この記事のポイント
- 2026年度(令和8年度)診療報酬改定は2026年6月1日に施行されました。早期リハビリテーション加算の増点(入院3日以内60点)、休日リハビリテーション加算の新設(1単位25点)など、リハビリ関連の見直しが多数行われています
- 離床を伴わないリハビリテーションは所定点数の100分の90への減算と1日2単位までの制限が導入され、「早く起こし、成果を出す」方向性が明確になりました
- 回復期リハ病棟では土日祝を含む全日のリハ提供体制が要件化され、実績指数の算出方法・除外基準も見直されました。算定要件の確認と提供体制の再設計が現場の急務です
2026年度改定の全体像
2026年度(令和8年度)診療報酬改定は、中央社会保険医療協議会(中医協)が2026年2月13日に答申を行い、診療報酬本体・材料価格は2026年6月1日、薬価は同年4月1日に施行されました(出典: 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」, 2026)。「4月改定」ではない点に注意してください。物価や賃金、人手不足など医療機関を取りまく環境の変化への対応が改定全体の課題とされています(出典: 厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年4月)」, 2026)。
リハビリテーション領域では、発症・入院直後の早期介入、休日を含む切れ目のない提供体制、離床とアウトカムの重視という方向性が今回の改定を貫いています。以下、日本作業療法士協会がまとめた個別改定項目(中医協第647回総会資料の抜粋)に基づき、OTに関係する確定事項を整理します(出典: 日本作業療法士協会「令和8年度診療報酬改定 個別改定項目について(まとめ)」, 2026)。なお、新人のうちに押さえておきたい制度の基礎は新人OTが最初に確認したいチェックリストにまとめています。
診療報酬改定とは、病院やリハビリ施設が提供するサービスの価格やルールを、国が見直す仕組みです。今回の見直しは2026年6月1日から始まりました。
この見直しによって、入院中のリハビリの受けられるタイミングや回数、内容が変わることがあります。ご本人やご家族にとっても、知っておくと安心なポイントを紹介します。
疾患別リハビリテーション料の主な変更点
OTの日常業務に最も直結するのが、疾患別リハビリテーション料に関する次の見直しです。
- 早期リハビリテーション加算の増点 — 入院1〜3日目は1単位60点、4日目以降は25点。算定期間は入院日から起算して14日まで(従来は発症等から30日を限度に一律25点)
- 休日リハビリテーション加算の新設 — 起算日から30日を限度に、土曜・日曜・祝日に実施したリハビリ1単位につき25点を加算(入院患者が対象)
- 離床を伴わないリハビリの区分新設 — 離床を伴わずに行う場合は所定点数の100分の90で算定し、1日2単位までに制限
- 療法士の業務範囲の拡大とみなし単位 — 疾患別リハ料等以外の業務に従事した時間20分につき1単位とみなし、従事者1人当たりの実施単位数に加える取扱いを導入
- 医療機関外リハビリの上限見直し — 1日3単位までとされていた医療機関外での実施上限を、一連の入院で合計3単位(厚生労働大臣が定める患者は6単位)に見直し
- 退院時リハビリテーション指導料の対象限定 — 入院中に疾患別リハビリテーション料等を算定した患者に限定
早期リハビリテーション加算 ── 超早期介入を厚く評価
早期リハビリテーション加算は、起算日が「発症・手術・急性増悪の日」から「入院日」に変わり、入院1〜3日目は1単位60点、4日目以降は25点、算定期間は入院日から起算して14日までとなりました(出典: PT-OT-ST.NET「令和8年 診療報酬改定情報」, 2026)。入院直後の3日間の介入が従来の倍以上に評価される設計であり、入院当日・翌日からOTが介入できる体制があるかどうかが収益にも直結します。
休日リハビリテーション加算 ── 土日祝の提供体制を評価
新設された休日リハビリテーション加算は、疾患別リハビリテーション料の起算日から30日を限度に、土日祝に実施した1単位につき25点を算定できます(出典: 日本作業療法士協会, 2026)。「週末はリハビリが止まる」ことによる機能低下を防ぐ狙いであり、休日出勤を含むシフト設計が算定の前提になります。
離床を伴わないリハビリの減算
各疾患別リハビリテーションに、離床を伴わずに行う場合の区分が新設されました。ベッド上のみで完結する訓練は所定点数の100分の90で算定し、1日2単位までに制限されます(出典: PT-OT-ST.NET, 2026)。
注意
ベッドサイド介入そのものが否定されたわけではありませんが、離床の可否の判断と、離床を伴わない介入を選択した医学的理由の記録がこれまで以上に重要になります。判定基準の詳細は疑義解釈で示されているため、必ず最新の疑義解釈資料を確認してください。
療法士の業務範囲の拡大と「みなし単位」
