この記事のポイント
- リハビリや日常生活に活用できるスマホアプリを目的別に10個厳選しました
- 認知トレ・服薬管理・運動・コミュニケーション支援・生活支援の5カテゴリーで紹介します
- アプリはリハビリの「補助ツール」です。OTの指導と組み合わせることで効果が高まります
スマホアプリをリハビリに活かす時代
スマートフォンの普及率は高齢者を含めて上昇を続けており、リハビリテーションの現場でもスマホアプリを活用する機会が増えています。
OTがアプリを推奨する際のポイントは、「便利だから」ではなく「その人のリハビリ目標の達成に役立つから」という視点で選ぶことです。本記事では、OTの臨床的な視点から、目的別に10のアプリを紹介します。
ヒント
本記事で紹介するアプリは、いずれも2026年7月時点で公式サイトまたはアプリストアにて提供が確認できたものです。ただし、アプリの仕様・料金・提供状況は変更される可能性があるため、患者に推奨する前に必ず最新の提供状況を確認してください。また、個々の患者に推奨する際は、操作能力・認知機能・視覚機能などを考慮した上で判断してください。
スマートフォンには、リハビリや日常生活に役立つアプリがたくさんあります。でも、「どれを使えばいいかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、作業療法士(OT)の視点から、目的別に10個のアプリを厳選して紹介します。
認知トレーニング(2選)
1. Lumosity
世界で1億人以上が利用する認知トレーニングアプリです。注意力、記憶力、処理速度、柔軟性、問題解決力の5領域をカバーしています。
OTが推奨する理由:
- 認知機能の各領域に対応したゲームが豊富で、どの認知機能を訓練しているかが明確
- 成績の推移がグラフで可視化され、患者のモチベーション維持に有効
- 1回5〜10分程度で取り組めるため、日課として取り入れやすい
活用のポイント: 無料版でも1日3ゲームが利用可能。OTが「今週はこの領域を重点的に」と指導すると効果的です。
2. Peak
Lumosityと同様の認知トレーニングアプリですが、ゲームのデザインがよりシンプルで高齢者にも親しみやすいのが特徴です。
OTが推奨する理由:
- ケンブリッジ大学などの脳神経科学者と共同開発されたゲーム
- 言語能力のトレーニングも充実(失語症のリハビリの補助に活用可能)
- コーチ機能が個人の弱点を分析し、適切な課題を提案
認知トレーニングアプリの効果に関する留意点
認知トレーニングアプリの効果には限界があります。Lumosityの運営会社は2016年1月、「加齢による認知機能低下や認知症を遅らせる」等の広告に十分な科学的根拠がないとして、米国連邦取引委員会(FTC)から200万ドルの支払いを命じられました(出典: ArentFox Schiff法律事務所によるFTC措置解説, 2016)。アプリ内の成績向上が実生活の認知機能改善につながるというエビデンスは現時点で限定的です。「ゲームの上達=認知症予防」と患者・家族に期待させる説明は避け、あくまで楽しみながら取り組める活動の一つとして位置づけてください。
1. Lumosity(ルモシティ)
記憶力、注意力、問題解決力を鍛えるゲームが楽しめます。1回5〜10分程度で、毎日の習慣にしやすいアプリです。
2. Peak(ピーク)
Lumosityに似た認知トレーニングアプリです。画面がシンプルで見やすく、高齢の方にも使いやすいのが特徴です。
注意
脳トレアプリで認知症が防げるという確かな証拠は、今のところありません。「ゲームが上手になれば認知症にならない」とは考えず、楽しみながら頭を使う習慣づくりとして活用してください。
服薬管理(2選)
3. お薬手帳プラス(日本調剤)
日本調剤が提供するお薬手帳アプリです。処方箋の事前送信、服薬アラーム、家族管理などの機能があり、登録会員数は200万人を超えています(出典: 日本調剤ニュースリリース, 2024)。
OTが推奨する理由:
- 服薬リマインダー機能が服薬忘れの防止に有効(記憶障害がある方に特に有用)
- 家族とのデータ共有機能があり、遠方の家族も服薬状況を確認できる
- 紙のお薬手帳の紛失リスクを軽減
活用のポイント: 認知機能が低下している方には、家族と一緒にリマインダーを設定することを推奨します。
4. EPARKお薬手帳
