この記事のポイント
- レビー小体型認知症はアルツハイマー型とは異なる特徴(幻視・パーキンソン症状・認知の変動)があります
- 幻視は「見える」ことが本人にとってのリアルです。否定せず、安心感を与える対応が大切です
- 症状が日によって大きく変動するため、「良い日」と「悪い日」の波に振り回されない心構えが必要です
アルツハイマー型とは違う認知症
DLBは、地域で診断される認知症の約4.2%(専門医療機関では7.5%)を占めます(2014年の系統的レビュー)。「認知症全体の15〜20%」という数字が流通していますが、これは剖検研究などに由来する古い推計で、臨床診断に基づく割合はこれより低くなります。しかし、その特徴はアルツハイマー型とは大きく異なります。
DLBの3大特徴は以下の通りです。
- 幻視: 実際にはいない人や動物が見える
- パーキンソン症状: 動作の緩慢、筋固縮、小刻み歩行、姿勢の不安定
- 認知機能の変動: 日によって、あるいは時間帯によって意識レベルや認知機能が大きく変動する
OTはこれらの特徴を理解した上で、「良い時間帯」を活用した活動設計と転倒リスクへの環境調整を中心に支援を行います。
レビー小体型認知症は、アルツハイマー型とは違う特徴を持つ認知症です。
- 幻視: いないはずの人や動物が見える
- パーキンソン症状: 動きがゆっくりになる、体が固くなる、小刻みに歩く
- 調子の波が大きい: 日によって「しっかりしている日」と「ぼんやりしている日」の差が激しい
この3つの特徴を知っておくだけで、日々の対応が変わってきます。
幻視への対応 ── 否定しない、安心させる
DLBの幻視は、非常にリアルで具体的なことが特徴です。「知らない子どもが部屋にいる」「虫が壁を這っている」「猫がいる」など、本人にとっては疑いようのない現実として体験されています。
対応の原則
- 否定しない: 「そんなものはいない」と言わない
- 本人の感情に寄り添う: 「怖いですね」「気になりますね」と共感する
- 注意を逸らす: 「お茶を飲みましょう」と別の活動に誘う
- 環境を変える: 部屋を明るくする、場所を移動する
幻視を誘発しやすい環境要因
- 薄暗い照明: 影が人影に見える
- 壁の模様・シミ: 虫や顔に見える
- 鏡: 映った自分を他人と認識する
- テレビ: 画面の中の人物が部屋にいると認識する
「知らない人がいる」「虫がいる」──ご本人にとって、これは本当に見えているのです。
対応のポイント
- 「いないよ」と否定しない
- 「怖いですね」と気持ちに寄り添う
- 「お茶を飲みましょう」と別のことに誘う
- 部屋を明るくする
幻視が出やすい環境
- 薄暗い部屋(影が人影に見える)
- 壁のシミや模様(虫や顔に見える)
- 鏡(映った自分を他人だと思う)
部屋を明るく保つことで、幻視が減る場合があります。特に夕方〜夜間は早めに照明をつけ、影ができにくい間接照明を併用してみてください。壁のシミや模様が気になる場合は、ポスターやカレンダーで隠すのも一つの方法です。
パーキンソン症状への対応 ── 転倒を防ぎ、動きやすさを保つ
DLBのパーキンソン症状は、PDと類似しますが、一般にL-DOPA製剤への反応性が低く、副作用として幻視が悪化するリスクがあります。OTの関わりとしては、環境調整と動作の工夫が中心になります。
転倒予防の環境調整
- 動線上の障害物を撤去する
- 手すりの設置: 廊下、トイレ、浴室
- 段差の解消: スロープ、段差解消板の活用
- 床材の見直し: 滑りにくい素材に変更
- 靴の選択: 底が滑りにくく、脱ぎ履きしやすいもの
すくみ足への対応
- 床にテープで目印をつける(視覚的手がかり)
- リズムに合わせた声かけ: 「いち、に、いち、に」
- 「最初の一歩」を大きく踏み出す意識をもつ
- 方向転換はゆっくり大回りで
パーキンソン症状のすくみ足対策についてはパーキンソン病のすくみ足対策も参考になります。
動きがゆっくりになり、転びやすくなるのがパーキンソン症状です。転倒を防ぐ工夫が重要です。
転倒予防の工夫
- 廊下やリビングに物を置かない
- 手すりをつける: 廊下、トイレ、浴室
- 段差をなくす
- 滑りにくい靴を選ぶ
足がすくんで動けないとき
- 床にテープで線を引く: 線をまたぐように歩くと足が出やすくなります
- 「いち、に」とリズムをつけて声をかける
- 方向転換はゆっくり大回り
足がすくんでいるときに背中を押すのは危険です。焦らず待ってあげてください。