従事者1人1日18単位が標準とされてきた実施単位数について、疾患別リハビリテーション料等以外の業務に従事した時間20分につき1単位とみなす取扱いが導入されました。また、回復期リハ病棟や地域包括ケア病棟などの専従療法士が従事できる業務内容が追加され、退院に向けた屋外での指導など配置病棟以外での業務従事も明確化されています(出典: 日本作業療法士協会, 2026)。訓練室での単位取得だけでなく、病棟でのADL支援やチーム業務がOTの業務として位置づけやすくなる変更です。
2026年6月からの主な変化を、リハビリを受ける側の目線でまとめます。
- 入院してすぐのリハビリが手厚くなりました: 入院した日から早い時期にリハビリを始めることが、これまで以上に重視されています
- 土日や祝日のリハビリが増える可能性があります: 休みの日もリハビリを続けられる病院の体制が評価されるようになりました
- ベッドの上だけのリハビリは回数が制限されます: できるだけベッドから起きて行うリハビリが基本になりました
計画書・書類関連の見直し
書類の簡素化も今回の改定の柱の一つです。
- リハビリテーションに係る複数の計画書の様式が統一されました。リハビリテーション総合計画評価料は初回と2回目以降で区分され、評価料1は初回300点・2回目以降240点、評価料2は初回240点・2回目以降196点となっています(出典: PT-OT-ST.NET, 2026)
- 脳血管疾患等・廃用症候群・運動器リハビリテーション料における目標設定等支援・管理料は廃止され、同管理料を算定していない場合の減算規定(100分の90)も廃止されました(出典: 日本作業療法士協会, 2026)
- 計画書の患者署名欄の廃止や、計画書を説明する職種の拡大(回復期リハ病棟では引き続き医師による説明が必要)といった運用の見直しも報告されています(出典: リハビリ評価・計算ツール「2026年診療報酬改定リハビリ関連まとめ」, 2026)
書類作成の負担が減る分、浮いた時間を評価とアウトカム管理に振り向けられるかが問われます。
リハビリの計画書に関する手続きも簡素化されました。書類のためにご本人やご家族が何度も署名する負担は減る方向です。計画の内容がわからないときは、これまでどおり遠慮なくスタッフに質問してください。
回復期リハビリテーション病棟の見直し
回復期リハビリテーション病棟では、体制とアウトカムの両面で大きな見直しが行われました(出典: 日本作業療法士協会, 2026)。
全日リハ提供体制の要件化と強化体制加算
回復期リハビリテーション病棟入院料1〜4のすべてで、土曜・休日を含む全ての日にリハビリテーションを提供できる体制が要件となりました。さらに入院料1を届け出る病棟を対象に、実績指数、排尿自立支援加算の届出、退院前訪問指導の実施割合等を要件とする回復期リハビリテーション強化体制加算が新設されています。
実績指数の算出方法・除外基準の見直し
- FIM運動項目のうち歩行・車椅子およびトイレ動作が、入棟中に5点以下から6点以上に改善した場合、それぞれFIM運動項目利得に1点を加点
- 実績が認められない場合の判定基準を、実績指数が2回連続で27を下回った場合から30を下回った場合に引き上げ
- 年齢80歳以上を除外要件から削除
- FIM認知項目の得点による除外を24点以下から14点以下に厳格化
- 算出から除外できる患者の割合を100分の30から100分の20に縮小
- 実績指数等の院内掲示に加え、ウェブサイトへの掲載を明確化
高齢・認知機能低下を理由とした除外が狭まり、これまで除外されていた患者層でも成果を出すことが求められます。重症患者の基準見直しでは高次脳機能障害・脊髄損傷と診断された患者が対象に追加され、高次脳機能障害者の退院時には支援センターや障害福祉サービス事業所等の情報を説明・提供することが要件化されました。FIM測定に関する研修会の年1回以上の開催も入院料1〜4の要件です。認知機能や高次脳機能への専門性を持つOTの役割が、制度上も一段と重くなったといえます。
脳卒中や骨折の後に入院する「回復期リハビリテーション病棟」では、土日や祝日も含めて毎日リハビリを受けられる体制づくりが進みます。また、リハビリの成果(どれだけ生活動作が改善したか)を病院が公表する仕組みも強化されました。病院選びの際の参考情報が増えることになります。
急性期・精神科など、その他OTに関わる項目
疾患別リハビリテーション料の枠外でも、OTの配置・協働を評価する項目が新設されています(出典: 日本作業療法士協会, 2026)。
看護・多職種協働加算(新設)
急性期病棟で看護配置基準を超えてPT・OT・ST・管理栄養士・臨床検査技師等を配置した体制を評価。加算1は277点、加算2は255点(1日につき)
精神病棟看護・多職種協働加算(新設)
精神病棟で精神保健福祉士・作業療法士または公認心理師を看護職員と併せて配置した際の評価
リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算2(新設)
