この記事のポイント
- 草取りはしゃがむ・つまむ・引く・立ち上がるの複合動作であり、全身の筋力・バランス・巧緻性が求められます
- 身体機能だけでなく、注意機能・遂行機能・判断力など認知面も幅広く使われる「高度な日常作業」です
- 腰痛と熱中症が最大のリスクであり、姿勢の工夫・時間管理・環境設定で予防できます
- 障害がある方でも、道具・姿勢・環境の段階づけ(グレーディング)により安全に参加できます
- 園芸療法の一環として、身体・認知・精神面のリハビリテーションに活用できます
はじめに──「草取り」は作業療法の宝庫
草取り(草むしり)は、日本の暮らしに深く根づいた作業です。庭のある家に住んでいれば避けて通れませんし、施設や病院でも園芸活動として取り入れられています。
一見すると単純な作業ですが、作業療法士(OT)の目で見ると、草取りは驚くほど多くの身体機能・認知機能・心理機能を使う複合的な活動です。
本記事では、草取りという身近な作業を作業療法士の視点から徹底的に分析し、安全に行うための方法、障害がある方への工夫、リハビリテーションへの活用法まで解説します。
「もう年だから草取りはやめて」——ご家族からそう伝えたことはありませんか。反対に、庭に出たがるご本人を見て、はらはらしながら見守っているご家族もいらっしゃると思います。
草取りは、しゃがむ・つまむ・引き抜く・立ち上がるという動きの組み合わせです。体も頭もしっかり使うので、危ないところもありますが、その分だけ体力や気力を保つ助けにもなります。
このページでは、腰を痛めない姿勢、暑さや転倒への備え、体が動かしにくくなったときの道具や環境の工夫など、草取りをやめさせずに安全に続けるための方法をご紹介します。
草取りの作業分析──OTはこう見る
作業療法士がリハビリテーションで活動を選択するとき、まずその作業を構成する動作や能力を分析します。これを作業分析(activity analysis)と呼びます。
草取りを作業分析すると、以下のような要素に分解できます。
基本動作の流れ
- 庭に出る(段差の昇降、屋外への移動)
- しゃがむ・膝をつく(低い姿勢をとる)
- 草を見つける(視覚的探索、雑草と植栽の判別)
- 草をつまむ・握る(ピンチ力、巧緻動作)
- 根元から引き抜く(手関節・前腕の力、引く動作)
- 抜いた草を集める(リーチ、移動)
- 姿勢を変える・移動する(次の場所への移動)
- 立ち上がる(下肢筋力、バランス)
- ゴミをまとめて片づける(道具の使用、後始末)
このひとつひとつの動作に、多くの身体機能と認知機能が関わっています。
必要な身体機能
| 機能 | 草取りでの使われ方 |
|---|---|
| 下肢筋力 | しゃがみ込み・立ち上がり・中腰の保持 |
| 体幹筋力 | 前傾姿勢の維持、左右へのリーチ |
| 上肢筋力 | 草を引き抜く、道具を使う |
| 手指の巧緻性 | 小さな草をつまむ、根元を正確につかむ |
| 関節可動域 | 股関節・膝関節の深屈曲、肩のリーチ |
| バランス能力 | しゃがんだ姿勢での重心移動 |
| 持久力 | 繰り返し動作の持続 |
特に注目すべきはしゃがみ動作です。しゃがみ込みでは股関節が大きく屈曲し、あらゆる方向の草を引くために股関節が全方位的に動きます。これは股関節周りの柔軟性維持にとって優れたストレッチ効果があります。
必要な認知機能
草取りが「単純作業」と思われがちなのは誤解です。実は高度な認知機能が求められます。
| 認知機能 | 草取りでの使われ方 |
|---|---|
| 注意の持続 | 長時間にわたり草を探し続ける |
| 選択的注意 | 雑草と育てたい植物を見分ける |
| 遂行機能 | 作業の段取り、効率的な順序の計画 |
| 判断力 | どの草を優先的に抜くか、いつ休憩するか |
| 空間認知 | 作業範囲の把握、抜き残しの確認 |
| 記憶 | 植えた花の位置、前回の作業範囲の記憶 |
特に「雑草と植栽の判別」は、植物に関する知識・経験・視覚的弁別能力を総合的に使う高度な認知課題です。
