エビデンスベースではROM-exは拘縮に対する関節可動域の改善に寄与してるかどうかは一切不明という論文が存在する

たまには、ちゃんと臨床の役に立つ記事を書かないといけないかなと思って、書いてみます。

なかなか刺激的な記事内容と思います。

タイトルのような結論、つまり

「他動的なROM訓練は拘縮に対する関節可動域を明確に改善しなかった」

を述べた論文がありますのでご紹介します。

この論文のエビデンス力はかなり高いです。

翻訳しながら、論文を読み解いてみたので、自分の備忘録のために書いております。

ストレッチ・他動的ROM-exは神経学的・非神経学的な拘縮の治療および予防に有効か

この論文の問いは、

ストレッチは神経学的・非神経学的な拘縮の治療および予防に有効か

です。

ようするに、関節可動域の改善を目的とした他動的ROM-ex・ストレッチに意味はあるのかと言うことです。あくまで関節可動域改善に寄与するかという意味で、ですが。

結論 「明確な成果は不明」

他動的ROM-exで、成果らしい成果はないということが、論文のメタアナリシスによって報告されました。むしろ、副作用があるとな。副作用の詳細は、元の論文読んでみてください。

以上です。

但書

ただし、下記のように無意味だ、効果はないと断定した書き方はされていないようです。効果の検討の余地についても書かれています。

諦めずに頑張る余地は一応残されていますが…どうでしょう

今後の研究によって本レビューの結果が変わる可能性は低い。しかし、他の介入と併用したストレッチの効果を検討することには価値があるかもしれない。例えば、運動訓練やボツリヌス毒素を用いた神経疾患者へのストレッチの効果などである。また、長時間(例えば数年)のストレッチの有効性を具体的に検討する価値があるかもしれません。また、特に重度の拘縮を発症するリスクが非常に高い人(外傷性脳障害者など)における拘縮予防のためのストレッチの有効性をさらに検討する価値があるかもしれません。

このコクラン系統的レビューの結果は、理学療法士が長年にわたって行ってきた基本的な仮定に反するものであり、理学療法の専門家にとって挑戦的なものである。すなわち、ストレッチは拘縮の治療や予防に有効であるということである。しかし、現在では、ストレッチが関節可動性に臨床的に意味のある効果を持たないこと、また、これらの結果は様々なサブグループ分析にも頑健であることがエビデンスとして証明されています。しかし、これらの結果を何ヶ月も何年も定期的に行われているストレッチに適用する前に、注意が必要である。また、長時間のストレッチの有効性は不明である。

作業療法.netがhttps://reader.elsevier.com/reader/sd/pii/S1836955317300280?token=231984AF1F1C85C61738EC723DFEBED53EF15D8FB277016AF54823FEAAD871411BD1D239090B3C3EB7219700F6ABD512をDeepLで翻訳

「他動的ROM-exには明確な効果を認めません」をどう読み解くか

他動的ROMが全く無意味とは思いません。精神的な指示の意味において。ですが、身体障害の改善目的でなんとなくやるだけでは、コストパフォーマンスは悪いと読み解くべきと思います。

銀行がROM-exを関節可動域改善を成果指標とした事業に投資してくれるかという観点で物事を考えると、多分資金出してくれないとおもいます。

今現在、国はROM-exを関節可動域改善のために実施する療法士の働きに、お金を出してくれています。

この論文のメッセージを改めて整理すると

拘縮患者の関節可動域改善にストレッチは正直明確な効果がみられない

ただし長期的継続的に続けるストレッチの無効性は証明できない

つまり

もしROM-exストレッチを始めるなら、結果がでるまで継続してやり続けてようやく結果が出るかもしれないし出ないかもしれない

ということです。

まとめ

ストレッチや他動ROM-exには明確な改善効果を示すエビデンスがありません

リソース

Stretch for the treatment and prevention of contracture: an abridgedrepublication of a Cochrane Systematic Review

