連載の第一回目では、AIが日常になることが既定路線で、もう既にAIを用いたサービスが日常に溶け込みつつあることや、その有用性の一部について実際にAIサービスを体験していただくことで確認しました。
第2回目と、第3回目では、『AIとリテラシーとセキュリティ』と題して、前後半2回に分けて、今後の生活の中で、安心してAIサービスを使うためにおさえておくべき基本について、確認していきます。
第2回目となる今回は、前半部分の『AIとリテラシー』の部分を確認していきます。
必要最低限のリテラシーはやはりある
AIの有用さを強調するために「すぐに使える」という面を強調します。実際直ぐにつかえます。とはいうものの、全人類を対象にする時には、そうはいかないこともあります。つまり、「使える人」からは思いもよらないところで、どうにもつまづくことがあります。
これは、特に作業療法の場面で活用しようと思う場合には、なおさらです。これはとても大切なことです。私たち作業療法士としては、全人類がデジタル格差なくAIを使えるためには、どんなことが必要なのか、と考えますし、リハビリテーションの観点から、やや若干しつこいぐらいの深さでできる限りの詳細さで、リテラシーというものを眺めておく必要があると思っています。
AI使用に関するいろいろ、を「できててあたりまえの前提」とせずに、丁寧に見ていきます。
AIを用いるサービスを日常生活で使う上で必要なリテラシー
基本的なデジタルリテラシー
「基本的」と敢えて表現しています。
まさに、上記で述べた「当たり前の前提とせずに」の部分です。そして、それはここまでこの記事を読んでくださる皆様はきっと当たり前にできていることです。が、実は作業療法士視点では、全く当たり前ではありません。
世間の大多数の方がつまづかないようなポイントが何度やってもできない方も当然いらっしゃいます。そうした方にも上手く使って頂けるようにできる為には、どうしたらよいかしら?と考えておくことが必要です。それが作業療法士として臨床でAIを使うための重要な準備となります。
つまり、ここで、基本的、とあえて言っているのは、スムーズさの土台として大事だから支援のポイントになりうるよ、ということです。
例えば以下のような点です。
- デバイスの操作: スマートフォンやパソコンの基本的な操作方法、マウス、キーボード
操作は手順の連続です。一方で不要な手順は、省略することができれば、使用することができる人の裾野が大きく広がります。
- インターネットの使い方: 検索エンジンの利用、ブラウジングの基本、広告について知ること
従来のインターネットでは、検索エンジンの使い方を知らないと、目的のホームページにアクセスできません。そもそも、ブラウザの開き方って、わからないかもしれません。本来のコンテンツと広告の境目がわからないことで、変な出費が生じるかもしれません。
あとは、心理的な忌避感の有無、先入観も影響します。「なんか苦手」と言うやつです。多くの場合は、単純にやったことがないだけであったり、なんらかのトラウマが背景にあるようです。
もっとも、昨今のAIの場合は、話をするだけで使えるので、環境やリスクを管理する人物のみがリテラシーを備えておけばなんとかなるようです。
つまり上記のリテラシーは、誰か最低1人でも通じていればなんとかなる、ということです。
AIの基本的な仕組みの理解
次に必要なのが、AIとはなんぞや、という大枠の理解です。
- AIとは何か: 基本的な概念とその働きを理解する。
これは、まず関数的な理解ができたら良いです。つまり、重要なのは入力と出力があって、入力が関数によってなんらか変換されて出力が生じる、ということです。
AIがいわゆる一般の関数と異なる点としては、同じ入力でもコンピュータの計算によって出力が制御され、さまざまなパラメータを変更することや確率によるランダム性などによって画一的でないユニークな出力ができるようになっています。
そのユニークさは、トークンと呼ばれる、各言葉の意味に対応したまとまり、関係性を膨大な量の行列の計算で表現することで成立しています。
この仕組みのすごいところは、前後の文脈によって同じ単語がぜんぜん違う意味を持つ、という現象すら上手に処理してしまうことができる、と言う点です。
つまり、人間が言語を用いることによって独占的に行えていた知的な営みの一部が機械によって行えるようになってしまった、と言うことを意味しています。
このような特徴を抑えておくと、ある程度AIな仕組みやクセを活かした活用がしやすくなります。自然言語で、プロンプトをいくら投げかけてもうまくいかないこともありますが、少し投げかけを変えるとうまくいくことがあります。1
