この記事のポイント
- 65歳以上の一人暮らし高齢者は約700万人を超え、今後も増加が見込まれています
- 見守りには対面・電話・ICT・センサーなど複数の手段があり、組み合わせて使うことが大切です
- 作業療法士は「自立を損なわない見守り」を設計する専門家として、過干渉にならない仕組みづくりを提案できます
- 地域包括支援センターは見守りの相談窓口として無料で利用でき、早めの相談がカギになります
増え続ける高齢者の一人暮らし
65歳以上で一人暮らしをしている方は約742万人。5人に1人の割合です。
一人暮らし=危険ではありません。自分のペースで元気に暮らしている方はたくさんいます。ただし、体や心に変化が出てきたとき、その変化に気づく仕組みがあるかどうかが大切です。
見守りの4つの手段
見守りには大きく4つの方法があります。それぞれに得意なことがありますので、組み合わせて使うのがおすすめです。
- 対面の訪問:表情や家の様子を直接確認できます。「お茶を飲みに寄る」など自然な形がベストです
- 電話・ビデオ通話:手軽に始められます。ただし「元気なふり」をされることもあるので、他の手段と組み合わせましょう
- 見守りサービス(ICT):緊急通報ボタン、見守りアプリ、スマートスピーカーなど。自治体の補助がある場合も
- センサー型:人感センサーやドア開閉センサーで、生活リズムの変化に気づけます。プライバシーを守りながら24時間見守れます
どれか一つで完璧にはなりません。複数を組み合わせることで安心感が高まります。
作業療法士が考える「自立を損なわない見守り」
見守りは「監視」ではない
心配するあまり、毎日何度も電話をかけたり、何でも管理しようとしたりしていませんか? 過度な干渉は、ご本人の自尊心や「自分でやろう」という意欲を奪ってしまうことがあります。
見守りの目的は「監視」ではなく、ご本人が自分らしく暮らし続けるための安全網をつくることです。
IADLの変化に着目する
帰省したときにチェックしていただきたいポイントがあります。
- 冷蔵庫:同じ食材が大量にある、賞味期限切れが増えていませんか?
- お金の管理:公共料金の未払い、同じものの重複購入はありませんか?
- お薬:薬が余っていたり、飲み忘れが目立ったりしませんか?
- 外出:以前より家にこもりがちになっていませんか?
こうした「小さな変化」は、生活を回す力が低下しているサインかもしれません。早めに気づくことが大切です。
見守りの「段階設計」という考え方
見守りの仕組みは、最初からすべてを揃える必要はありません。親御さんの状態に合わせて段階的に整えていきましょう。
- 第1段階:定期的な電話やビデオ通話で様子を確認する
- 第2段階:見守りセンサーや緊急通報システムを導入する
- 第3段階:介護保険サービスや訪問リハビリを利用する
少しずつ仕組みを整えることで、ご本人の自立を尊重しながら安全を確保できます。
地域包括支援センターを活用する
地域包括支援センターは、高齢者の暮らしに関する無料の相談窓口です。介護保険をまだ使っていなくても相談できます。
「まだ早い」と思ったときが、相談のベストタイミングです。元気なうちにつながっておくと、いざというときにスムーズにサービスを利用できます。
「市区町村名 + 地域包括支援センター」で検索すると、お住まいの地域の窓口が見つかります。
家族の心構え ── 「ちょうどいい距離感」を探る
完璧な見守りは存在しない
見守りの仕組みをどれだけ整えても、すべてのリスクをゼロにすることはできません。100点の見守りではなく、70点でも続けられる見守りを目指しましょう。
親の意思を尊重する
見守りの仕組みを導入するときは、ご本人の気持ちを大切にしてください。一方的に「監視する」のではなく、「一緒に安心の仕組みを考える」というスタンスが大切です。
- 「何かあったときにすぐ助けに行けるようにしたい」
- 「離れていても安心できるように、一緒に考えよう」
ご本人が「見守られている」ではなく「つながっている」と感じられる仕組みが理想です。
家族自身のケアも忘れずに
離れて暮らす親を心配し続けるのは、ご家族にとっても大きなストレスです。ご自身の生活の質を保つことも、見守りを続けるためにはとても大切です。
つらいと感じたら、地域包括支援センターや家族の会など、ご自身の相談先も活用してください。
- 一人暮らし=危険ではなく、変化に気づく仕組みがあるかどうかが大切です
- 見守りの方法は複数あり、組み合わせて使うと効果的です
- 地域包括支援センターへの相談は「まだ早い」と思ったときがベストタイミングです
- 100点ではなく70点でも続けられる見守りを目指しましょう
- 帰省時に冷蔵庫の中、お薬の管理状況、郵便物の溜まり具合をさりげなくチェックしてみてください
- 親御さんのお住まいの地域包括支援センターの連絡先を調べて、ご自身の携帯電話に登録しておきましょう
- まずは週1回の電話やビデオ通話から始めて、必要に応じて見守りサービスを段階的に追加していくのがおすすめです
参考文献
- 内閣府「令和5年版高齢社会白書」
- 厚生労働省「地域包括ケアシステムの実現に向けて」
- Peres K, et al. (2008). Disability screening in older adults: does the choice of instrument matter? Journal of the American Geriatrics Society, 56(6), 1037-1042.
- 日本作業療法士協会「地域包括ケアシステムにおける作業療法士の役割」
- 総務省「令和4年通信利用動向調査」