関節可動域の拡大や維持を主目的としてROM-ex・ストレッチを行うことは、短期的な場合には改善効果がほとんど期待できないので意味性は薄い

個人的意見

徒手的訓練、他動的ROM -exは、ちゃんと、触診や仮説検証をきっちりとやって、ターゲットとなる筋肉を明確にした上で、ちゃんと行えば効果はあると感じています。逆に、漫然とやっても効果は全く期待できないとも思います。

また、対象者の方の認知機能が与える影響は大きいと思います。実際、認知機能が低下した方に対して、ROM-exをやって改善がみられることはほとんどありませんでした。私個人が関わった症例様では、2例改善が見られましたが、大多数は改善が見られていません。

このように、どのような合併症のある方にたいして、どんな介入をするかで結果や成果は変わるだろうと思うのですが、一応エビデンスはないと言うことで、もし今後ROM-exやるときには、謙虚にやりたいと思います。

作業療法士に役立つよくわかる触診のコツ。ひろえもんの触診の方法論と、出来るようになるためにやったこと。

作業療法の、どの領域においても、作業療法士にとって評価の基本的手技である、触診についてのコツと練習方法を紹介します。

はじめに

作業療法でも、触診て、案外重要なんですよね。

「PTさんの仕事やん」

て言う人もおりますが、触診のできない作業療法士よりできる作業療法士の方が、関わってもらいたいと思うし、安心感が違いますよね。

実は、OTSさんとtwitterにてこんなやり取りをばいたしました。

何から評価したらいいかわからないと言うのは、作業療法学生と新米作業療法士のあるあるネタだと思います。

実際、自分も実習中にどの評価から始めるか、非常に苦労したなあということを思い出しました。

ですので、この記事を読む前よりも、「ああできそう」と思ってくれる作業療法学生さんと、新米作業療法士が増えたらいいなと思って書きます。

評価に必要なこと

まず、作業療法における評価において必要なことはなんでしょうか。

私は以下のようなことが必要と考えています。

・正しい知識

・正しい推察

・正しい確認、検証

正しい知識

触診であれば、筋肉や腱などの体の構造を知らなければ、どこに触っているのかわかりません。

地図もなく、文字も読めない外国の街を歩いて、目的地を探すようなものです。

とても効率が悪く、見つかる保証もありません。

作業療法の時間は、身体障害領域においては、1単位が20分です。

大げさに言えば、評価に無用な時間を要することは、作業療法対象者の十分な治療を受ける権利を奪うことに繋がらないでしょうか。

正しい推察

上記でも述べたように、時間のリソースは限られています。

正しい知識を十分に生かすための、戦略が重要です。

より効率的に、問題を特定するには、推察が欠かせません。

先ほどのように旅行に例えましょう。

目的地にたどり着くために、街をやたらめったら歩いて見つけるのは筋が悪いですよね。ではなく、きちんとランドマークを特定し、ランドマークとの相対的な方向や距離から目的地の場所を探すと、おおよその場所の目安がつけられるので、見つかりやすいはずです。

研究ではあり得ませんが、臨床においては、「だいたいこんな感じ」というのは極めて重要です。

正しい確認、検証

ただし、「だいたいこんな感じ」が、活きるためには、

「これで良い」

を確認できる根拠が必要です。

そこには、結果を知識に基づいて、分析する能力が必要です。

ここでも旅行に例えます。

到着した場所が、目的地だと理解できること、そしてそれによって、自分が通ってきた道のりは正しかったと言えることが、正しい確認と検証に対応します。

コラム やはり慣れは重要

上記3つの要素に加えて、重要なファクターとして「慣れ」があると思います。

例えば触診であれば、「患者様に触れる」と言うそれだけで、慣れるまでは緊張してしまいますよね。

こうした緊張に影響されやすい作業療法士は、結局、回数を重ねることでしか、「できる」感覚は味わえないものなのかもしれません。(ちなみに、私はこのタイプです。)とかいきなりこんな事を書いてしまっては、しょうもない、と思われるかもしれないですが、始めたばかりでできないのは当たり前なので、落ち込む必要はないと言うことです。

