また、それがきちんと意味のあるものであることを示せるような、証拠も積み上げていく必要があると思います。
作業療法は具体的になればなるほど、実はわかりにくくなるという、そういうジレンマが宿命としてついて回るようになってるのが、一作業療法士としては煩わしくもあり面白くもあったりします。
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