草取りは「しゃがんで草を抜くだけ」に見えますが、実際には体のあちこちを同時に使っています。だから疲れますし、だからこそ良い運動にもなります。
足腰の力
しゃがむ・中腰を保つ・立ち上がるという動きは、スクワットに近い運動になります
体を支えるバランス
低い姿勢のまま手を伸ばすので、倒れないように体を支える力が働きます
手指の細かい動き
小さな草の根元をつまんで引き抜くには、指先の器用さと握る力が必要です
股関節の柔らかさ
深くしゃがむ姿勢は、股関節のまわりを伸ばすよいストレッチになります
見分ける力と段取りの力
雑草と大切な花を見分け、どこから手をつけるか考えることは頭の運動です
意外に思われるかもしれませんが、草取りは頭もよく使う作業です。雑草と育てている植物を見分けるには、長年の経験と観察の力が要ります。「どこまで抜いたか」を覚えておく記憶力や、「今日はここまでにしよう」と決める判断力も使います。単純作業どころか、とても複雑な活動なのです。
草取りの心身への効果
身体面の効果
草取りを定期的に行うことで期待できる身体的効果は多岐にわたります。
- 下肢・体幹の筋力維持:しゃがむ・立ち上がるの繰り返しは、スクワットに似た筋力トレーニング効果があります
- 股関節の柔軟性:しゃがみ込みは股関節周囲の良いストレッチになります
- 手指の機能維持:つまむ・引く動作が手の巧緻性を保ちます
- 全身の持久力:メッツ表では「除草をする(耕す)」は4.5メッツで、平地の普通歩行(時速4.0km)の3.0メッツ、ほどほどの速さの歩行(時速4.5〜5.1km)の3.5メッツを上回ります(国立健康・栄養研究所『改訂版 身体活動のメッツ表』2012)。軽い力で行う場合は3.5メッツ、くわを使ってしっかり行えば5.0メッツと幅があります
- バランス能力:不安定な姿勢での作業が、バランス反応を鍛えます
精神・心理面の効果
園芸活動と心理面の関係については、複数のレビューが行われています。ただし結果は一様ではなく、効果の大きさの推定にはばらつきがあります。
- 園芸・園芸療法に関するレビュー40件を統合したアンブレラレビューでは、ウェルビーイングに対する効果量0.55(95%CI 0.23〜0.87)と有意な改善が示されました。ただし著者らは研究間の異質性が高いことを理由に、この結果から臨床的な結論を直接導くことには慎重であるべきだとしています(Panțiru ら 2024)
- 一方、慢性疾患のある成人を対象としたRCT中心のメタ解析(23研究・4,535名)では、精神的健康の標準化平均差は−0.31(95%CI −0.97〜0.34)で、信頼区間が0をまたいでいました(Wang & Boros 2025)
臨床でよく語られる以下の要素は、上記のような集団レベルの効果量とは別に、個々の対象者の語りや観察から導かれる作業療法上の着眼点として扱うのが適切です。
- 達成感:きれいになった庭を見ることで、目に見える成果を実感できる
- 集中による没頭:単調だからこそ、余計なことを考えず「今ここ」に集中できる
- 季節や自然とのつながり:屋外で季節の変化を感じることで、生活のリズムや時間感覚が保たれる
なお「草を引き抜くことで攻撃性が発散される」という説明が用いられることがありますが、攻撃的な行動によって攻撃性が解消されるという「カタルシス仮説」は心理学研究で支持されていません。本記事ではこの説明を採用していません。
社会面の効果
- 役割の実感:「庭をきれいに保つ」という家庭や地域での役割を果たせます
- コミュニケーション:近所の人との会話のきっかけになります
- 地域参加:地域の清掃活動や共同農園での草取りは、社会参加の機会になります
草取りを続けることには、暮らしを支えるいくつもの良い面があります。
- 足腰を保てる — しゃがむ・立ち上がるの繰り返しが、歩く力を保つ助けになります
- 手の動きを保てる — つまむ・引く動作を続けることで、指先の器用さが保たれます
- 気持ちが落ち着く — 土や緑にふれながら体を動かすと、気分が晴れやすくなります
