この記事のポイント
- 同名半盲とは、両目の視野の同じ側(右側または左側)が見えなくなる状態で、脳卒中後に多く見られます
- 見えていない側からの危険(ぶつかる、食事の見落とし)に対して、環境調整と視覚走査訓練が有効です
- 家族のサポートとして、見える側から声をかける・環境を整えるなどの具体的な工夫があります
同名半盲とは
同名半盲とは、両目の視野の同じ側が見えなくなる状態です。たとえば「左同名半盲」では、両方の目で左側が見えなくなります。
脳卒中の後に起きることが多く、目の病気ではなく脳の損傷が原因です。
ご本人は「見えていない」ことに気づいていないことがあります。「なぜかよくぶつかる」「食事の片側が残る」といったサインが出ることがあります。
注意
同名半盲は片目を閉じても改善しません。両方の目で同じ側が見えない状態です。「片目が悪い」のではなく「脳の問題」であることを理解しておくことが大切です。
日常生活で起きやすい危険場面
同名半盲のある方は、以下のような場面で困りやすくなります。
- 歩いているとき: 見えない側の壁や家具にぶつかる、段差に気づかない
- 食事のとき: お膳の片側の料理を見落として残してしまう
- 読み書き: 文章の端を読み落とす、行がずれる
- 身だしなみ: 顔の片側の髭剃りが残る、服の乱れに気づかない
- 人と話すとき: 見えない側にいる人に気づかない
お膳の片側の料理が残っていたら、「まだ○○がありますよ」と声をかけてあげてください。お皿を見える側に移動させるのではなく、ご本人が首を回して確認する習慣をつけることが大切です。
視覚走査訓練 ── 見えない側を「探す」練習
見えない側を意識的に「探す」練習をすることで、日常生活の安全性が向上します。
どんな練習をするの?
- 首を回す練習: 見えない側に頭を向けて、周囲を確認する習慣をつけます
- 目印を使う練習: 見えない側の端に赤いテープなどの目印を置き、まずそこに目を向けてから全体を見る練習をします
- 読書の練習: 本やノートの端に線を引き、そこまで確実に読む練習をします
練習のポイント
- 一度にたくさんやるのではなく、毎日少しずつ続けることが大切です
- 食事や身支度など、日常の場面で「見えない側を確認する」を意識しましょう
- 効果が出るまでには時間がかかります。あせらず続けることが重要です
環境調整 ── 安全な暮らしのための工夫
家の中の安全対策
- ぶつかりやすい角にクッション材を貼る
- 床の障害物(電気コード、敷物)を片づける
- 廊下や階段を明るくする
- 見えない側の壁に目立つ色のテープを貼り、注意を促す
食事の工夫
- テーブルと違う色のランチョンマットを使い、食器の範囲をわかりやすくする
- 料理は正面に並べる(見える側に寄せすぎない)
- 「時計回りにお皿を確認する」習慣をつける
座る位置の工夫
- ご家族は見える側に座るようにしましょう
- テレビも見える側に配置すると、楽に視聴できます
一緒に歩くときは、見えない側に立ってあげてください。見えない側からの危険をご家族が確認できます。また、横断歩道では「右を確認してね」と声をかけることも有効です。
家族のサポートの心得
ご家族が心がけたいこと
- 声をかける方向: 見える側から声をかけると気づきやすくなります
- 代わりにやりすぎない: 「右を見てね」と促すことで、ご本人の走査の練習になります
- 家具の配置を変えない: 慣れた配置を維持することで安全に動けます
- 温かく見守る: 時間がかかっても、自分で確認する姿勢を応援してあげてください
回復について
発症後3〜6か月で視野が改善する方もいますが、完全に戻ることは少ないです。しかし、「見えない側を確認する」習慣が身につけば、日常生活は十分に自立できます。あせらず、長い目で見てあげてください。
ヒント
同名半盲がある場合、自動車の運転は原則として困難です。運転再開については、必ず主治医と相談してください。
同名半盲の方とご家族へのまとめ
- 同名半盲は脳の損傷による視野障害で、目の病気ではありません
- 見えない側を意識的に確認する「視覚走査訓練」が最も重要なリハビリです
- 家の中の安全対策(角のクッション材、床の整理、照明の確保)を行いましょう
- ご家族は「見える側から声をかける」「代わりにやりすぎず促す」ことを心がけてください
- 回復には時間がかかりますが、代償戦略を身につければ日常生活は十分に自立できます
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士(OTR)
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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