この記事のポイント
- 作業的公正とは、すべての人が意味ある作業に参加する権利が守られている状態を指します
- 作業的不公正には「剥奪」「周辺化」「不均衡」「疎外」の4つの形態があります
- OTには個人への介入だけでなく、社会の仕組みに働きかける責任があります
「やりたいことができない」のは誰のせいか
趣味の集まりに行きたいのに、建物にエレベーターがなくて行けない。
こうした状況は、その人の障害のせいでしょうか。それとも、建物や社会の仕組みの問題でしょうか。
作業的公正とは、すべての人が「やりたいこと」をできる社会のあり方を考える考え方です。
作業的公正の概念
作業的公正の考え方には、大切な前提があります。
- 人間は何かをすること(作業)を通じて生きる存在です
- 自分にとって意味のあることに参加できることは、健康と幸せに直結します
- 「やりたいことができない」原因は、本人の障害だけでなく社会の仕組みにもある
- すべての人が参加できる社会をつくることは社会全体の責任です
作業的不公正の4つの形態
「やりたいことができない」状態には、4つのパターンがあります。
1. 作業が奪われている(剥奪)
施設で一日中テレビの前に座らされている、入院が長引いて地域の活動に参加できないなど、環境のせいでやりたいことができない状態です。
2. 周りから排除されている(周辺化)
「危ないから」「年だから」と、善意の名のもとにやりたいことを止められている状態です。
3. バランスが崩れている(不均衡)
仕事ばかりで趣味の時間がない、介護に追われて自分のことができないなど、活動のバランスが大きく崩れている状態です。
4. 意味を感じられない(疎外)
やっていることにやりがいや意味を感じられない状態です。外からは活動しているように見えても、本人は充実感がありません。
「やりたいことがあるのにできない」「毎日の活動に意味を感じられない」。こうした状態が続いているなら、それは個人の問題ではなく、環境や仕組みの問題かもしれません。OTに相談することで、解決の糸口が見つかることがあります。
OTの社会的責任
OTは、一人ひとりのリハビリだけでなく、社会の仕組みを変える役割も担っています。
- 一人ひとりの「やりたいこと」を聴き取り、参加を阻む壁を取り除く支援
- 地域のバリアフリーや居場所づくりへの働きかけ
- 作業的不公正を生む制度や政策の改善に向けた提言
OTは「すべての人がやりたいことをできる社会」を目指す専門職です。
日本の文脈で考える作業的公正
日本にも「やりたいことができない」状態にある人がたくさんいます。
- 長期入院で地域の生活から離れてしまった方
- 施設で自分に合った活動が提供されていない方
- 働きすぎで自分の時間がない方
- 障害があってもやりがいのある仕事につながっていない方
こうした状況を変えていくことも、OTの大切な仕事です。
まとめ ── 作業的公正を実践するために
- 作業的公正とは、すべての人が意味ある作業に参加する権利が守られている状態です
- 作業的不公正には剥奪・周辺化・不均衡・疎外の4形態があり、個人の問題ではなく社会の問題です
- OTには個人への介入だけでなく、社会の仕組みに働きかける責任があります
- 日本にも精神科長期入院や過重労働など、作業的不公正の問題は数多く存在します
- 「この人の作業への参加を阻んでいるものは何か」と問い続けることが実践の第一歩です
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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