- 手ごたえが目に見える — 抜いた分だけ庭がきれいになり、やった実感がはっきり残ります
- 生活のリズムが整う — 朝の涼しい時間に外へ出る習慣は、昼夜のリズムを支えます
- 自分の役割が続く — 庭を守るのは自分の仕事だという気持ちが、自信のよりどころになります
とくに大切なのは、最後の「役割」です。長年その庭を手入れしてきた方にとって、草取りは運動ではなく家の中での持ち場です。そこを取り上げてしまうと、けがは防げても元気そのものが失われてしまうことがあります。
安全に草取りをするために──リスク管理
草取りには大きく分けて2つのリスクがあります。腰痛と熱中症です。作業療法士の視点から、それぞれの予防法を解説します。
腰痛を防ぐ
草取りで腰痛が起きる最大の原因は、長時間の前傾・中腰姿勢です。
姿勢の工夫
| 姿勢 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| しゃがみ込み | 手が地面に近い | 膝・股関節への負担大 |
| 膝立ち | 腰への負担が比較的少ない | 膝が痛くなりやすい |
| 低い椅子に座る | 膝・腰の負担が最も少ない | 移動がやや不便 |
| 立位で長柄の道具を使用 | 腰への負担が最小 | 細かい作業がしにくい |
作業療法士のおすすめは「姿勢を固定しないこと」です。ひとつの姿勢を15分以上続けず、しゃがみ→膝立ち→立位と姿勢を変えながら作業します。
腰痛予防の具体策
- 膝をしっかり曲げてしゃがむ:腰だけで前屈しない
- 膝の下にクッションやマットを敷く:膝をつく姿勢を楽にする
- 15〜20分ごとに立ち上がって伸びをする:腰椎の前弯を戻す
- 作業前後にストレッチをする:特に腰回り・股関節・ハムストリングス
熱中症を防ぐ
草取りは屋外で行う作業であり、特に夏場は熱中症のリスクが高まります。総務省消防庁の令和7年(2025年)の集計では、熱中症による救急搬送人員のうち65歳以上の高齢者が57,433人・全体の57.1%を占めました。搬送される人のおよそ6割が高齢者ということになります。
熱中症予防のルール
- 時間帯を選ぶ:早朝(6〜8時)か夕方(16時以降)に行う。日中の炎天下は避ける
- こまめに水分補給:のどが渇く前に飲む。30分に1回は水を飲む
- 帽子を必ずかぶる:つばの広い帽子で直射日光を防ぐ
- 作業時間を区切る:1回30分以内を目安にし、涼しい場所で休憩する
- 暑さ指数(WBGT)を確認:環境省の熱中症予防情報サイトが掲載する指針では、日常生活に関する指針(日本生気象学会)で28以上31未満が「厳重警戒」、31以上が「危険」、運動に関する指針(日本スポーツ協会)で28以上31未満は「激しい運動は中止」、31以上は「運動は原則中止」とされています。屋外の草取りは中等度以上の身体活動(4.5メッツ)にあたるため、28以上の日は中止か大幅な短縮を検討します
その他のリスク
- 虫刺され・かぶれ:長袖・手袋を着用する。ハチやムカデに注意する
- 転倒:立ち上がるときに立ちくらみ(起立性低血圧)が起きやすい。ゆっくり立ち上がる
- 脱水:利尿薬を服用している方は特に注意が必要
草取りで気をつけたいことは、大きく腰痛と熱中症の2つです。どちらも、やり方を少し変えるだけでかなり防げます。
腰を痛めないために
腰を痛める一番の原因は、中腰や前かがみの姿勢を長く続けることです。重いものを持つより、同じ姿勢を保ち続けることのほうが腰にはこたえます。
- ひとつの姿勢を15分以上続けない:しゃがむ→膝をつく→立つ、と姿勢をこまめに変えます
- 腰から折らず、膝を曲げてしゃがむ:腰だけを曲げた前かがみが一番負担になります
- 膝の下にマットやクッションを敷く:膝をついた姿勢が楽になり、腰の負担も減ります
- 低い椅子に座って作業する:腰にも膝にもやさしく、長く続けやすい姿勢です
- 始める前と終わったあとに軽く伸びをする:腰、太ももの裏、股関節をゆっくり伸ばします
暑さで倒れないために
夏の草取りは、やる時間帯で決まります