要するに、何が言いたかったかと言うと、継続が重要ということです。

触診の重要性

さて、そんな感じで触診なのですが、触診はもちろん、作業療法士にとって重要な技術の一つです。

死ぬほど抱えた苦手意識がいつの間にか消えて、できるようになっていたってだけで、よくよく考えると自分も触診苦手意識あったなあーということを思い出しました。

現在、精神科勤務なので、がっつり触診が必要になることは少ない、むしろ全然ないのですが、それでも、ときに不全麻痺の作業療法対象者の方とかもおられますし、筋肉の痛みを訴えておられたらそれが身体的なものか、精神的なものかを判別できないと介入するべきポイントが全く異なるのでやっぱりできるに越したことはないなあと思います。

触診は、「評価で必要なこと」の「正しい確認、検証」における強力な武器です。

重要です。

触診のポイント

触診でのポイントと、習得方法についてざざっと書いてみたいと思います。

間違っていたらすみませんです。ご指摘ください。

とくに、身体障害系で日夜、触診されている方のご意見伺ってみたいです。

よろしくお願いいたします。

触診とは

患者様に触れることによって、観察対象の状態を見ることです。

観察対象とは、具体的には、筋肉や骨、靭帯の状態や、その機能をみる事だと思います。

その認識で話を進めます。

MMT(徒手筋力テスト)できますか?

触診の中でも、非常にポピュラーというか知名度が高いのが、MMT(徒手筋力テスト)です。

たとえば、脳卒中後の検査でMMTは、やって当たり前ですね。

MMTは、触診として典型的かつ代表的で語りやすいので、まず、MMTを念頭において話をしていきたいと思います。

触診は、目的の意識がとても大切ですが、MMTにおいては、明確に筋肉を調べたい、特にどの筋肉がどの程度作用する能力を持っているのかを調べたいという明らかな目的があります。

やり方は一意であり、その評価の方法も非常に単純で、多くの人に共有される方法論です。国家試験にも当たり前の知識として出てくるものでもあり、すべてのOTRが一度はきちんと暗記するものでもあります。

このような書籍もあります。詳細が書いてあります。高いですけど。

できて当たり前と思われる内容ですが、できない人はできないです。

全員習っている内容なのに、なぜでしょうか。

きっといくらかわからないポイントがあるのだと思うので、自分の中にある思い当たる節を書いていきます。

基本的な用語わかりますか?

MMTにかぎりませんが、触診関連の解説書や指南書には、解剖学的肢位とか正中線とか、肩峰とか、解剖学的な用語が基本的に理解の前提として当たり前のように出てきます。

つまり、解剖学などの専門用語があやふやだと、解説書に書かれている事柄を実践するだけでも難しく、ましてや、意味をしっかりと理解しながら、正しい方法を身に着けることもできません。

解剖学などで、出てきた用語に自信がない場合には、それを放っておかずに、時間を見つけて調べることをお勧めします。

筋肉の前の骨学

筋肉を単体で覚えようとするとかえって理解が難しいです。

冒頭でランドマークが大切という話をしました。

筋肉を触診することは多いですが、その場合、筋肉を触るよりも、骨を触った方がわかりやすいので、骨をランドマークにしてそこからの相対的な位置を頼りに筋肉を探すべきです。

どこから起こって、どこで終わる筋肉なのかが、名前と一緒に把握できていると、おおよその機能の正しい推測ができます。なんと、逆に、筋肉の機能から筋肉の走行を予測することもできますが、それは骨に対する正しい知識があればこそです。

筋の走行の深さ

触診をきちんと行えるためには、きちんと筋の走行を知っておくことは大切だと思います。

一方で、深いところにある筋肉を頑張って触ろうとする新米作業療法士がいました。私のことです。頑張ってもさわれません。いくら走行が正しくても、です。

つまり、皮膚からどの程度の深さのところに、どの筋があるかなどは、大まかに把握しておく必要があるということです。

こればかりは、経験関係ないです。書籍などで別途勉強するしかありません。

実際に人体解剖に立ち会える人はあまりいらっしゃらないと思いますが、解剖学の教科書などに書かれている筋肉の断面図や人体模型などで、ある程度勉強できると思います。

今持っている解剖学の教科書にしっくりとこない人はこちらの名著がお勧めでございます。もっさりしていて、面白さのかけらもありませんが、役に立ちます。



物理学的な知識

物理嫌いな作業療法士が多くて個人的に悲しいです。

少し分かってるだけで、骨と筋肉と機能との関係性が、動的で生き生きとしたものになります。触診だけでなく、動作指導などにも使えます。作業療法士の強力な武器だと思うのです。