全国の薬局・病院で使える無料の電子お薬手帳アプリです。処方箋の事前送信、服用アラーム、飲み合わせチェック、家族登録などの機能があります(出典: EPARKお薬手帳公式サイト, 2026年7月時点)。
OTが推奨する理由:
- 処方箋の事前送信による待ち時間の短縮は、疲労管理が必要な患者にとって大きなメリット
- 服用アラーム機能で飲み忘れを防止できる
- 家族登録機能で家族の分もまとめて管理でき、介護者の負担軽減につながる
- 特定の薬局チェーンに縛られず、幅広い薬局で利用できる
3. お薬手帳プラス
お薬の情報を記録し、飲む時間をアラームで知らせてくれます。家族とデータを共有できるので、離れて暮らすご家族も安心です。
4. EPARKお薬手帳
無料で使える電子お薬手帳アプリです。処方箋の写真を薬局に送っておくと、薬局での待ち時間が短くなります。飲む時間のアラームや、家族の分のお薬管理もできます。
アラームは「薬を飲む時間」ではなく、「薬を飲む準備をする時間」に設定すると効果的です。食後の薬なら「食事が終わった頃」にアラームを設定。また、アラームを消した後に「飲みました」ボタンを押すことで、飲み忘れを防げます。
姿勢・運動(2選)
5. ラジオ体操アプリ(かんぽ生命)
かんぽ生命保険が無料で提供する公式のラジオ体操アプリです。ラジオ体操第一・第二の動画視聴に加え、AIによる動きの判定機能や歩数計機能があります(出典: App Store「ラジオ体操アプリ」, 2026年7月時点)。
OTが推奨する理由:
- 全身の関節可動域訓練・筋力維持を網羅した運動が手軽に行える
- 多くの高齢者に馴染みがあり、導入のハードルが低い
- 放送時間を待たずにいつでも動画を見ながら実施できる
- AI判定やスタンプ機能が継続のモチベーションになる
6. リハサク
医療機関・治療院向けの運動療法支援システム「リハサク」の患者向けアプリです。担当セラピストが処方したエクササイズを自宅で動画視聴しながら実施できます(出典: App Store「リハサク」, 2026年7月時点)。
OTが推奨する理由:
- セラピストが患者ごとにカスタマイズした自主トレメニューを処方・共有できる
- 動画で正しいフォームを確認できるため、自宅での自主トレの質が向上
- 実施記録・痛みの記録機能でアドヒアランスを確認できる
活用のポイント: 患者が個人で導入するアプリではなく、リハサクを導入している施設のセラピストを通じて利用します。勤務先での導入を検討する際の候補にもなります。
5. ラジオ体操アプリ
かんぽ生命が無料で提供している公式アプリです。おなじみのラジオ体操を、動画を見ながらいつでも行えます。全身をまんべんなく動かせる運動で、毎日の習慣にしやすいです。
6. リハサク
担当のセラピストが作った自主トレーニングメニューを動画で見られるアプリです。正しいやり方を動画で確認しながら運動できます。利用できるかどうかは、通っているリハビリ施設に確認してみてください。
コミュニケーション支援(2選)
7. DropTalk
障害のある方のためのAAC(拡大・代替コミュニケーション)アプリです。シンボル(絵カード)をタップすることで音声を出力できます。
OTが推奨する理由:
- 失語症や構音障害の方のコミュニケーション手段として非常に有効
- シンボルのカスタマイズが可能で、その人の生活に合わせた設定ができる
- 日本語対応で、日本の文化に合ったシンボルが用意されている
活用のポイント: 導入時にOTと言語聴覚士(ST)が連携し、その人のコミュニケーションニーズに合わせたシンボル配置を設定します。
8. 音声文字変換&音検知通知(Live Transcribe)
Googleが提供する、音声をリアルタイムでテキストに変換するアプリです(現行のアプリ名は「音声文字変換&音検知通知」です)。
OTが推奨する理由:
- 難聴の方のコミュニケーション支援に有効
- 会話のテキスト化により、記憶に不安がある方が後から内容を確認できる
- 無料で使用でき、追加コストがかからない
7. DropTalk(ドロップトーク)
話すことが難しい方のためのコミュニケーションアプリです。画面の絵をタップすると、代わりに音声を出してくれます。
8. 音声文字変換
話している言葉をリアルタイムで画面に文字表示します。耳が聞こえにくい方のコミュニケーションに役立ちます。無料で使えます。
生活支援(2選)
9. 時計アプリ(リマインダー・タイマー機能)
