この記事のポイント
- 脳性麻痺は一人ひとり異なる。型(痙直型・アテトーゼ型・失調型)と程度によって必要な支援が変わる
- OTは上肢機能・ADL・座位保持・補装具・遊びの視点から、「できること」を広げるサポートを行う
- 補装具費支給制度、障害児通所支援、特別児童扶養手当など、使える支援制度がある
脳性麻痺とは
脳性麻痺は、赤ちゃんがお腹の中にいるときや生まれてすぐの時期に、脳の一部がダメージを受けることで起こる体の動きの障害です。
脳のダメージ自体は進行しませんが、成長に合わせた継続的なサポートが大切です。
作業療法士(OT)は、お子さんの「できること」を広げ、毎日の生活をもっと楽に、もっと楽しくするための専門家です。
脳性麻痺の主な種類
脳性麻痺にはいくつかのタイプがあり、それぞれ体の動き方に特徴があります。
痙直型(けいちょくがた)── 最も多いタイプ
筋肉がこわばりやすいタイプです。手足が突っ張ったり、動きがぎこちなくなったりします。脳性麻痺のお子さんの約70〜80%がこのタイプです。
アテトーゼ型 ── 動きが不安定になるタイプ
自分の意思とは関係なく手足が動いてしまうことがあります。筋肉の緊張が変わりやすく、動作が不安定になります。
失調型 ── バランスが取りにくいタイプ
バランスを取ることが苦手で、動きがぎこちなくなります。手を目標に伸ばすときに震えが出ることがあります。
お子さんによって症状の出方はさまざまで、一人ひとり違います。同じ「脳性麻痺」でも、必要な支援は異なります。
OTの役割 ── 5つの支援領域
1. 上肢機能の向上
手を使う力は、食事・着替え・遊びなど、生活のあらゆる場面に関わります。OTはお子さんの手の機能を伸ばすサポートを行います。
- 物をつかむ練習: 握りやすいおもちゃから始めて、少しずつ細かい操作に挑戦
- 手を伸ばす練習: 好きなおもちゃに手を伸ばす遊びの中で
- 両手を使う練習: 片方の手で押さえて、もう片方で操作する
片側だけ動きにくい場合、動きにくい方の手も「お手伝いの手」として使えるよう練習します。物を押さえたり、支えたりする役割を担えるようになると、できることがぐんと広がります。
2. ADL(日常生活動作)の自立支援
食事・着替え・トイレ・お風呂。毎日の生活動作をできるだけ自分でできるようにサポートするのがOTの仕事です。
OTは一つの動作を細かく分けて、「どこまでが自分でできて、どこから手助けが必要か」を見極めます。
「全部一人で」ではなく、道具を使って一人でできる、ちょっとだけ手助けがあればできる。お子さんに合った「できる」の形を一緒に見つけていきます。
3. 座位保持と姿勢管理
体がぐらぐらしていると、手をうまく使えません。安定して座れることが、食事や遊びの「できる」の土台になります。
OTは、お子さんに合った椅子やクッションを選んだり調整したりして、体が安定して、手が使いやすい姿勢をつくります。
- 座位保持装置: お子さんの体に合わせた特別な椅子
- 車椅子の調整: 骨盤・体幹・足の位置を最適に
- 学校の椅子の工夫: クッションや姿勢サポートの追加
4. 補装具・自助具の活用
「道具を使えば自分でできる」。そんな経験がお子さんの自信につながります。
- 食事: 握りやすいスプーン、すくいやすいお皿、滑り止めマット
- 書く: 太いペン、鉛筆を握りやすくするグリップ
- 着替え: ボタンの代わりにマジックテープ、引っ張りやすいファスナー
- 遊び・学習: タブレット用の操作しやすいペン
道具を使うことは恥ずかしいことではありません。「自分でできた!」という体験が、お子さんの自信と意欲を育てます。
5. 遊びの支援
遊びは子どもにとって一番大切な活動です。OTは、お子さんが遊びに参加できる工夫を考えます。
- おもちゃの工夫: ボタン一つで動くおもちゃ(スイッチトイ)にする
- 姿勢の工夫: 体が安定して手が使える姿勢をつくる
- 難しさの調整: お子さんが「できた!」と感じられるレベルに合わせる
- 一緒に遊ぶ: きょうだいやお友達と一緒に楽しめる方法を考える
楽しい遊びの中で、お子さんは自分から手を伸ばし、体を動かしたくなります。これがリハビリの効果をさらに高めてくれます。
家庭での工夫
- 食事: 滑り止めマットでお皿を固定、握りやすいスプーンを使う、足台で姿勢を安定させる
- 着替え: 前開きの服やマジックテープの靴を選ぶ。座って着替えられるスペースを確保する
- お風呂: バスチェアで安定した姿勢を確保。滑り止めマットを敷く
- 遊び: テーブルの高さを調整して手が使いやすい姿勢に。おもちゃの大きさや重さを工夫する
- 移動: 家の中の段差を解消、手すりの設置を検討。必要に応じて歩行器の活用も
「手伝いすぎない」ことも大切
お子さんが困っていると、つい全部やってあげたくなりますよね。でも、「できるところは自分で」が大切です。
- まずやらせてみる
- 困っているところだけ手伝う
- できたら「○○ができたね!」と具体的に伝える
時間がかかっても、自分でできた経験がお子さんの自信につながります。OTは「どこまで見守って、どこから手伝うか」のアドバイスもしてくれます。
使える支援制度
脳性麻痺のあるお子さんのご家族が使える支援制度があります。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 補装具費支給制度 | 車椅子や装具の費用を市区町村が負担してくれます |
| 日常生活用具の給付 | 入浴用の椅子など、生活に必要な道具を支給してもらえます |
| 児童発達支援 | 就学前のお子さんの療育サービス |
| 放課後等デイサービス | 学校の後に通える療育・居場所 |
| 特別児童扶養手当 | 障害のあるお子さんを育てている方への手当 |
| 医療費の助成 | 医療費の負担が軽くなる制度 |
「何が使えるかわからない」ときは、病院のソーシャルワーカーや、市区町村の障害福祉課に相談してみてください。
ヒント
支援制度は申請しないと利用できません。「対象になるかわからない」場合でも、まず窓口に問い合わせてみてください。対象外であっても、別の制度を案内してもらえることがあります。
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。