この記事のポイント
- OTは「ただの運動」ではなく「何のための運動か」を明確にした「目的のある運動」を設計する
- 椅子ヨガやラジオ体操も、段階づけや環境調整により治療的に活用できる
- 対象者の生活目標に結びつけた運動プログラムが、継続のカギになる
「ただの運動」と「目的のある運動」の違い
「運動が体に良い」ことはわかっていても、なかなか続かないものです。その理由の一つは、「何のためにこの運動をするのか」がわからないことにあります。
作業療法士(OT)は、ただ「運動しましょう」とは言いません。「買い物に行けるように」「孫と遊べるように」など、その方の生活の目標に結びつけた運動を提案します。
目的がはっきりしている運動は、続けやすいのです。
ヨガをリハビリに活かす
ヨガの治療的効果
ヨガには、体だけでなく心にも良い効果があります。
- 体: 柔軟性、筋力、バランス能力が向上します
- 心: 深い呼吸でリラックスし、不安やストレスが和らぎます
- 頭: ポーズを覚えて実行することで、脳の活性化にもつながります
ヨガというと難しいポーズを想像するかもしれませんが、リハビリで行うヨガはとてもシンプルなものです。
椅子ヨガ ── 座ったままでもできるヨガ
「ヨガをやってみたいけれど、床に座れない」「立っているのが不安」という方にぴったりなのが椅子ヨガです。
椅子に座ったまま、こんなことができます。
- 深呼吸: ゆっくり息を吸って、ゆっくり吐く。これだけで心が落ち着きます
- 腕のストレッチ: 両手を上に伸ばしたり、横に広げたりします
- 体をひねる: 椅子に座ったまま、ゆっくり体をひねります
- 立ち上がりの練習: 椅子の背もたれに手をつきながら、ゆっくり立ちます
動かない安定した椅子を使ってください。キャスター(車輪)がついた椅子や折りたたみ椅子は危険です。痛みを感じたら無理をせず、できる範囲で行いましょう。
ラジオ体操をリハビリに活かす
ラジオ体操は、子どもの頃に覚えた方も多いのではないでしょうか。実はリハビリの視点から見ても、とても優れた運動です。
- 全身を動かせる: たった3分で体の主要な部分をまんべんなく動かせます
- 覚えている方が多い: 昔やったことがある方は、音楽が流れると自然に体が動くことがあります
- 無理なく始められる: 座ったままでもできる部分だけ行うこともできます
毎朝テレビやラジオのラジオ体操に合わせて行うと、生活リズムも整います。立って行うのが難しい方は、椅子に座って上半身だけ動かしてみてください。続けることが一番大切なので、毎日でなくても週3回から始めてみましょう。
OTが運動プログラムを組み立てる視点
OTは、運動メニューを考えるときに「何ができるようになりたいか」を大切にします。
たとえば:
- 「買い物に行きたい」→ 歩く力と立っている力をつける運動を
- 「洗濯物を干したい」→ 肩を動かすストレッチを
- 「孫と遊びたい」→ 足腰を鍛える体操を
このように、生活の中でやりたいことと運動が結びつくと、「何のためにやっているか」がわかるので続けやすくなります。
対象者別のプログラム例
OTは、お一人おひとりに合わせた運動メニューを考えます。
ご高齢の方には:
- 椅子に座ったヨガで、バランスの練習から始めます
- 慣れてきたらラジオ体操に挑戦します
心の病気で通院中の方には:
- まず深呼吸でリラックスしてから体操に入ります
- みんなで一緒にラジオ体操をすることで、一体感が生まれます
脳卒中後のリハビリでは:
- 動かしにくい方の手も使ったヨガのポーズを行います
- 安全な環境で少しずつ立つ練習を進めます
運動を続けるためのコツ
運動を続けるコツをお伝えします。
- 生活に組み込む: 「朝ごはんの後にラジオ体操」のように、毎日のルーティンにしましょう
- 記録する: カレンダーにシールを貼ると、達成感が見えるようになります
- 少しから始める: 最初は週3回、10分からで十分です
- 一緒にやる: 家族と一緒に行うと楽しく続けられます
- 好きな音楽をかける: お気に入りの音楽があると、運動が楽しくなります
「サボってしまった」と自分を責める必要はありません。1日休んでも、また次の日に始めれば大丈夫です。完璧を目指さず、「細く長く」続けることを目標にしましょう。
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。