作業療法士って、お金の話は、積極的にはしません。そこには色々な理由があると多います。そもそも、作業療法の世界がそういう業界じゃないですから、お金の追求は別にいいかな、という人が長く続ける職業という感じです。
でも「お金がない」という作業療法士が多いのもまた事実です。
そういう意味で、「お金の話」が苦手な作業療法士が多いと思ってますが、それもまた程度問題で、作業療法士として対象者の利益の最大化を考えるときに、やっぱり直視しないといけない現実としてのお金の話ってのはあると思うので、そんなことを書いてきます。
お金は何かを実現するためのパワー
なぜお金が重要なのかという話に、作業療法士はもっと注目するべきです。ここをないがしろにするから、いつまでたっても自分がやりたい作業療法ができないのかなあ、という場合を目にすることがありますから、最初に書いておきたいと思います。
お金は、やりたいことをやるための力になってくれます。つまり、自己実現の後ろ盾になってくれるのがお金ということになります。
「お金がなくても、物事を動かすことはできるじゃないか」
そういうご意見もあろうかと思います。
しかし、そういう人は、悩んでないのでこの記事にもあまり注目しないと思います。色々な人を巻き込んで、人を動かす力があれば、お金は必要ないからです。
しかし、それは新しいビジネスを自分で生み出す力以上の能力、特に瞬発力が必要で、お金で物事を動かすよりもはるかにハイレベルな実践が必要です。
つまり難易度でいうと
お金の力を介在させないで事象を動かす > お金を後ろ盾にして事象を動かす
であるということです。
作業療法士は、事象を変化させることによって世の中に貢献するのが仕事ですので、お金の持つパワーをどれだけ認識できているのかというのは、大きな視点での変化を捉えることができるかどうかに大きく影響するでしょう。
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作業療法士の給料の決まり方
ということで、いきなりですが、お給料の決まり方です。
一応根拠はあるんですがぶっ飛ばして、結論だけ書きます。
作業療法士の給料は、保険などの点数から稼いできた額の約3分の1です。
真面目に臨床やっても、適当に臨床やっても単価に影響はない(!)ので、単位数をたくさん稼ぐ作業療法士の給料はいいです。
だから、交通事故の事故後後遺症のリハビリをやってて、それもガンガン単位を稼いでるようなところでもない限り、今後、保険点数をあてにするビジネスモデルの中で働く作業療法士の給与は、低下はしないまでも横ばいで、上がっていくことはありません。
作業療法士の生涯年収
ざっくり、作業療法士の税金や保険料さっ引かれる前の年間の給与の平均は400万円です。
そのように仮定して、22歳から定年65歳まで働くとすると、43年働くわけで、
生涯の給与は
400 × 43 万 = 17200万円
ということですね。
ここに退職金を加算したいところですが、どうせ大した金額じゃないと思われるので、
サラリーマンとしての作業療法士の生涯年収は、2億円もいかない
ということになります。
コラム サリーマンの生涯年収の平均
上記の額を多いと見るか少ないと見るかの議論はさておいて、参考となる比較対象の資料を提示しておきますね。
男性
中卒:2億0060万円
高卒:2億2090万円
専門・短大卒:2億2880万円
大卒:2億8510万円
平均退職年齢までの生涯年収の平均(退職金含む)男性
中卒:2億2280万円
高卒:2億4490万円
専門・短大卒:2億5520万円
大卒:3億2030万円https://gukkin222.com/archives/6392より
この資料を信じるなら、大卒作業療法士の生涯年収は、中卒者の生涯年収とトントン、もしくはそれ以下ということになりますね。
信じるか信じないかは、あなた次第です。
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お金が欲しければ、転業しよう
現実の話をしなければなりません。
サラリーマン作業療法士は、稼げません。
例えば、どれだけ、良い作業療法をしても、点数は同じです。
この辺りで心がおれる、心優しく真面目な作業療法士を何人か見てきました。
給料の多寡に関わらず、いい臨床をしてればそれでいいと思うのですが、やはりメンタルにくるものがあるようです。「正直者がバカをみる」のはやはり人のやる気を著しく低下させますね。
しかし、上記のようなそもそものお金の流れを知っていれば、サラリーマン作業療法士という職業がお金を手にするには向いていない仕事なのは明らかなのです。
作業療法士という仕事の枠組みとシステムには、いい臨床をする作業療法士にインセンティブが働くようなデザインが欠如しているからです。
また、お金の流れもへんちくりんです。
商取引における対価としての金銭の流れは
顧客 → 提供する側
ですが、作業療法士においては、医療保険だと
顧客3割 → 病院など → レセプト → 保険7割 → 病院 → 作業療法士
という金銭の流れです。
顧客の支払ったお金が、作業療法士の手元にいくまでに、工程があるのがお判りいただけると思います。
これは、普通のビジネスの世界では、例えば営業・セールスの仕事をしている場合には、良い仕事をしていれば売り上げに応じて給与が変動するのが当たり前ですが、良い仕事をしてもそれが給与の上昇に直結しないことを意味しています。
作業療法士はこのような業界構造の中で働いていると言って良いと思います。
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コラム ダイレクトな支払いにすれば色々捗る
上記のような問題は、お金の流れが複雑だから発生する話なのですから、シンプルにしてしまえば解決する問題です。
乱暴な話、もとより作業療法士の給与は、稼いだ点数の約3割なのだから、
顧客3割 → 作業療法士
となるような仕組みにしてしまえば、おそらく作業療法士のレベルやら水準やらは恐ろしいスピードで高まると思うのです。
その方が、国家財政にも優しいですしね。