例えば、モーメントや、力の概念、運動方程式などがそうです。

とくに、モーメントの考え方は、国試の勉強の時にも役にたちますし、臨床に出てからも移乗とかでかなり使うように思います。すでに就職している人は、なおのこと勉強して感覚と結びつけることが必要だと思います。

国試の問題では、たとえば、トレンデレンブルク徴候とかの理解にもつながりますし、わかっておくといろいろ助かる場面が必ずあります。

 触っている感覚

そして、個人的にとても重要だなとおもっている物があります。

それは、筋肉や、骨に触っているという感覚です。

何を当たり前のことをと思われるでしょうが、この当たり前の感覚が得られるまでには、何度も触診を繰り返して、経験を重ねることが必要だと思います。「筋肉に触っている」という事がわからないと、実は触っているのにいつまでたっても「触診が出来る」という感覚に至れませんよね。

おすすめ触診の練習法

作業療法士が、触診上達するためには、最後に述べた感覚を身につけることが近道だとおもってます。恐れずに挑戦しましょう。

そのためには、次のような方法をお勧めします。

自分の上腕二頭筋で遊ぶ

まず、自分の上腕二頭筋に触れてみましょう。

なぜなら、上腕二頭筋の走行は単純です。さらに、機能もわかりやすい。

見た目でもわかりやすい。

さらに、皮膚表層に近い筋肉で触りやすい。

筋腹周りに紛らわしい筋肉も無いので、同定もしやすいです。

どうしてもわからないひとは、前腕外転位にして、肘を屈曲しましょう。

かなりわかりやすくなると思います硬くなったのが上腕二頭筋です。

わかりましたか?

これは内転位ですよ。

分かったら、肘の曲げ伸ばしをして、そして触ってみた違いを認識しましょう。

ある程度、触ってると力が入っている時の筋の触り心地と、脱力時の違いが何となくわかるようになってきます。

そのうち、力が入っていない上腕二頭筋でも走行がわかるようになってくると思います。

自分で、自分の上腕二頭筋触って、走行がわかるようになったら、他人の上腕二頭筋を同定する練習を学友やら同僚と一緒にしましょう。

このとき、相手も自分の上腕二頭筋を触って遊んでいると、自分のを触ったときに「上腕二頭筋を触られる感覚」も同時に習得しているはずなので、触っているところが上腕二頭筋かどうかの判定って容易だと思います。

あとは大きい筋肉で、色々試していきましょう。このようにして、いろいろな筋肉で、触っている感覚をつかんでいくことで、筋の触診って出来るようになっていくように思います。

機能が重複していて、同定が難しい筋肉もありますけれども(股関節内転筋群とか)、そもそも臨床にて筋単体の働きが重要になることって、手の外科等をのぞけばそんなに無いような気もします。

ですから、そんなに、過敏になる必要もないのかなあとおもったりします。

コラム 神経

支配神経と神経レベルがある程度理解できていると、麻痺のある患者様とお話しさせていただくときに、不必要におどおどする事が少なくなるので、触診のついでに神経について学び直すのもお勧めしたいです。