スマートフォンに標準搭載されている時計アプリのリマインダー・タイマー機能は、OTにとって最も身近で強力なツールです。
OTが推奨する理由:
- 遂行機能障害の方の時間管理支援に有効
- 注意障害の方の作業の切り替え支援
- 服薬、水分摂取、姿勢変換など定時動作のリマインダーとして活用
- 追加のアプリインストールが不要で、操作が簡単
活用のポイント: 「15分ごとに姿勢を変える」「2時間ごとに水を飲む」など、具体的な生活動作にリマインダーを設定します。
10. Googleマップ(アクセシビリティ機能)
Googleマップの車いすアクセシブルルート検索機能は、移動に制限がある方の外出支援に活用できます。
OTが推奨する理由:
- 車いすでもアクセス可能なルートを検索できる
- 駅のエレベーター・エスカレーター情報の確認
- 外出への不安軽減: 事前にルートを確認することで安心して外出できる
- ストリートビューで目的地の外観を事前確認できる
活用のポイント: 外出訓練の前に、OTと一緒にGoogleマップでルートを確認し、段差やトイレの場所を事前にチェックします。
9. 時計アプリ(リマインダー・タイマー)
スマートフォンに最初から入っている時計アプリです。「薬の時間」「水を飲む時間」「姿勢を変える時間」など、アラームを設定しておくと生活の助けになります。
10. Googleマップ
車いすでも通れるルートを検索できます。エレベーターの場所も確認できるので、外出前にチェックすると安心です。
アプリ活用のポイント
アプリは「補助ツール」であることを忘れない
アプリはあくまでリハビリの補助的なツールです。OTの専門的な評価と介入の代替にはなりません。「アプリを渡して終わり」ではなく、導入時の設定支援・使い方の指導・効果の確認までをOTの責任として行います。
その人に合ったアプリを選ぶ
すべての患者に同じアプリを勧めるのではなく、以下を考慮して選びます。
- 認知機能のレベル: 操作が複雑すぎないか
- 視覚機能: 画面の文字サイズ、コントラスト
- 巧緻動作: タッチ操作の正確性
- 動機づけ: 本人が使いたいと思えるか
- 経済的負担: 有料アプリの場合、費用は妥当か
アクセシビリティ設定を活用する
スマートフォンのアクセシビリティ設定(文字の拡大、音声読み上げ、タッチ感度の調整など)を適切に設定することで、多くのアプリがより使いやすくなります。OTはアクセシビリティ設定の知識を持っておくべきです。
家族の協力を得る
アプリの設定・更新・トラブル対応は家族の協力が必要な場合が多いです。導入時に家族にも使い方を説明しましょう。
アプリを活用する際のポイントです。
- まず1つから始める: いきなり複数のアプリを入れず、最も必要なもの1つから
- 文字を大きくする: スマートフォンの設定で文字サイズを大きくすると見やすくなります
- 一緒に使ってみる: 最初はご家族が一緒に操作して、慣れるまでサポートしてください
- OTに相談する: どのアプリが合うか迷ったら、担当のOTに相談してみてください
iPhoneの場合: 「設定」→「画面表示と明るさ」→「テキストサイズを変更」で文字を大きくできます。Androidの場合: 「設定」→「ディスプレイ」→「フォントサイズ」で変更できます。これだけで、多くのアプリが見やすくなります。
スマホアプリは、OTの臨床実践を拡張するツールです。「なぜこのアプリをこの人に勧めるのか」というOTの臨床的推論があってこそ、アプリは効果的なリハビリツールになります。テクノロジーに精通し、患者一人ひとりに合ったアプリを処方できるOTは、今後ますます求められるでしょう。
リハビリに使えるスマホアプリ ── 大切なポイントのまとめ
- 認知トレ・服薬管理・運動・コミュニケーション・生活支援の5分野から10アプリを厳選しました
- アプリはリハビリの「補助ツール」です。OTの指導と組み合わせて使いましょう
- その人の認知機能・視覚・操作能力に合ったアプリを選ぶことが大切です
- まず1つのアプリから始め、家族のサポートを受けながら慣れていきましょう
- 文字サイズの拡大など、スマートフォンのアクセシビリティ設定を活用してください
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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