もっともそうすると、倒産する病院や関連組織が大量発生することになるでしょう。ポジティブに捉えると、医療・社会保障の設計には無駄や改善の余地が含まれているという希望と見ることもできますね。
お金が欲しいという気持ちに蓋をしない
またまた、話は変わりますが、「お金が欲しい」と思うならその気持ちを作業療法士はもっと大切にするべきです。
その気持ちに蓋をして頑張り続けるのは、本当に精神衛生上良くないです。
「お金が欲しい」と感じるなら、そのためにしっかりと行動をしましょう。結果に繋がらなくても、そうやってやってみたことが自身の作業療法の幅を広げることに必ず繋がってきます。
更に言えば、もしあなたが作業療法士として良い仕事ができる頭があれば、やり方次第で本業以外で、色々な手段でお金が稼げる時代です。
「作業療法の仕事は素敵だけど、経済的に厳しいから続けられない」という事態になって、それが作業療法の対象者の方の不利益に繋がる可能性も軽減することができる可能性を考えると、作業療法士はもっと「お金が欲しい」という気持ちがあるならそれを大切にするべきだと思います。
特に、「先が見えない」と言ってる若手作業療法士においては特にそう言えると思います。先が見えないなら、自分の気持ちに基づいて、先を作っていくべきではないでしょうか。
受け身では、作業療法の世界も尻すぼみですし、お金の流れがない業界はやっぱり外から見て元気がないですし、お金好きな面白い人がよってこないですし、「お金が欲しい」を大切にすることによる、作業療法の対象者の方のメリットにもっと焦点を当てても良いと思います。
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お金に縛られると、組織に縛られるのはなぜか
今度は、組織レベルのお金の話です。日本の組織の多くは、お金で成り立っています。また、存続可能性の高い組織には、ちゃんとしたお金の流れが確立しています。
ところで、先日、やばい組織の話を書きました。
どうしてこういう組織が生まれるかというと、組織を構成する人間のうち、その組織に依存する人間の割合が一定を超えるからです。
その依存とは、
居場所的な理由と、
もう一つ
金銭的な理由
があります。
居場所的な理由
狭い地域のコミュニティのようなものの延長線上に成り立っている組織には、居心地の良さを優先して合理性を犠牲にしている面があります。
お金の周りが悪くても組織が存続できるという、経営者からするとありがたい組織でもあり、所属する側からしても根本的変化がないので、安心感があります。
一方で人材の流動性が低下しがちで、フットワークが軽い優秀な人が流れ込んでくる可能性は下がりますし、時代の変化についていけない組織になる傾向が強いです。中小企業だけでなく、最近大企業でも挑戦や変化を嫌う雰囲気のところはあります。
先輩後輩などの縦の秩序が行き過ぎると、こういう組織になりがちです。
金銭的理由
安定して低賃金でも払ってもらえる方が安心という、そういう理由です。
主には実力的に、転職が不安だったり、近くにより良い職場が無い都市部じゃ無い場所に住んでいたりということになろうかと思います。
組織に縛られているようで実は依存しているのですが、なぜ依存するかというと、組織にお金の流れを委ね切ってしまうからです。それは、労働組合とかまた別のお話ですね。
作業療法士が転職できない、転職しないから
上記2つ「居場所」「金銭面」の理由から、組織に縛られ、お金に縛られしている作業療法士は多いでしょう。
つまり、労働市場において重用されるだけの実力をプレゼンできないので転職した時に、今と同じ待遇を得られる保証がないと感じていると、そういうやばい組織でもしがみつきたくなるということです。
自分の生活はもちろん、家族の生活がかかってると、なおのことです。
ぶっちゃけ時間もありません。
ですが、より良い待遇を求めて作業療法士が転職市場に果敢に挑戦するというのは正直ありだと思いますし、むしろこれから必要になってくる作業療法士の実力の一つなのではないかと思っています。
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作業療法士が副業しないから
臨床の幅が広がったり、作業療法士として将来ご飯が食べられなくなった時に備えることができます。
その保険があると、心安く、やるべきと思うことに注力できます。
それが証拠にと言いますか、あくまで私見なんですけど、
「やめざるを得なくなったとしても、アレがあるから大丈夫」
という作業療法士の先生方はやっぱりご活躍される傾向にあると思います。
腹をくくって、作業療法に腰を据えることができるからでしょう。
若手作業療法士は、これから一生作業療法士するならその辺リスクテイクの方法の一つとして考えておくことが必要と思います。
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中途半端にお金がモチベーションの作業療法士は今後割と大変な思いをすると思う
作業療法士で、「お金が得られないので夢が無い」と1000万円以上稼ぎたいからとサラリーマン作業療法士に別れを告げた人がいます。
同じ思いのまま、中途半端にサラリーマン作業療法士を続けても、これまで書いてきたように作業療法士はお金になりません。
確かに作業療法士の資格は手に職ですし、資格で食いっぱぐれない職業であることもまちがいありません。
しかし、「仕事がしたい」という気持ちがないと絶対に割に合わない仕事です。
中途半端にお金をモチベーションにして作業療法士を続けても良いことはありません。作業療法士やるなら、糊口をしのぐだけじゃもったいないですし、作業療法士がダラダラとお金のために仕事をすることはともすると作業療法対象者に多大なる不利益を与える構造に加担することにもつながりかねないことを心の何処かに置いておくことが必要と思います。
まとめ
もし、作業療法士を一生やるなら、
今後のお金の問題は
今避けて通れない。
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