認知機能の変動への対応 ── 「波」を理解する
DLBの認知機能変動は、数時間〜数日単位で大きく変動します。「さっきまでしっかりしていたのに急にぼんやりする」「昨日はできたことが今日はできない」という状況が日常的に起こります。
対応の原則
- 「良い時間帯」を把握する: 午前中が良い方が多い
- 重要な活動は「良い時間帯」に行う: 通院、入浴、外出など
- 「悪い時間帯」には無理をさせない: 安全に休める環境をつくる
- 変動の記録をつける: 時間帯と症状の変化を記録し、パターンを把握する
「さっきまでしっかりしていたのに、急にぼんやりする」。この波の大きさがレビー小体型認知症の大きな特徴です。
- 調子の良い時間帯を見つける: 午前中が良い方が多いです
- 大事なことは良い時間帯に: 通院やお風呂は調子の良いときに
- 調子が悪いときは無理しない: 安全に休める環境をつくる
- 記録をつける: 何時頃に調子が良い・悪いかをメモしておく
「昨日できたのに今日できない」のは、ご本人の怠けではありません。病気の特徴なのです。
その他の注意すべき症状
レム睡眠行動障害
夢の内容に合わせて体を動かしてしまう症状で、DLBの重要な随伴症状です。大声を出す、手足を振り回す、ベッドから転落するなどが起こります。
- ベッドの周囲を安全に: ベッドガード、低床ベッド、床にマットを敷く
- 隣で寝ている方の安全確保: 必要に応じて寝室を分ける
自律神経症状
起立性低血圧、便秘、排尿障害、発汗異常などが起こりやすくなります。
- 立ち上がりはゆっくり: 急に立つとめまいや失神のリスクがある
- 水分と食物繊維の摂取: 便秘対策
- 室温の管理: 体温調節がうまくいかないことがある
薬剤過敏性
DLBでは抗精神病薬に対する過敏性があり、少量でも重篤な副作用が出ることがあります。服薬の変更時は必ず主治医に確認してください。
眠っている間に暴れる
夢を見ているときに手足を動かしたり、大声を出したりすることがあります。
- ベッドの周囲に物を置かない
- 低いベッドに変えるか、床にマットを敷く
立ちくらみ・便秘
急に立つとめまいがしやすくなります。立ち上がりはゆっくりを習慣にしてください。便秘にもなりやすいので、水分と食物繊維を意識しましょう。
お薬に注意
レビー小体型認知症の方は、一部のお薬に過敏に反応することがあります。他の病院でお薬をもらうときは、必ずレビー小体型認知症であることを伝えてください。
注意
レビー小体型認知症の方に抗精神病薬(統合失調症の薬など)を使用すると、重篤な副作用が出ることがあります。他の医療機関を受診する際は、必ず「レビー小体型認知症」であることをお伝えください。お薬手帳を常に持ち歩きましょう。
作業療法士に相談できること
OTはDLBの方に対して以下の支援を提供します。
- 認知機能の変動パターン分析と、それに基づく活動スケジュールの設計
- パーキンソン症状に対する環境調整: 転倒予防、動線の確保、福祉用具の選定
- 幻視を軽減する環境の提案: 照明、壁の装飾、鏡の配置の見直し
- 介護者の対応スキル向上: 声かけの方法、介助技術の指導
OTに相談すると、以下のような支援を受けられます。
- ご本人の調子の波を分析し、活動のスケジュールを提案
- 転倒しにくい環境の工夫を一緒に考える
- 幻視が出にくい部屋づくりのアドバイス
- 介護の方法を具体的に教えてもらえる
DLBは症状の多様性と変動性から、介護者にとって特に対応が難しい認知症です。しかし、症状の特徴を理解し、環境調整と活動スケジュールの工夫を行うことで、ご本人と家族の生活の質を大きく改善できます。OTの視点は「症状を治す」ことではなく、「症状とともにその人らしく暮らす」ことに焦点を当てています。
ご家族の方へ ── 大切なポイントのまとめ
- 幻視は本人にとってのリアルです。否定せず、気持ちに寄り添いましょう
- 転倒予防のために手すり・段差解消・床材の見直しを行いましょう
- 認知機能の変動は病気の特徴です。調子の良い時間帯を活用してください
- 立ち上がりはゆっくり。立ちくらみに注意しましょう
- 他の病院を受診する際は、必ずレビー小体型認知症であることを伝えてください
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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