国試にも出ますしね。

おわりに

そんな感じで、触診苦手意識MAXだった私が、いつのまにか何となく触診できるようになった方法とかについて書いてみました。

自分自身書いてみて、学生時代あれだけ苦手意識あったのに、実習とOTRの経験をとおしてそれなりには出来るようになるもんだなあとしみじみとおもいました。

ひょっとすると書き落としがあるかもしれません。

何かあったときには、随時、追記したいと思います。

まとめ

触診は、作業療法の評価法の一つで重要。

触診は怖くない。

移乗の介助のときに現場の人が腰痛にならないために、必要だなあと現場の人間として思うポイント「移乗知っ得ナレッジ&テクニック」まとめ

はじめに

移乗がすっかり板について、とんでもなく上手になりました。

ひろえもんです。

実習のときに、あんなに苦手だったのに、短期間でこんなに上達するとは思ってませんでした。自分で思い返してみても、とても不思議です。

先輩にいつか腰をやると言われたのは今は昔、同僚の先輩方から「うまいね」と素でほめられる程度には上達しました。

思わず自画自賛してしまうくらいにうまくなってしまいましたので、そのままの勢いで突っ走って記事にしてみたいと思います。

きっと、わりと多くの人の役に立てるのではないかと思います。

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OTSもちろん、介助職のかた、看護師の方にもよかったら、見ていただきたいなあと思います。

てなわけで、拡散希望す。

あと、我流な面もあるので、間違っている場合には指摘いただけると大変嬉しく思います。

あと、長くてすみません。

厚生労働省の見解

ご存知のかたも多いかもしれませんが、この6月に厚生労働省は「職場における腰痛予防対策指針」って言ういうものを改訂しておいでです。

そのなかには、介護や看護作業による腰痛って言う部分に対しての明確な言及があり、厚生労働省的にも「腰痛問題やばいなあ」と認識していると言う事が伝わってきます。

抱き上げに関してなどは、「労働者の腰部に著しく負担が掛かることから、リフトなどを積極的に使用し、原則として人力による抱き上げは行わせないこと」と明記している。

また、「福祉用具の使用が困難で人力で抱き上げざるを得ない場合には、適切な姿勢においてできうる限り身長差が少ない2人以上にて作業すること」

(from http://www.qlifepro.com/news/20130623/revised-low-back-pain-prevention-measures-guideline-ministry-of-health-in-the-workplace.html)

はい。

ということで、まあ、厚生労働省的には、

「1人でがんばった結果腰痛になられて、使い物にならなくなったら損失なんで、物で工夫するなり、2人でがんばるなりしてくださいね」

という感じです。

より詳しく知りたい方はこちらどうぞ。よくまとまってます。

厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」改訂について 公益社団法人 全国有料老人ホーム協会

現実問題として1人でなんとかしないといけない場面は多い

とはいえ、道具が無い現場も、道具を使う時間がない現場も、人員が十分に確保できない現場も山ほどあると思います。

要するに、ケアの対象となる方の移乗を1人でスピーディーに、かつ自分も相手も安全に行う事が求められます。

なんだかんだいって、介護市場の経営者って労働者側に対して、結構シビアに時間と金のノルマを科してくる人も多いですよね。

んだもんで、そのためには、ある程度の知識と技術を身につけておく必要があります。

それが、自分と対象者の方の安全と快適さを保証する事に繋がっていくのではないかと思います。

移乗知っ得ナレッジ&テクニック

では、どんな知識や技術を身につけたら、腰を痛めず、ひいては、余計な力を使わず、楽に介助ができるのでしょうか?

ひろえもん小柄で体作りもろくにしていないので、技を使わないと移乗なんか絶対に無理です。逆に言えば、技を知ればだれでもラクに移乗できるようになります。

ありとあらゆる移乗動作は、細かい部分は違えど、意識しなければならないポイントはどれも大きくは同じです。

ですので、今回は、「ベッドから車いすへの移乗」を意識して記事を書かせていただきたいと思います。

さて、それでは、ひろえもんが普段使ってるテクニックと意識している部分に基づいて、書いていきます。

1.車いすの位置

というか、段取りの問題カモ知れません。

とにかく、一番最初に車いすをベッドに寄せたり、多機能な車いすが使用できる場合には、手すりやフットレストを外してみたり、リクライニングや座面の傾きを調節してみたりして、移乗する際の妨げにならないようにします。