熱中症で救急搬送された方のうち、約6割(57.1%)が65歳以上でした(総務省消防庁・令和7年)。真夏の日中の庭仕事は、短い時間でも危険があります。作業は朝の涼しいうちか、夕方に切り替えてください。
- 早朝(6〜8時)か夕方(16時以降)に行う:日中の照りつける時間帯は避けます
- のどが渇く前に水を飲む:30分に1回を目安に、飲み物をそばに置いておきます
- つばの広い帽子をかぶる:首の後ろまで日が当たらないものが安心です
- 1回30分までで区切る:タイマーをかけ、涼しい場所で休みます
- 暑さ指数(WBGT)が28以上の日は思いきって休む:環境省の熱中症予防情報サイトや天気予報で確認できます。28以上は「厳重警戒」、31以上は「危険」の水準です
転倒と虫刺されにも気を配る
しゃがんだ姿勢から急に立ち上がると、立ちくらみが起きて転ぶことがあります。立つときは一度膝や地面に手をついて、ゆっくり起き上がってください。長袖と手袋は、虫刺されやかぶれから肌を守ってくれます。
- めまいがする、立ちくらみがする、頭が痛い
- 吐き気がする、気分が悪い
- 汗が出なくなった、皮膚が熱く乾いている
- 足に力が入らない、ふらつく
- 前の晩によく眠れていない
- 朝から食欲がない、下痢をしている
尿を出す薬(利尿薬)を飲んでいる方は体の水分が減りやすいため、水分のとり方についてかかりつけの医師や薬剤師に一度相談しておくと安心です。
障害がある方の草取り──段階づけ(グレーディング)の工夫
作業療法士は、対象者の能力に合わせて作業の難易度を調整します。これを段階づけ(grading)と呼びます。草取りも工夫次第で、さまざまな障害のある方が安全に参加できます。
片麻痺の方
- 安定した椅子に座って行う:ガーデニングチェアや風呂椅子を使う
- 片手用の草取り道具を使う:柄の太い草取り鎌、滑り止め付きの道具
- プランターや花壇を高い位置に設置する:レイズドベッド(高さのある花壇)を活用する
- 非麻痺側の手で作業し、麻痺側は補助的に使う:草を押さえる役割など
腰痛・膝痛のある方
- 立ったまま使える長柄の草取り道具を使う
- ガーデニングスツール(座面付き)を使って座りながら作業する
- レイズドベッドやプランターで地面にしゃがまなくて済む高さにする
- 作業時間を短く区切る:10分作業→5分休憩のサイクル
認知症の方
- 一緒に行う:必ず付き添い、声かけしながら作業する
- 抜く範囲を明確にする:「この囲いの中だけ」と視覚的に示す
- 植栽にラベルをつける:抜いてはいけない花に目印をつける
- 短時間で区切る:集中が途切れたら無理に続けない
- 達成感を共有する:「きれいになりましたね」と成果を一緒に確認する
草取りのような役割のある活動は、認知症の行動・心理症状(BPSD)を和らげる効果も期待できます。詳しくは薬に頼らないBPSDへの対応方法をご覧ください。
車椅子の方
- レイズドベッドが必須:車椅子のまま手が届く高さ(60〜70cm程度)に設定する
- アプローチ路を整備する:車椅子が通れる幅と舗装を確保する
- リーチャー(長い柄の道具)を活用する
- テーブル上のプランターで草取りの要素を再現する
精神疾患のある方
- 自分のペースで参加できるようにする:強制しない
- 少量から始める:「このひと区画だけ」という小さな範囲設定
- グループで行う:他者と一緒の活動だが、会話が必須ではない安心感
- 成果が目に見える作業として活用する:「やった分だけきれいになる」わかりやすさ
病気や年齢で体が動かしにくくなっても、やり方を変えれば庭との関わりは続けられます。作業療法士は、その人の状態に合わせて作業のやりやすさを調整することを大切にしています。
- 脳卒中などで体の片側が動かしにくい方:安定した椅子に座って行い、動かせる側の手で作業します。柄が太く、滑りにくい道具が使いやすいです
- 腰や膝が痛む方:立ったまま使える長い柄の道具や、座面つきの園芸イスを使います。10分作業して5分休む、と区切るのも助けになります
