この記事のポイント
- 脳卒中のリハビリは発症直後から始まり、急性期・回復期・生活期の3段階で進みます
- 作業療法士は「生活に戻ること」を目標に、食事・着替え・トイレなどの日常動作の回復を支援します
- 発症後6ヶ月がゴールではありません。生活期のリハビリで回復が続く方は多くいます
脳卒中とは ── まず全体像を知る
脳卒中とは、脳の血管に起こるトラブルの総称です。大きく3つのタイプがあります。
- 脳梗塞: 脳の血管が詰まる(全体の約75%)
- 脳出血: 脳の血管が破れる(約20%)
- くも膜下出血: 脳を包む膜の下で出血する(約5%)
いずれも突然起こり、手足の麻痺や言葉の障害などの後遺症が残ることがあります。リハビリは発症直後から始まり、3つの段階を経て進みます。「いつ、どこで、何をするのか」を知っておくと、先の見通しが持てて安心です。
急性期(発症〜約2週間)── 「一日でも早く」が鍵
発症直後からリハビリは始まります
「まだ安静にしていたほうがいいのでは?」と心配になるかもしれません。しかし現在の医療では、発症後24〜72時間以内にリハビリを始めるのが標準です。
作業療法士(OT)はベッドサイドで以下のことを行います。
- 体を起こす練習: ベッドの角度を上げるところから始め、少しずつ座れるようにします
- 関節が固まるのを防ぐ: 手足を動かして、筋肉や関節が衰えるのを予防します
- 今できることの確認: 食事・着替え・トイレなどがどこまでできるかを確認します
面会時にできること
急性期は患者さんも不安が大きい時期です。面会では特別なことをしなくて大丈夫です。そばにいること、声をかけること、それだけで十分です。リハビリの妨げにならない範囲で、手を握ったり、好きな音楽をイヤホンで聞かせたりするのもよいでしょう。
担当のOTに「家での生活の様子」を伝えてください。利き手はどちらか、家のトイレに手すりはあるか、玄関に段差はあるかなど、退院後の生活を見据えた情報がリハビリの計画に役立ちます。メモにまとめておくとスムーズです。
回復期(約2週間〜6ヶ月)── 集中的なリハビリの時期
「できること」が増えていく時期
回復期リハビリテーション病棟(回復期リハビリ病棟)に転院すると、1日最大3時間のリハビリを受けることができます。OTが行うのは主に以下のことです。
- 日常動作の練習: 食事、着替え、トイレ、入浴など、生活に必要な動作を繰り返し練習します
- 手の動きの回復: 麻痺のある手を使う練習をします。箸を使う、ボタンを留めるなどの細かい動作も含みます
- 考える力の訓練: 注意力や記憶力に問題がある場合、日常生活の中で工夫する方法を一緒に考えます
- 退院準備: 自宅に帰るための準備を行います。家の中の段差をなくす工夫や、自助具の提案もします
回復のスピードは人それぞれ
「隣のベッドの方はもう歩けるのに…」と比べてしまうこともあるかもしれません。しかし、脳卒中の回復のスピードは、損傷の場所や大きさ、年齢、体力などによって一人ひとり異なります。焦らず、ご本人のペースを見守ることが大切です。
OTから教わった介助方法を、面会時や外泊訓練で実践してみてください。「ズボンは麻痺のない側から脱ぐ」「靴は座って履く」など、退院後の生活に直結するコツがたくさんあります。わからないことはOTに遠慮なく質問してください。
生活期(退院後)── 暮らしの中でリハビリは続く
退院がゴールではありません
退院後も、リハビリは形を変えて続きます。
- 訪問リハビリ: OTが自宅に来てくれます。実際の台所で料理の練習をしたり、お風呂の入り方を確認したり、生活そのものがリハビリになります
- デイケア(通所リハビリ): 施設に通って、リハビリや体操を行います。同じ境遇の方との交流も大切な機会です
- 住宅改修: 介護保険を使って、手すりの設置や段差の解消ができます(上限20万円、自己負担1〜3割)
- 社会参加: 趣味の再開、地域活動への参加、復職など、その方らしい生活を取り戻すための支援を受けられます
ご本人が「自分でできること」は、時間がかかっても見守ってあげてください。つい手を出したくなりますが、自分でやることがリハビリになります。一方で、疲れが見えたら無理をさせないことも大切です。「やりすぎ」も「やらなすぎ」も避け、OTと相談しながら適切なバランスを見つけましょう。
「6ヶ月」がゴールではない ── 回復はいつまで続くのか
「6ヶ月でリハビリは終わり」と聞いたことがあるかもしれません。確かに、脳の回復が最も進むのは発症後3〜6ヶ月です。しかし、6ヶ月を過ぎたら何も良くならないわけではありません。
- 生活の中で新しいやり方を覚えることで、できることは増え続けます
- 住宅改修や道具の工夫で、活動の幅は広がります
- 趣味や外出の機会が増えることで、気持ちも前向きになります
大切なのは、「6ヶ月で終わり」と思い込まないことです。退院後もOTに相談しながら、生活の質を高めていくことができます。
過度な期待と過度な諦めの両方に注意
「元通りに戻る」ことだけを目標にすると、思うように回復が進まないときにつらくなります。一方で、「もう良くならない」と諦めてしまうと、本来得られるはずの回復の機会を逃してしまいます。OTと一緒に、現実的で前向きな目標を設定していくことが大切です。
各段階のまとめ
急性期(発症〜約2週間)
- 1早期離床・関節が固まるのを防ぐ
- 2日常動作の評価
- 3回復期リハビリ病棟への転院準備
回復期(約2週間〜6ヶ月)
- 41日最大3時間の集中リハビリ
- 5食事・着替え・入浴などの日常動作の練習
- 6退院に向けた家屋評価・住宅改修の提案
生活期(退院後)
- 7訪問リハビリ・デイケアの利用
- 8住宅改修・福祉用具の活用
- 9趣味や社会活動への復帰支援
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。