この記事のポイント
- 作業療法士(OT)は、感覚・運動・日常生活動作・社会性の4つの視点から発達障害のある子どもの「うまくいかない」理由を分析し、遊びを通した支援と環境調整で「できた」を増やす専門家です
- 感覚統合療法など、子ども自身が「やりたい」と思える遊びの中で力を育てます
- 家庭でできる工夫と、相談先(発達支援センター・医療機関・療育施設)を紹介します
発達障害のある子どもに、なぜ作業療法士が必要なのか
通常学級に在籍する小中学生のうち、約8.8%が学習や行動の面で困難を抱えているとされています(出典: 文部科学省 2022年調査)。35人のクラスなら、約3人にあたります。
発達障害は珍しいものではありません。そして、発達障害のあるお子さんには、日常生活のさまざまな場面で「やりにくさ」があります。
作業療法士(OT)は、お子さんの「うまくいかない」の理由を一緒に探り、生活の中で「できた」を増やすお手伝いをする専門家です。
OTが見ている4つのポイント
OTがお子さんを見るとき、4つのポイントに注目しています。
1. 感覚のとらえ方
音がつらい、特定の肌触りが苦手、じっと座っていられない――こうした困りごとの背景には、感覚の処理の特性が関わっていることがあります。詳しくは感覚過敏の環境調整と10の工夫をご覧ください。
2. 体の動かし方
ボタンが留めにくい、字がはみ出す、ボールがうまく投げられない――こうした不器用さは、怠けているのではなく、脳から体への指令の伝わり方に特性があるのです。
3. 毎日の生活動作
着替え、食事、持ち物の管理など、毎日の基本的な動作がスムーズにいかないことがあります。
4. 人との関わり
順番を待つこと、友達の気持ちを読み取ること、集団遊びのルールを理解することに難しさを感じる子どもは少なくありません。
ヒント
お子さんの「困った行動」の裏には、必ず理由があります。たとえば「授業中に立ち歩く」のは、椅子に座り続けること自体がつらいのかもしれません。OTはその理由を一緒に探る専門家です。
遊びを通した治療 ── OTはどんなことをするの?
遊びがなぜ「治療」になるの?
OTの治療では、遊びそのものが治療の道具になります。子どもは楽しい遊びの中で、自然と感覚や体の使い方を学んでいきます。
- ブランコやハンモック: 揺れの中でバランス感覚を育てます
- トランポリン: 体の位置感覚を高め、姿勢を保つ力がつきます
- ボールプール: 全身で触覚の刺激を受けながら、体の使い方を学びます
- 粘土やスライム: 手指の感覚を育て、細かい作業が上手になっていきます
大切なのは、お子さん自身が「やりたい」と思える活動であること。無理やりやらせるのではなく、「楽しい」の中で自然と力がついていきます。
手先を使う遊び
粘土遊び、ビーズ通し、シール貼り、折り紙などで、指先の器用さを伸ばします。鉛筆の持ち方やハサミの使い方にもつながっていきます。
ヒント
「できた!」の体験が次の挑戦への意欲になります。一度にたくさんのことを求めず、小さな成功を積み重ねることが大切です。
家庭でできる工夫
お家の中を「わかりやすく」する
- 1日の流れを見える化: イラストや写真で「次に何をするか」をわかりやすく示しましょう
- 持ち物リストを貼る: 準備する物を写真つきで玄関に掲示すると、忘れ物が減ります
- タイマーを使う: 残り時間が目に見えるタイマーを使うと、切り替えがスムーズになります
落ち着ける場所をつくる
- 部屋の一角に、刺激の少ない「落ち着きスペース」を用意してみてください
- クッションや毛布で囲まれた小さなスペースが、お子さんの安心につながります
- パニックになったときに「ここに行けば安心」と思える場所があると、回復が早くなります
「できた!」を積み重ねる
- お子さんの「できたこと」に注目して声をかけましょう
- 「上手にできたね」よりも「最後までがんばったね」のように、過程を認める言葉がおすすめです
- 課題は難しすぎず、簡単すぎず、「ちょっとがんばればできる」レベルに調整しましょう
朝の準備が大変なお子さんには、「やることカード」がおすすめです。「顔を洗う」「着替える」「ごはんを食べる」などを1枚ずつカードにして、終わったら裏返す仕組みにすると、自分で進められるようになります。最初は3つくらいから始めてみてください。
どこに相談すればいいの?
