この記事のポイント
- 慢性疼痛は急性痛と異なり、「痛み→恐怖→活動回避→悪化」の悪循環に陥りやすい状態です
- 作業療法士は活動ペーシング、段階的暴露、リラクセーションで「痛みがあっても動ける」を支援します
- 自分でできるペインマネジメントを身につけることで、痛みとうまくつき合いながら暮らせるようになります
慢性疼痛とは ── 急性痛との違い
痛みには2つの種類があります。
- 急性の痛み: ケガや手術の後の痛み。体が「ここが傷ついているよ」と教えてくれるサインです。傷が治れば痛みも消えます
- 慢性の痛み: 3か月以上続く痛み。傷は治っているのに、痛みだけが残り続ける状態です
慢性の痛みは、脳や神経が「痛みに敏感になりすぎている」状態で起こります。「気のせい」ではなく、実際に痛みを感じているのです。
痛みの悪循環 ── 恐怖-回避モデル
慢性の痛みには、多くの方が陥りやすい「悪循環」があります。
痛みの体験
- 1痛みを感じる
- 2「この動きをすると痛い」と記憶する
恐怖の形成
- 3「また痛くなるのではないか」と不安になる
- 4痛みに対する恐怖が強まる
活動の回避
- 5痛みを避けるために動かなくなる
- 6外出、家事、仕事を避けるようになる
身体機能の低下
- 7動かないことで筋力・体力が低下する
- 8関節が硬くなる
痛みの増悪
- 9身体機能の低下により、少しの動きでも痛みが出る
- 10痛みに対する恐怖がさらに強まる(悪循環の完成)
この悪循環のポイントは、痛みそのものよりも「痛みへの恐怖」が生活を制限するということです。「痛いかもしれない」と思って動かなくなると、体力が落ちて、もっと痛くなるのです。
ヒント
慢性の痛みの治療では、「痛みをゼロにする」ことではなく、「痛みがあっても自分のやりたいことができるようになる」ことを目指します。
OTのアプローチ
活動ペーシング ── 「ちょうどよく動く」技術
慢性の痛みがある方は、「調子が良い日に頑張りすぎて、翌日動けなくなる」ことが多いです。OTは「ちょうどよく動く」方法を一緒に考えます。
活動ペーシングのコツ
- 時間を決めて休む: 痛くなってから休むのではなく、「15分動いたら5分休む」とあらかじめ決める
- 調子が良い日も動きすぎない: これが一番大切なポイントです
- 少しずつ増やす: できる量が安定してきたら、少しずつ活動を増やす
家事をするときは、スマートフォンのタイマーを15分にセットしてみてください。タイマーが鳴ったら、たとえまだ元気でも座って休みます。これを繰り返すことで、「頑張りすぎ→翌日ダウン」のパターンを防げます。
段階的暴露 ── 「怖い」を少しずつ乗り越える
「この動きをすると痛くなる」という恐怖から、できることまで避けてしまうことがあります。OTは「怖い」と感じる動作に、少しずつチャレンジするお手伝いをします。
- まず一番不安が少ない動作から始めます
- 「できた」という経験を積み重ねます
- 少しずつ、難しい動作にチャレンジしていきます
「痛い=身体が壊れている」ではないということを、体験を通じて実感していくプロセスです。
リラクセーション ── 痛みのスイッチをオフにする
痛みが続くと、身体に力が入り、さらに痛みが強くなることがあります。意識的に身体の力を抜く方法を覚えましょう。
筋肉をゆるめる方法
- 手をギュッと5秒間握る
- パッと力を抜く
- 力が抜けた感じを味わう
これを足、肩、顔など、全身の部位で順番に行います。「力を入れてから抜く」ことで、力の抜き方がわかるようになります。
呼吸でリラックス
お腹に手を当てて、ゆっくりと鼻から息を吸い、口からゆっくり吐きます。吐く時間を長くすると、身体がリラックスモードに切り替わります。
1日に10分だけ、リラックスのための時間をつくってみてください。好きな音楽を聴く、温かいお茶を飲む、ゆっくり呼吸する──何でも構いません。大切なのは「毎日同じ時間に行う」ことです。身体がその時間を覚えて、自然にリラックスできるようになります。
自分でできるペインマネジメント
痛みとうまくつき合うために、自分でできることをまとめました。
痛みの記録をつける
「いつ」「どのくらい痛かったか」「何をしていたか」を記録すると、痛みのパターンが見えてきます。痛みが楽になる条件も見つかることがあります。
好きなことに集中する
痛みのことばかり考えていると、痛みはより強く感じられます。手芸、読書、料理など、没頭できる活動を見つけましょう。
睡眠を整える
痛みがあると眠りにくく、眠れないと痛みが強くなるという悪循環があります。
- 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる
- 寝室の温度、明るさ、音を整える
- 寝る前にスマートフォンを見ない
人とのつながりを保つ
痛みがあると外出がおっくうになりますが、人と話したり、どこかに出かけたりすることは痛みの軽減に効果があります。短時間でも、無理のない範囲で人と会う機会をつくりましょう。
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。