作業療法.netのミッション(使命)
作業療法.netとその関連プロジェクトのミッションは、「作業療法」と「作業療法士」を、世の中にうまく使ってもらえるようにすることです。世の中というのは、「顧客」です。
ここでいう、「顧客」とは、「作業療法」「作業療法士」と繋がりを持つすべての人です。
「作業療法」や「作業療法士」がうまく繋がりを構築できれば、世の中の生産性はより高まるはずです。「顧客」のために、作業療法士は活動しなければなりません。
そのために、「作業療法士とは、どのような仕事であるか」「作業療法とはどのようなものであるか」を多くの人に知ってもらうことは、とても重要です。それにより、作業療法士が「顧客」にうまく使ってもらえる可能性が高まります。逆に作業療法士が何する人なのかわからないと、本来作業療法士が解決可能であった問題の解決が遠のくかもしれません。
そうした機会損失を減らしていくことに貢献できればと思います。
コラム 作業療法士はスマホみたい?
「作業療法士って、なんでもやるんだね」
と言われることはあれど、それ以上理解が深まらないのがもどかしいところです。ふと、知人の「スマホってなんでもできるんだね」という言葉を思い出しました。
確かに、無理やり例えれば、作業療法士は、「スマートフォン」のようなものかもしれません。
スマートフォンは非常に便利です。
使いこなせれば、いくつもの役割を一つの端末でこなさせることができます。しかし、「スマホ」に搭載されているすべての機能を知っていなければ、すべての機能を使いこなすことはできません。
作業療法士も非常に多くの役割を果たす可能性があります。現在は管理者からその役割を振られなければ作業療法士は仕事を行うことができません。この業務の流れは、優秀な作業療法士がより良い作業療法を行う可能性を減少させる方向に作用することが少なくありません。
これは、少子高齢となった日本、今後の社会においては問題です。作業療法士はより効率的に生産性に寄与する責任があり、作業療法が解決できる問題に作業療法が関与できないことは、社会全体の生産性や利益を毀損することになります。
それを回避するには、世の中の多くが作業療法の存在を知り、その役割や働きを理解し、そしてそれを効果的に実践できる社会的存在=作業療法士との繋がりを持つこと、が必要不可欠です。加えて、作業療法士にはより自律的な社会への参画や働きかけが要求されるようになっています。しかし、まだまだ不十分であると言わざるを得ないでしょう。
これからの作業療法と作業療法士に必要な4つの「核」
上記を踏まえ、今後作業療法と作業療法士には以下が必要です。
- 作業療法の枠組みを生かしながら、作業療法士は問題解決においてクリエイティビティを発揮する。(作業療法の創造性と挑戦)
- 作業療法士ができることの表明、またその実績を示す(責任ある作業療法)
- 作業療法士が、実践の中で時代とマッチする作業療法をタイムリーかつスピーディーに更新する。(作業療法のアップデートと取捨選択)
- 作業療法や作業療法士の情報へのアクセスの効率化(作業療法のIT化)
以上はどれも重要ですが、特に3の時代に合わせた実践は、作業療法と作業療法士が最も力を発揮することができる点です。
これらを「核」として、作業療法を世の中へより浸透させ、問題解決の現場で活用できるようにすることは、少子高齢社会においては必要不可欠です。
これからの作業療法士の戦略的プロセス
作業療法士が上記の4つの「核」をより効果的に実践するためには、作業療法士の活躍が今以上に世の中に浸透することが有効です。そのためには、以下のような戦略的プロセスが有効であると考えます。
作業療法士が、自身の作業療法の情報発信に積極的になる
作業療法士が自らの臨床や研究などの取り組みに関する情報を積極的に発信することは極めて重要です。
なぜかというと、作業療法士が世間一般に向けて、自分の取り組みを発信し、その成果を世の中に問うことが当たり前の文化になると、流通する情報量が増えるので世の中の人が曝露する作業療法や作業療法士の情報は増えるという仮定するからです。
認知度が高まれば、作業療法と作業療法士が問題解決にスムーズに参画できる可能性は高まります。
作業療法士個人としても、後述するセルフブランディングの観点から自身の作業療法の情報発信には大きなメリットがあります。ちなみに、早く始めるほど、有利です。
コラム 作業療法士は、学会発表・論文がお嫌い?!