- 物忘れが目立つ方:必ず一緒に行い、「この囲いの中だけ」と抜く範囲を目で見てわかるように示します。抜いてほしくない花には目印をつけておくと安心です
- 車椅子を使う方:手が届く高さ(60〜70cmほど)の花壇やプランターを用意し、車椅子で近づける通路を確保します
しゃがむのが難しければ、テーブルに置いたプランターの草を抜くだけでも、指先を使う練習と気分転換になります。庭全部をやらなくてよいと考えることが、続けるためのこつです。
園芸療法としての草取り
園芸療法とは
園芸療法(horticultural therapy)とは、植物を育てることや植物に関わる活動を通じて、心身の機能を維持・回復し、生活の質を向上させることを目指す療法です。
歴史的には作業療法のひとつの手法として発展し、現在では独立した専門領域としても認められています。
草取りが園芸療法に適している理由
園芸活動にはさまざまな作業がありますが、草取りは園芸療法の導入として最も取り組みやすい活動のひとつです。
- 特別な知識がなくてもできる:種まきや剪定に比べて技術的なハードルが低い
- すぐに成果が見える:抜いた分だけ目に見えてきれいになる
- 失敗のリスクが低い:種をまく活動では「育たなかった」という失敗があり得るが、草取りにはない
- 身体活動量を調整しやすい:範囲や時間で負荷をコントロールできる
- 五感を刺激する:土の感触、草の匂い、風の音、虫の声、緑の色彩
リハビリテーションプログラムとしての設計例
草取りをリハビリテーションに組み込む場合の段階的プログラム例です。
第1段階(導入期)- テーブル上のプランターで小さな草を抜く
- 座位で10分程度
- OTが隣で一緒に行う
- 花壇やプランターで草取り
- 椅子を使って20分程度
- 道具(小さな熊手、草取り鎌)の導入
- 庭全体での草取り
- 姿勢の変換を含めて30分程度
- 作業の計画(どこから始めるか)を自分で考える
- 自宅の庭での草取りを実施
- 安全管理を自分で行う(水分補給、休憩のタイミング)
- 家族への指導を含める
便利な道具の紹介
草取りを安全・快適に行うための道具は、作業療法的な視点で見ると「身体機能の不足を環境で補う」自助具としての側面があります。
基本の道具
- 草取り鎌(ねじり鎌):根元から草を切ることができ、引き抜く力が弱い方に有効
- 草取りフォーク:根の深い草をてこの原理で抜ける
- ガーデニンググローブ:手の保護、握力の補助
- 膝パッド・ガーデニングマット:膝をつく姿勢を楽にする
立ったまま使える道具
- 長柄の草取り器:立位のまま草を抜ける。腰痛のある方に最適
- 立ち作業用ホー(鍬):立ったまま表面の草を削り取れる
座って使える道具
- ガーデニングスツール:座面と膝当ての両方に使える回転式のもの
- レイズドベッド:高さのある花壇。車椅子の方も利用可能
道具を替えるだけで、同じ草取りが驚くほど楽になります。作業療法では、こうした道具を体の負担を道具に肩代わりさせる工夫として大事にしています。
- 長い柄の草取り器:立ったまま草を抜けるので、腰にほとんど負担がかかりません
- 草取り鎌(ねじり鎌):引き抜く力が弱くなっても、根元を切って処理できます
- 園芸用の手袋:手を守り、握りやすさも助けてくれます
- 膝パッド・園芸マット:膝をついた姿勢の痛みをやわらげます
- 座面つきの園芸イス:座ったまま作業でき、立ち上がるときの支えにもなります
- 高さのある花壇(レイズドベッド):かがまずに手入れができ、車椅子でも使えます
まず試すなら膝マットと園芸イスがおすすめです。手ごろな値段のものが多く、腰と膝の負担がすぐに変わります。
角利 ガーデニング ミニ草取り鎌
コンパクトで軽量な草取り鎌です。握りやすいハンドル設計で、手指の力が弱い方でも使いやすい道具です。
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千吉 立ったまま楽々草取り
腰をかがめずに立ったまま草取りができる長柄タイプ。腰痛のある方や高齢者に特におすすめです。