「うちの子、もしかして?」と思ったら、まずは以下の場所に相談してみてください。
| 相談先 | どんなところ? |
|---|---|
| 児童発達支援センター | 小学校に入る前のお子さんの療育を行います |
| 放課後等デイサービス | 小学生以上のお子さんが放課後に通えます |
| 小児科・児童精神科 | 診察を受けて、OTを紹介してもらえます |
| 発達障害者支援センター | 各都道府県・指定都市にあります。電話相談もできます |
ヒント
「診断がないと相談できないのでは?」と思う方もいますが、診断がなくても相談できる窓口は多くあります。気になることがあれば、まずはお住まいの市区町村の保健センターや子育て支援窓口に問い合わせてみてください。
「うちの子、発達が遅れているのかな?」と迷っている段階の方は、発達の目安と「気になったとき」に相談できる場所もあわせてお読みください。また、小学校入学を控えたお子さんについては、就学前に作業療法士が見ている力と準備できることで詳しく解説しています。
お子さんが学校に行きづらくなっている場合は、不登校・ひきこもりの子どもとの向き合い方もあわせてお読みください。
- お子さんの「困った行動」の裏には必ず理由があります。OTはその理由を一緒に探す専門家です
- OTの治療は遊びの中で行われます。楽しみながら自然と力がついていきます
- 家庭では「見える化」と「落ち着ける場所づくり」が効果的です
- 診断がなくても相談できます。気になったら、まず地域の窓口に問い合わせてみてください
- お子さんの「できた」に注目して、小さな成功を一緒に喜んでください
- 文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(概要)」(2022年)
- Marco EJ ほか「Sensory processing in autism: a review of neurophysiologic findings」Pediatric Research(2011年)
- Blank R ほか「International clinical practice recommendations on developmental coordination disorder」Developmental Medicine & Child Neurology(2019年)
- 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「発達障害者支援センター・一覧」
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
よくある質問
- 発達障害の子どもに作業療法士は何をしてくれますか?
- 作業療法士は感覚・運動・日常生活動作・社会性の4つの視点から、お子さんの「うまくいかない」理由を分析します。遊びを通した支援や環境の調整によって、生活の中で「できた」を増やすお手伝いをする専門家です。
- 感覚統合療法とはどんな治療ですか?
- 米国の作業療法士エアーズが体系化したアプローチで、ブランコやトランポリン、ボールプールなどの遊びを通して、感覚情報を脳が適切に統合する力を育てます。子ども自身が「やりたい」と思える活動を選ぶことを重視します。
- 診断がなくても作業療法の相談はできますか?
- 診断がなくても相談できる窓口は多くあります。気になることがあれば、まずお住まいの市区町村の保健センターや子育て支援窓口に問い合わせてみてください。発達障害者支援センターでは電話相談も可能です。
- 家庭ではどんな工夫ができますか?
- 1日の流れをイラストや写真で見える化する、持ち物リストを掲示する、残り時間が見えるタイマーを使うなどの工夫が有効です。刺激の少ない落ち着けるスペースを用意し、小さな成功体験を積み重ねることも大切です。
- 子どもの不器用さは本人の努力不足ですか?
- 不器用さは怠けではなく、脳から体への指令の伝わり方の特性によるものです。発達性協調運動症(DCD)は知的発達に遅れがなくても運動の苦手さが際立つ状態で、ADHDやASDと併存することが多いと指摘されています。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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