ちなみに、発表したり書いたりする側の話ではありません。聞いたり、読んだりする側の消費する側の話です。
学会発表は、まず、説明責任を果たすため、次に自分の研鑽のため、最後に同じ悩みを持つ誰かのためにという重要な意義と目的があります。
しかし、現実問題として、あまり論文発表や学会発表がうまくシステムとして機能していない気がするのは私だけでしょうか?学会は、実践者同士の出会いの場や新たなメンターとの出会いの場としては機能しているものの、臨床における作業療法を加速度的に進歩させるという機能はまだまだこれからという感じがします。
これは、学会発表や論文発表に積極的にコミットする臨床家が少ない原因背景となっているのではないでしょうか。つまり、情報拡散の観点から、コストパフォーマンスが悪いからではないでしょうか。
せっかく書いた論文も、探してもらえなければ埋もれてしまいます。
また、諸先輩がたが素晴らしいアイデアや実践に関する論文をいくつも書いてくださっていますが、有名なのは無料で公開されている論文あることを考えると、
・働いている作業療法士は有料の情報にアクセスする経済力がない
・作業療法士は、論文にお金を払うことに魅力を感じてない
という可能性があります。
そもそも、基礎研究になると、そういう研究があること自体が認知されていないこともしばしばです。
それは、作業療法士全体の割合を見たとき、臨床をしている作業療法士が圧倒的に多いからと推測されます。そうした臨床をする作業療法士にとって、必要なのは臨床に焦点を当てたコンテンツであり、自らの実践の論拠となったり新しいアイディアをもたらしてくれそうな論文や発表です。それもインスタントかつ手軽でなければなりません。
裏を返せば、「そうでない理論等の(しかし本当は重要な)コンテンツ」はあまりニーズがないということになります。ひょっとすると、作業療法は個別性が高いので、事例紹介などを読んでもあまり役に立てることができないと感じる作業療法士が多いためかもしれません。
上記の仮定に基づき一生懸命厳密な文章を書いても読んでもらえないのだとしたら、どうしたら良いでしょうか。2通りのアプローチがあると考えます。
1 従来通りの研鑽システムをこれまで以上に推進する。
2 作業療法士には、論文文化なじまないのだと認め、異なる仕組みを構築する。
前者はこれまで多くの方が取り組んでこられたし、今も多くの先生方が知恵を絞っておられますので、自分がどうこうできる範囲を超えています。
で、あるならば、当サイトでは後者のアプローチをとることにしました。
楽しくないと継続しないのは、臨床・リハビリ・作業療法と同じです。
ですから、作業療法士には、「役に立った」や「面白い」と感じられるコンテンツが必要なのですが、その数は未だ限定的であり、量産するには論文は個人的に戦略的に難しいと考えました。
また、作業療法士の中には勉強よりも実践が得意という方で、素晴らしい結果を出し続けている人も少なくありません。ストレングスモデルの観点からも向いてないものを、努力でなんとかするのは、最近のトレンドに反しているのではないでしょうか。顧客に臨床で提供するフレームワークを自分たちに適用できないのでは、それこそ無責任です。
医師や看護師に向いているコンテンツが、必ずしも作業療法士に向いているとは限りませんし、そういうのが向いてない人でもいい臨床をするのが作業療法の面白いところで強みだと思います。
良い作業療法をする人が発信するコンテンツは、面白く実践的なものです。それらがよりタイムリーに発信され、動画配信サービスやブログなどのコンテンツが作業療法士から積極的に発信されるようになれば、世の中が作業療法士や作業療法をよりうまく使いこなせるようになるのではないでしょうか。
作業療法士じゃない人でも簡単に情報を集められるようになる
例えば、積極的に情報発信する作業療法士が増えれば、インターネットを利用する作業療法士も増えるはずです。
