この記事のポイント
- 「クライアント中心の実践」とは、クライアントをリハビリの意思決定の主体として尊重するアプローチです
- 理想を掲げるだけでなく、「構造」として実現する仕組み(COPM、共同目標設定など)が必要です
- パワーバランスの非対称性を自覚し、クライアントが安心して意見を言える関係をつくることが出発点です
「クライアント中心」は本当に実践できているか
リハビリの目標は、誰が決めるものだと思いますか?
「先生にお任せします」「専門家がいちばんよくわかっているから」。そう思っていませんか?
実は、リハビリの目標はあなた自身が決めていいものです。「クライアント中心の実践」とは、リハビリを受ける人の「やりたいこと」を出発点にする考え方です。
この記事では、その考え方と、リハビリにどう参加すればいいのかを紹介します。
クライアント中心の実践とは何か
クライアント中心の実践には、大切な考え方があります。
- あなたは自分の生活の専門家: 自分の生活について一番よく知っているのはあなたです
- OTは「一緒に考える人」: OTが一方的に決めるのではなく、あなたとOTが一緒に考えます
- あなたの「やりたいこと」が出発点: リハビリの目標は、あなたの希望から始まります
- あなたの価値観が大切: 人によって「大切なこと」は違います。それを尊重します
理想と現実のギャップ
「リハビリの目標は自分で決めていい」と言われても、実際にはなかなか意見が言いにくいものです。
- 「先生に悪いから」と遠慮してしまう
- 何を望んでいいのかわからない
- 「こんなことを言ったらわがままかも」と思う
- 専門家に従うのが正しいと思っている
実は、OTもこの「意見が言いにくい関係性」の問題に気づいています。だからこそ、あなたが安心して意見を言える関係を意識的につくろうとしています。
「大きな目標」でなくても大丈夫です。「孫と一緒にお風呂に入りたい」「近所のスーパーまで歩いて買い物に行きたい」「趣味の編み物をまたやりたい」。日常のささやかな「やりたいこと」を伝えてみてください。それがリハビリの出発点になります。
実践のための具体的方法
COPMの活用
OTはCOPMという道具を使って、あなたの「やりたいこと」を整理する手伝いをします。
- あなたの生活で大切な活動は何ですか?
- それぞれ、どのくらい重要ですか?
- 今、どのくらいできていますか?
- 今の状態に、どのくらい満足していますか?
こうした質問を通じて、あなたにとって本当に大切なリハビリの目標が見えてきます。
共同目標設定
リハビリの目標は、あなたとOTが一緒に考えて決めるものです。
- 目標はあなたの言葉で表現してください。「腕の角度を〇度にする」ではなく「孫を抱っこしたい」でOKです
- 小さな目標から始めましょう。いきなり大きな目標でなくて構いません
- 途中で変えてもいい。状況が変われば目標も変わるのは自然なことです
パワーバランスの意識的な調整
OTは、あなたが安心して意見を言えるように、さまざまな工夫をしています。
- 「どうしますか?」とあなたに聞く
- いくつかの方法を見せて選んでもらう
- あなたが考える時間をしっかり待つ
- 「気になることはありませんか?」と定期的に確認する
もし「言いにくいな」と思うことがあれば、ご家族を通じて伝えてもらうのも一つの方法です。
難しい場面での実践
「歩けるようになりたい」と言ったけれど…
もし医学的に歩くことが難しいと判断された場合でも、OTは希望を否定しません。「歩きたい」の裏にある本当の願い(「買い物に行きたい」「一人でトイレに行きたい」など)を聴き取り、別の方法でそれを叶える道を一緒に探します。
自分で伝えるのが難しいとき
言葉で伝えるのが難しい場合でも、OTは表情や行動から気持ちを読み取ろうとします。ご家族からの情報も大切な手がかりになります。
ヒント
リハビリの目標について、OTと意見が合わないと感じたときは、遠慮せずにその気持ちを伝えてください。意見の相違は対立ではなく、より良い目標を見つけるための大切なプロセスです。
まとめ ── クライアント中心の実践を深めるために
- クライアント中心の実践は、クライアントをリハビリの意思決定の主体として尊重するアプローチです
- 「お任せします」の裏にある気持ちを想像し、安心して意見を言える関係をつくることが出発点です
- COPMや共同目標設定など、「構造」としてクライアントの声を取り入れる仕組みが重要です
- パワーバランスの非対称性を自覚し、意識的にバランスを調整する努力が必要です
- リハビリの目標はあなたの「やりたいこと」から始まります。遠慮なくOTに伝えてください
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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