本文へスキップ
作業療法.net
暮らしの工夫#作業療法#日常生活#リハビリ

心臓の病気があっても安心して暮らすために ── 日常生活の組み立て方

心臓の病気がある方の日常生活の注意点をわかりやすく解説。入浴、トイレ、家事のコツや、自分で脈拍を管理する方法を紹介します。

📅 2026年6月10日 公開⏱ 読了目安 16分

この記事のポイント

  • 心臓リハビリテーションは「動かない」のではなく、「適切に動く」ことで心臓の回復を促します
  • METs(代謝当量)を基準にした活動管理で、日常生活を安全に組み立てることができます
  • 入浴・排泄・家事の注意点と、自己脈拍管理の方法を身につけることが大切です

心臓の病気と「動くこと」の関係

心臓の病気があると、「動いたら危ないのでは」と心配になりますよね。しかし、心臓リハビリ(運動を中心としたプログラム)を受けた人と受けなかった人を比べた研究をまとめたコクランレビュー(2021年、85の研究・23,430人)では、心臓リハビリを受けた人のほうが心筋梗塞を起こす人も、入院する人も少なかったと報告されています。

「動かない」ことと「無理をしない」ことは違います。心臓リハビリでは、安全に動ける範囲を専門家が一緒に確認しながら、少しずつ活動量を増やしていきます。

作業療法士(OT)は、日常生活の中で「どの動作なら安全にできるか」を一緒に考える専門家です。作業療法士がどんなことをしてくれるのかは作業療法とは何をするリハビリなのかで詳しく解説しています。

METs(代謝当量)── 活動の「強さ」を数字で知る

日常生活のすべての動作には、心臓への負担の大きさがあります。これをMETs(メッツ)という数値で表します。

日常動作の心臓への負担の目安

国立健康・栄養研究所がまとめた『身体活動のメッツ(METs)表』から、身近な動作を抜き出しました。

動作負担の大きさ
座ってご飯を食べる軽い(1.5 METs)
座って体を洗う軽い(1.5 METs)
トイレで用を足す軽い(1.8 METs)
着替える軽い(2.5 METs)
料理や皿洗いをするやや大きい(3.3 METs)
掃除機をかけるやや大きい(3.3 METs)
階段をゆっくり上る大きい(4.0 METs)

お風呂に浸かる動作は、この表には数字がありません。お湯の温度・深さ・時間で負担が大きく変わるためです。次の章で具体的な入り方を説明します。

OTは、主治医が判定した「安全にできる活動の範囲」をもとに、日常生活の過ごし方を一緒に考えます。

ご家庭でできること

同じ動作でも、立って行うより座って行うほうが心臓への負担は軽くなります。着替えは椅子に座って行う、調理は高めのスツールに座って行うなど、「座ってできることは座って行う」を意識してみてください。

日常生活の具体的な注意点

入浴

入浴は心臓への負担が大きい動作です。以下の点に注意してください。

日本循環器学会のガイドラインは、心不全のある方の入浴について次のように示しています。

  • お湯の温度: 40〜41℃くらい。熱いサウナは避けてください
  • 浸かる時間: 10分くらいまで
  • お湯の深さ: 鎖骨の下まで(首まで深く浸かる必要はありません)

このほか、暮らしの中で気をつけたいことがあります。

  • 脱衣所を温める: 寒い脱衣所と温かいお風呂の温度差は体に負担がかかります
  • 食事の直後・お酒を飲んだ後は避ける

注意

入浴中は家族に「お風呂に入るよ」と声をかけてからにしましょう。浴室の鍵はかけないでください。万が一のときにすぐ助けに行ける体制が大切です。

浴室の環境づくりや福祉用具の活用など、入浴全般の工夫については安全に入浴するための自立支援ガイドで詳しく解説しています。

排泄

トイレで強くいきむと、心臓に大きな負担がかかります。

  • 便秘を予防する: 水分をしっかり取り、野菜や果物を食べましょう
  • 強くいきまない: 便秘がつらい場合は、主治医に相談して便を柔らかくするお薬を処方してもらいましょう
  • 洋式トイレを使う: 和式トイレはしゃがむ動作が心臓に負担になります

家事

家事は意外と心臓に負担がかかります。特に注意したい点をまとめました。

  • 一度に全部やらない: 掃除は1日1部屋ずつ、洗濯は回数を分けましょう
  • こまめに休憩する: 15〜20分動いたら、5〜10分座って休みましょう
  • 重いものを持たない: 買い物は小分けにする、軽い鍋に買い替えるなどの工夫を
  • 高い場所の作業を避ける: 腕を上げる作業は心臓に負担がかかります
ご家庭でできること

曜日ごとに家事を分けてみてください。月曜は洗濯、火曜はリビングの掃除、水曜は買い物…というように。1日にまとめてやるのではなく、分散させることで心臓への負担を減らせます。

自己脈拍管理 ── 自分の心臓の声を聴く

自分の脈拍を測る習慣をつけると、心臓の調子を自分でチェックできるようになります。

脈拍の測り方

手首の親指側に、反対の手の人差し指・中指・薬指を軽く当てます。15秒間、脈の数を数えて4倍すると、1分間の脈拍数がわかります。

こんなときは活動をやめてください

  • 脈が飛ぶ、リズムが不規則になった
  • 脈が急に速くなった、または極端に遅くなった
  • 胸の痛みや圧迫感
  • 強い息切れ(会話が続けられない)
  • めまいや冷や汗、気分が悪い
  • いつもと同じ活動なのに、つらさが増している

強い胸の痛みや意識が遠のく感じがあるときは、様子を見ずにすぐ救急要請してください。

注意

活動の強さの目安は「話しながらできるかどうか」です。会話ができなくなるほどの動作は、心臓への負担が大きすぎるサインです。すぐに座って休んでください。

ご家庭でできること

朝起きたときの脈拍を毎日測って記録してみてください。自分の「普段の脈拍数」を知っておくと、体調の変化に早く気づけます。スマートウォッチや血圧計を活用するのも便利です。

日常生活の段階づけ ── 回復に合わせた活動の広げ方

退院後は、少しずつ活動範囲を広げていきます。焦らず、段階的に進めることが大切です。

1

ベッド上の生活

  1. 1食事・整容を座位で行う
  2. 2ベッドサイドでの更衣
  3. 3病棟内のトイレ歩行
2

病棟内の生活

  1. 4病棟内の自由歩行
  2. 5シャワー浴の開始
  3. 6売店への歩行
3

院内の生活

  1. 7階段昇降の開始
  2. 8シャワー浴から浴槽入浴へ
  3. 9退院に向けた家事動作の練習
4

退院後の生活

  1. 10家事動作の段階的な再開
  2. 11近所への外出
  3. 12通院の自立
5

社会参加

  1. 13買い物や趣味活動の再開
  2. 14段階的な復職
  3. 15運動習慣の確立

ポイント

心臓の病気がある方・ご家族へ

  • 「動かない」のではなく「適切に動く」ことが、心臓の回復を助けます
  • 入浴は40〜41℃で10分程度、鎖骨の下までの深さが目安。脱衣所も温めておきましょう
  • 家事は一度にまとめず、曜日ごとに分散させると心臓への負担が減ります
  • 自分の脈拍を測る習慣をつけ、「いつもと違う」と感じたら休憩・受診しましょう
  • 不安なことがあれば、主治医やリハビリスタッフに遠慮なく相談してください

免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。

関連記事