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家族・介護者へのアドバイス
高齢のご家族が草取りをしたいとき
「危ないからやめて」と止めるのではなく、安全にできる環境を整えるのが作業療法的な考え方です。
草取りは多くの高齢者にとって大切な「作業」です。長年続けてきた習慣であり、庭をきれいに保つことは役割意識や自尊心に直結します。これを一方的に禁止することは、その方の生活の質を大きく下げかねません。
作業療法士としてのアドバイス:
- 「やめさせる」のではなく「安全にできる方法を一緒に考える」
- 道具や環境を整えて、身体への負担を減らす
- 一人でやらせず、一緒に作業する時間を作る
- 体調が悪い日は無理をしない約束をする
- 暑い時間帯を避けるルールを決める
草取りができなくなったとき
加齢や障害によって草取りが難しくなったとき、「もうできない」と諦めるのではなく、参加の形を変えることを考えます。
- 庭全体は業者に頼み、小さな花壇だけ自分で管理する
- レイズドベッドやプランターで、座ったまま・立ったまま手入れできる環境を作る
- 草取りの代わりに水やりや花の観賞という形で庭との関わりを続ける
- 「指示する」役割に移行する(家族に「あそこの草を抜いて」と伝える)
大切なのは、その方にとって「庭に関わること」がどんな意味を持っているかを理解することです。作業療法士は、単に動作ができるかどうかではなく、その作業がその人の人生においてどのような意味を持つかを重視します。この「作業の意味」という考え方については作業療法における「作業」とは何かで詳しく解説しています。
ご家族が心配のあまり「危ないからもうやめて」と言ってしまう気持ちは、とてもよくわかります。ただ、長年続けてきた庭仕事を急に取り上げられると、ご本人は自分の居場所をなくしたように感じてしまいます。
作業療法士がおすすめするのは、やめさせるのではなく、安全にできる形に変えることです。
- 「やめて」ではなく「一緒にやろう」と声をかける
- 暑い日や体調のすぐれない日は休む、というルールを一緒に決めておく
- 椅子や道具を用意して、体への負担そのものを減らす
- 「今日はここまで」と範囲を先に決め、やりきった気持ちで終われるようにする
- きれいになった庭を一緒に眺めて、できばえを言葉にして伝える
だんだん難しくなってきたら
体力が落ちてきても、「もうできない」と全部やめてしまう必要はありません。関わり方を小さくして残すという方法があります。
- 広い場所は業者や家族に任せ、小さな花壇だけ自分で手入れする
- 高さのある花壇やプランターに替えて、座ったまま・立ったまま手入れできるようにする
- 草取りの代わりに、水やりや花を眺めることで庭との関わりを続ける
- 「あそこの草を抜いてね」と指示する役に回る
大切なのは、その方にとって庭がどんな意味を持っているかを知ることです。作業療法士は、動作ができるかどうかだけでなく、その作業がその人の暮らしの中でどんな意味を持つのかを大事にします。
ご家族からよくいただく質問
ひとりで庭に出させても大丈夫でしょうか。 ひとりで作業する場合は、携帯電話を必ずポケットに入れてもらい、家の人が「何時に戻る」と時間を共有しておくと安心です。夏場や体調に不安がある時期は、できるだけ誰かが家にいる時間帯に行ってもらいましょう。
本人が休憩を嫌がって、何時間も続けてしまいます。 「休んで」と言うより、「お茶にしよう」と誘うほうが受け入れられやすいです。飲み物を持って様子を見に行く役をご家族が担うと、自然に区切りをつくれます。
禁止しないと転んでけがをしないか心配です。 心配なときは、まず主治医やリハビリの担当者、担当のケアマネジャーに相談してください。体の状態を見たうえで、どこまでなら安全にできるかを一緒に整理できます。
まとめ
- 草取りは全身の筋力・バランス・巧緻性・認知機能を総合的に使う複合的な作業です
- 腰痛予防には姿勢の工夫と15〜20分ごとの休憩が有効です
- 熱中症予防には早朝・夕方の作業、こまめな水分補給が欠かせません