連携体制加算の要件・施設基準を見直し、地域包括ケア病棟でも算定可能に
身体的拘束最小化推進体制加算(新設)
組織的に質の高い身体的拘束最小化に取り組む場合の評価として1日につき40点
看護・多職種協働加算については、日本作業療法士協会を含むリハビリテーション専門職3団体が病棟業務に関する実践指針を公表しています(出典: 日本理学療法士協会「令和8年度診療報酬改定情報」, 2026)。急性期病棟へのOT配置という新しい働き方が制度に位置づけられた形であり、訓練単位に依存しないOTの価値を示す好機です。
OT・現場への影響と対応策
今回の改定を踏まえ、現場で優先的に取り組みたい対応は次の通りです。
休日・早期の提供体制を再設計する
早期リハビリテーション加算の増点と休日リハビリテーション加算の新設、回復期での全日提供体制の要件化により、土日祝を含むシフト設計と入院直後から介入できる運用が収益と施設基準の両面で必須になりました。人員配置と労務管理を含め、部門として計画的に移行してください。
離床を軸に介入内容を見直す
離床を伴わないリハビリの減算・単位制限に対しては、離床可否の判断プロセスと医学的理由の記録を標準化することが第一歩です。ベッドサイド介入を離床プログラムへつなぐ視点は、OTの専門性そのものでもあります。
アウトカム管理を日常業務に組み込む
実績指数の基準引き上げと除外基準の厳格化により、FIMを中心とした定期的な評価と改善度の可視化の重要性がさらに増しました。FIM測定研修の年1回以上の開催も要件化されています。評価データを部門で一元管理する体制を整えましょう。
病棟業務・多職種協働に踏み出す
みなし単位の導入や看護・多職種協働加算の新設は、訓練室の外で働くOTを制度が後押しする変更です。病棟でのADL支援、食事場面への関与、退院に向けた屋外指導など、単位数に表れにくかった業務を積極的に担ってください。部門経営の考え方は作業療法部門の収益改善戦略で詳しく解説しています。
疑義解釈のフォローを組織化する
改定内容の細部は、施行後も疑義解釈資料(その1〜その10、2026年7月時点)で順次示されています(出典: 日本理学療法士協会, 2026)。特定の個人に依存せず、組織として一次情報を追う仕組みを作り、医事課と連携して算定要件を確認してください。
ヒント
本記事は2026年7月時点の公表資料に基づく概要です。実際の算定・届出にあたっては、厚生労働省の告示・通知・疑義解釈資料の原文を必ず確認してください。
制度の変更は、ご本人やご家族にも影響があります。
- リハビリを受けられる曜日や回数が変わることがあります(土日にリハビリが入る病院が増える見込みです)
- 医療費の仕組みが変わるため、自己負担額が変わることがあります
- ベッドの上だけで行うリハビリは制限されるため、起きて行うリハビリへの切り替えを提案されることがあります
リハビリの内容や回数に変更があった場合は、遠慮なく担当のリハビリスタッフやケアマネジャーに理由を聞いてみてください。制度の変更によるものなのか、治療方針の変更によるものなのかを理解することで、安心してリハビリに取り組めます。
2026年度改定は、「早く起こし、休みなく関わり、成果を示す」というメッセージを明確に打ち出しました。制度の変化を「脅威」ではなく「機会」と捉え、新設された加算や病棟業務への評価を積極的に活用してください。テクノロジーの進展がOTの仕事に与える影響についてはAIはリハビリをどう変えるかで解説しています。
まとめ ── 2026年度診療報酬改定への対応
- 2026年度改定は2026年6月1日施行。早期リハ加算の増点(入院3日以内60点)と休日リハ加算の新設(25点)で、早期・休日の提供体制が評価されるようになりました
- 離床を伴わないリハは90%減算・1日2単位制限。離床判断と記録の標準化が急務です
- 回復期リハ病棟は全日提供体制が要件化され、実績指数の基準引き上げ・除外基準の厳格化が行われました
- みなし単位や看護・多職種協働加算の新設は、訓練室の外で働くOTを後押しする変更です
- 細部は疑義解釈で順次示されています。組織として一次情報を追い、医事課と連携して算定要件を確認しましょう
まとめ ── 2026年6月からのリハビリ制度
- 2026年6月1日から、リハビリに関する国のルールが新しくなりました
- 入院してすぐの時期や、土日祝日のリハビリが手厚くなる方向の見直しです
- ベッドの上だけで行うリハビリは回数が制限され、起きて行うリハビリが基本になります
- リハビリの回数や費用が変わることがあります。気になることは担当スタッフやケアマネジャーに質問しましょう
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。診療報酬の算定・届出にあたっては、必ず厚生労働省の告示・通知・疑義解釈資料の原文および所属施設の医事部門にご確認ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
運営者プロフィールを見る →