そうなれば、自然と情報収集にインターネットを用いる作業療法士は増えます。
そうなれば、ビジネスとして作業療法の記事を書く人が増えるようになります。
結果として、インターネット上の作業療法に関する情報はより充実します。
つまり、低コストに一般の普通の人が、作業療法や作業療法士について、十分な情報を得ることができるようになります。現在作業療法士の間でしか流通していない作業療法の情報を、誰もが簡単に集められるようになることが、世の中に作業療法と作業療法士が浸透する上では欠かせません。
良い作業療法や作業療法士に注目が集まるようになる
ここまでくると、一つ懸念されることがあります。
そのうち、様々な質の、もっとすると真偽不明の作業療法に関する情報が溢れるようになり、何が本当で何が適当なことを書いているのかを見分けるのが難しくなって行くようになります。
すると、逆説的に信頼性の検証のシステムが必要であるという意識が芽生え、同時に良い作業療法のアイディアや作業療法士に注目が集まるようになります。信用できない情報が増える分、信用できる作業療法士やその実践である作業療法の相対的な価値が高まるからです。
そうなってくると、今度はより正確な情報を求めて、論文に回帰する流れも強化されるようになるはずです。過去の非常に素晴らしい論文の数々も再び注目を集めるようになるでしょう。
個々の作業療法士のブランディングと個別契約能力の獲得 最終段階
良い臨床のできる、質の高い作業療法士は、発信によりその成果が注目を集めることによって、施設の枠を超えて活躍するようになります。
「〇〇で困ったら、作業療法士のあの人に相談に行けばいい」
圧倒的な結果を出せば、自然とそういう話になるはずです。
そうした作業療法士の中には、医療や福祉の枠組みにとらわれず活躍することができる人材が出てくるはずです。
「うちの病院は〇〇が弱いので、非常勤で頼めませんか」
「いやいや、うちの施設で」「会社で」「行政で」
このように、作業療法士が行う仕事についての社会的な認知度は高まれば、作業療法士はよりその強みを生かした仕事ができるようになります。
セルフブランディングや、問題解決を必要とする顧客への個別契約による労働も可能となるでしょう。
このようなモデルとなる、スター的な作業療法士、カリスマ性のある作業療法士の数が増えれば、現在よりも積極的に作業療法士を目指す優秀な人材の確保が行いやすくなると考えられます。
世の中への浸透と同時に、優秀な人材のリクルートもできるので一石二鳥です。
優秀な人材が、新しい次世代のモデルとして、作業療法を発展させていきます。
このような好循環をスピーディーに生み出すためには、既存の枠組みにとらわれず、その外側で活躍できる、リスクテイクできる作業療法士をいかに社会の中で働けるようにするかということが重要になります。
そのためにキーとなるのは、やはり、情報発信によるセルフブランディングの技術であることは間違いないと思います。そして、作業療法士が自分自身のキャリアを自己選択・決定することが必要不可欠です。これらは、日々の臨床の中で作業療法対象者に向けて発信するメッセージとも矛盾しないはずです。
とにもかくにも、自律した能動的活躍ができる非常に優秀な作業療法士が、世の中に溢れかえるような状態が最終段階です。
まとめ
作業療法.netとその周辺プロジェクトのミッションは、
「作業療法と作業療法士を世の中に最大限使いこなしてもらうこと」
です。
そのために、4つの「核」と、以上のような戦略的プロセスを推進するために必要なコンテンツを扱います。
「作業療法っていいものなんだけど、良さがいまいち伝わらないなあ」
「作業療法士って、もっとうまく使ってもらえたら、もっと仕事するんじゃないかしら」
という素朴な感想が出発点です。
過度な期待はせずに、じっくり応援してやってください。