- 障害がある方でも、道具・姿勢・環境の段階づけで安全に参加できます
- 園芸療法として身体・認知・精神面のリハビリテーションに活用できます
- 高齢者の草取りは「やめさせる」のではなく「安全にできる環境を整える」ことが大切です
草取りは、作業療法士にとって「たかが草取り、されど草取り」と言える奥深い作業です。何気ない日常の作業に、心身の健康を支える力が詰まっています。同じように身近な作業を分析した買い物を作業療法士の視点で徹底解説した記事もあわせてご覧ください。
この記事のポイント
- 草取りは足腰・手指・頭を一度に使う、体にも気持ちにもよい活動です
- 腰を守るこつは、しゃがみっぱなしにせず姿勢をこまめに変えることです
- 夏は朝夕に行い、時間を区切って、のどが渇く前に水分をとります
- 椅子や長い柄の道具を使えば、体が動かしにくくなっても続けられます
- ご家族は禁止するよりも、一緒にできる形をつくることを考えてみてください
- 草取りセットをかごにまとめて玄関に置く:帽子、水筒、手袋、膝マット、タイマーを1か所にまとめておくと、準備が面倒で安全対策を飛ばしてしまうことを防げます
- キッチンタイマーを25分でかけてから庭に出る:鳴ったら必ず日陰に入って水を飲む、と決めておきます。時間を計るだけで、やりすぎをかなり減らせます
- その日抜く範囲をひもや目印で先に区切る:終わりが目に見えるので、無理に延長せず、やりきった気持ちで切り上げられます
園芸療法──植物とともに人を癒す
園芸療法の理論と実践を体系的に学べる入門書です。草取りを含む園芸活動のリハビリテーションへの応用を理解するのに役立ちます。
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- (独)国立健康・栄養研究所『改訂版 身体活動のメッツ(METs)表』2012年4月11日改訂(出典: Ainsworth BE, et al. 2011 Compendium of Physical Activities. Med Sci Sports Exerc. 2011;43(8):1575-1581)── 除草をする(耕す)4.5メッツ/歩行4.0km/時 3.0メッツ
- 総務省消防庁「令和7年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」── 高齢者57,433人・57.1%
- 環境省 熱中症予防情報サイト「暑さ指数(WBGT)とは?」── 日常生活に関する指針(日本生気象学会)で28以上31未満は「厳重警戒」・31以上は「危険」、運動に関する指針(日本スポーツ協会)で28以上31未満は「激しい運動は中止」・31以上は「運動は原則中止」
- Panțiru I, et al. The impact of gardening on well-being, mental health, and quality of life: an umbrella review and meta-analysis. Syst Rev. 2024;13(1):45. DOI 10.1186/s13643-024-02457-9(効果量0.55、95%CI 0.23-0.87。異質性が高い点に留意)
- Wang F, Boros S. Effect of gardening activities on domains of health: a systematic review and meta-analysis. BMC Public Health. 2025;25(1):1102. DOI 10.1186/s12889-025-22263-9(慢性疾患のある成人23研究4,535名。精神的健康 SMD -0.31、95%CI -0.97-0.34)
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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