- 代表的なAIサービス: 音声アシスタント、翻訳アプリ、レコメンドシステムなど。
これは、前回の内容になりますが、とりあえず、どんな活用が試みられているかについては、ひとまず、使ってみて実感してみるのが一番です。
その出力がどの程度使い物になるかも、使ってみるまでわかりません。
組み合わせると全く新しい価値が生まれるかもしれません。
いろいろ使ってみましょう。
プライバシー意識
自分自身の個人情報では無く、他人のプライバシーに関する情報や、企業の情報を扱う時には、特に注意が必要です。言うまでも無く、プライバシー等の機密情報がうっかり、AIに学習され、その断片でも出力されてしまうことがないよう、注意が必要です。
- データの取り扱い: AIがどのようにデータを収集し、利用するかを理解する。
AIの出力は、学習データでモデルを調整することの積み重ねの結果であり、逆にAIの精度を高めるためには、多数のデータを活用する必要があります。
そこで、そのような膨大な情報をどのように得るのか、また得た情報をどのように取捨選択しているのかが重要です。
- 個人情報の保護: 個人情報を提供する際のリスクと対策を知る。
例えば、データ数が少ないと、学習した内容が出力されてしまうかもしれません。
AIのモデルが理解できると、より安心して判断ができます。
安全なインターネットの利用方法を知る
ローカルなAIでない限り、ネットワークを経由することになります。通常のインターネット利用と同程度にセキュリティについての知識と意識が必要になります。
- フィッシングやマルウェアの認識: 不審なリンクやメールを避ける。
AIが選択肢として提示するものが常に安全かどうかは、現時点では保証ができません。不適切なサイトを学者している可能性もあります。その時には、使う側で判断をすることになります。
- セキュリティソフトの利用: 信頼できるセキュリティソフトをインストールしておく。
万が一判断をまちがえても、セキュリティソフトが、致命的なリスクを回避してくれる可能性があります。
もっとも、最近のWindowsはデフォルトで対策ソフトが入ってますし、Unix系はユーザーが権限の判断を誤らない限りはそうそう大事になりはしないはずです。
この辺は管理者が気をつけることで、ユーザーを守ることができる部分です。
批判的思考
元々の、インターネット使用、ひいては書籍、各種メディアに対する態度と同様に、批判的思考が要求されます。
何においても鵜呑みにせず、キチンと検証しようとする態度が大切です。
AIが進歩して、当たり前に日常に溶け込んで、ほとんどエラーがなくなって行けばいくほどにこの批判的思考が、思いもよらない落とし穴を回避するために、大切だとおもいます。
- 情報の信頼性の判断: AIによる出力や提供される情報の正確性を見極める能力。
この部分はまさにAIがどのようなモデルで成り立っているかの理解が必要になる部分です。
公開されていないモデルのサービスを使うより公開されたモデルをどのように使っているかが分かるほうが、より安心して使いやすいと、思います。
- AIの限界を理解する: AIが万能ではなく、誤った結果を出すこともあるという認識。
当たり前、と今は思われるかもしれませんが、AIの信頼性が高まって世の中にありふれた時、AIの仕組みをしらないと、「AIに任せておけば大丈夫」と、盲信してしまうリスクはますます高まるはずです。
まとめ
第二回の今回は「AIとリテラシーとセキュリティ」の前編として、リテラシーの部分に注目しました。
ここまで読んでくださった方は、お気づきのように、AIのモデルの説明をしていたらこんがらがるので、すっ飛ばしてますが、ついての理解は、また第4回以降で基本的な部分を掘り下げていければと、思います。
待てない、気になる方は、otwikiの方で確認してみてください。
AIのリテラシーといっても、従来からインターネットをリテラシーを意識して利用している人にとっては、特に新しいことはなかったかもしれません。それが重要です。
特に変わり映えのしないリテラシーが今後ますます重要になる、とご理解いただければ、AIが日常になったとしても安心して暮らせるし、作業療法の一環としてAIを用いる時も安心感の中で行えると思います。
次回第3回は、2024年5月19日19時予定です。
内容は今回の後編にあたります。セキュリティについての部分を見ていきます。
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