慣れないうちは時間がかかりますが、できるようになると、移乗の際対象者の重心を自分が高く持ち上げる必要がないため、腰をやるリスクがかなり変わると思います。

車椅子をあれこれするためには、ある程度触れてみてからの知識が必要になるので、OTSの皆さんは、休み時間とかに許可をもらって、バラしたり傾けたり自分が乗ってみたりをお勧めします。

すると、移乗に対する理解がより深まるように思います。

2.ベッドの高さの調節

介護が必要な方が利用する最近のベッドは、電動で動くものが主流になりつつあります。

これらは、大体腰の位置を中心として「頭の高さ」「足の高さ」「ベッドの高さ」がリモコン操作で変更できるようになっています。

移乗の際、車いすによっては、手すりが外せないため、対象者の重心を高い位置に持ち上げる必要がある場合があります。

このとき、ベッドの高さをあらかじめ高くしておけば、自分で持ち上げる必要がないので、腰を壊すリスクは低くなります。

3.ラクする秘訣は”てこの原理”

てこの原理ってのは、あれです。

「してん、りきてん、さよーてん」

のあれです。

これを毎日、唱えているといつの間にか、ほとんど力を使わずに、患者さまがおこせます。

嘘です。

唱えるだけでなく、実際に使う事が必要になります。

「いまいちよーわからんですのう」というOTSさんはこちらの本がおすすめです。

直接移乗については書いてないですが、てこのついでに運動学が学べる上、就職してからも役立つ充実の内容なので、変な教科書2冊買うよりかなりお買い得です。

最悪、中学校の理科の教科書を引っぱりだしてもいいかもしれませんね。

4.重力を使う

自分と相手の体重を使うと言い換えてもいいかもしれません。

ベッドから、患者様を座位にする際に、この原理と合わせてつかうと、ラクができます。

5.密着する

自分の体の重心上に、相手のからだの重心を持ってきましょう。そのために、きちんと対象者に正しく密着する必要があります。

これがてこの原理の真骨頂です。

すると、普通に立ち上がる動作をするように、下半身に力を入れるだけで、ラクに対象者のからだを持ち上げることができます。

これをマスターすると、移乗の対象者がわりと大柄な人でも全然イケるようになります。

6.腰よりも足を使う

解剖学で習ったカモ知れませんが、回旋での脊椎の可動域はお世辞にも広いとはいいがたいですね。

患者様を持ち上げ、移乗する際、足を動かさずに腰をまわすと、いつか靭帯をいためる気がします。

移乗対象者の体の向きを変更する際には、しっかりと自分の足を動かして、時分ごと方向転換するのが良い気がします。

7.対象者の残存機能をフル活用

対象者ができる事を引き出すために、こちらがしんどい思いをするだけというのはつまらないと思います。

どうやったら、自分もラク、相手もラクに移乗ができるかを考えます。

下肢の筋力が残存しているのであれば、きちんと自分の足をつかって立ち上がっていただきましょう。

機能維持に繋がるだけでなく、共同して一つの課題に取り組むときのあの充実感がお互いに味わえるのではないでしょうか?

そのためには、移乗対象者のことがしっかりとわかっていないといけませんのでいろいろと情報収集が大切になりそうですね。

8.無理だと思ったら諦める

その場合には、2人がかりでやるなり、道具を使うなりするべきだと思います。

無理した結果として、対象者さんがけがをしてしまうような事態だけはなんとしてもさけなければなりません。

おわりに

介護やPTOT看護は、移乗動作、病棟によっては多分毎日やる事ではあると思うのですが、2人で、「平行移動」するばかりでは、上達しません。

経営者サイドの都合で、いつ人員が削減されるとも限らない訳で、1人で正しく移乗できるようなテクニックを身につけておくことには、自分自身にとってもメリットがあることだとおもいます。

なにより、対象者の方ができることを奪わないために、できる事なら、多くのひとに1人での移乗についてマスターしてもらいたいなあと思います。

学生さんにおかれましては、色々経験不足、知識不足等で大変かとは思いますが、「なにがリハビリテーション?」と考えながらがんばっていただきたいと思います。