この記事のポイント
- 発達性協調運動障害(DCD)は子どもの5〜6%に見られる、協調運動の発達の障害です。「不器用」と見過ごされがちですが、適切な支援が必要です
- 書字、はさみ、着替え、体育など日常のあらゆる場面で困難が生じ、自尊感情の低下や不登校につながることがあります
- 作業療法士(OT)の専門的な評価と支援で、お子さんの「できた」を増やすことができます
その「不器用」、本当にただの不器用ですか?
「うちの子は不器用だから」「もっと練習すればできるようになる」。そう思っていませんか。
実は、お子さんの不器用さの裏に、DCD(発達性協調運動障害)という発達の特性が隠れているかもしれません。DCDは子どもの20人に1人に見られるもので、1クラスに1〜2人いる計算です。決して珍しいものではありません。
作業療法士(OT)は、お子さんの動きの困りごとを専門的に評価し、「できた」を増やすお手伝いをする専門家です。
DCDとは何か ── 「不器用」との違い
「不器用」とDCDはどう違うのか
誰にでも得意・不得意はあります。しかしDCDの場合は、年齢相応の運動が著しく難しいという点が異なります。
DCDのお子さんは、知的な遅れがないのに、身体の動かし方がうまくいきません。これは「やる気がない」「練習が足りない」のではなく、脳から身体への指令がうまく統合されないことが原因です。
また、ADHDや自閉スペクトラム症など、他の発達の特性と一緒に見られることも多いです。
練習しても練習してもうまくいかないのは、お子さんの努力不足ではありません。この理解がとても大切です。
DCDの子どもが困っている場面
手先の細かい動き(微細運動)
- 文字を書く: マスからはみ出す、字の大きさがばらばら、書くのがとても遅い
- はさみを使う: 線に沿って切れない
- ボタンやファスナー: 着替えに時間がかかる
- お箸: うまく持てない、食べこぼしが多い
- 折り紙や工作: 角を合わせて折れない
これらは両手を同時にうまく使うことや、目で見ながら手を動かすことが苦手なために起きています。
全身の動き(粗大運動)
- 体育: 走り方がぎこちない、跳び箱やマット運動が苦手
- 球技: ボールをうまくキャッチできない
- 自転車: なかなか乗れるようにならない
- 縄跳び: 手と足のタイミングが合わない
- 階段: よくつまずく
全身をうまく使うこと、動きのタイミングを合わせること、身体のバランスをとることに困難があるために起きています。
見過ごされることで起きる二次的な問題
DCDが見過ごされると、お子さんの心に大きな影響を及ぼすことがあります。
- 自信をなくす: 「自分はダメだ」「何をやってもできない」と思い込んでしまう
- からかいやいじめ: 体育や給食の場面で「のろい」「下手」と言われやすい
- 学校に行きたくなくなる: 失敗体験が積み重なり、登校しぶりにつながることがある
- 運動を避けるようになる: 苦手意識から体を動かすこと自体を嫌がるようになる
注意
「そのうちできるようになる」と待つのではなく、早めに専門家に相談することで、お子さんの自信を守ることができます。
OTによる評価と支援アプローチ
OTはどのように評価するのか
OTはお子さんの動きを専門的に調べます。
- 手先の動き、ボールの操作、バランスなどをテストで確認します
- 実際にボタンを留めたり、はさみを使ったりする場面を観察して、どこでつまずいているかを分析します
- お子さんの強みも同時に見つけます
大切なのは、「何ができないか」だけでなく「なぜできないか」を分析することです。同じ「字が書けない」でも、力加減の問題なのか、目と手の連携の問題なのか、姿勢の問題なのかによって、対策はまったく違います。
OTはどのように支援するのか
「できる方法」を一緒に見つけるたとえば「ボタンが留められない」とき、ボタンの練習をひたすら繰り返すのではなく、その子に合ったやり方を一緒に探します。指の使い方を工夫したり、大きなボタンから始めたり、ボタンの代わりにマグネットボタンを使ったり。
「どうすればうまくいくか」を自分で考える力を育てるCO-OPというアプローチでは、お子さん自身が「どうすればうまくいくか」を考える力を育てます。OTはその過程を導く役割です。
感覚の土台を整える身体の感覚をうまく受け取れるようにする遊びや活動を通じて、動きやすい身体の土台を作ります。
家庭で保護者ができること
スモールステップで「できた」を積み重ねる
お子さんが「できない」と感じることも、小さなステップに分ければ一つひとつはできることが多いです。
たとえば靴紐を結ぶ練習なら、いきなり完成形を求めず、「紐を交差させる」→「くぐらせる」→「引っ張る」と、一つずつ進めてみてください。そして各ステップで「できたね」と声をかけることが、お子さんの自信回復につながります。
成功体験を意識的に作る
- 得意なことを見つける: 水泳や武道など、自分のペースでできる運動を試してみましょう
- ほかの子と比べない: きょうだいやお友だちと比べず、お子さん自身の成長に注目してください
- がんばりをほめる: 結果ではなく「挑戦したこと」をほめてあげてください
道具の工夫で「できる」を増やす
道具を工夫するだけで、お子さんの「できない」が「できる」に変わることがあります。
| 困りごと | こんな道具が役立ちます |
|---|---|
| 字がうまく書けない | 太い鉛筆、鉛筆の持ち方を助けるグリップ |
| はさみが使えない | バネで自動的に開くはさみ |
| ボタンが留められない | マグネットボタンに付け替える |
| お箸が使えない | エジソン箸など補助つきの箸 |
| 靴紐が結べない | ゴム製の靴紐、マジックテープの靴 |
「道具に頼ると甘えが出る」と心配される方もいますが、道具を使うことは「ずるい」ことではありません。メガネをかけることと同じです。道具で「できた」という成功体験が積み重なることで、お子さんの自信が育ちます。
相談先と支援の受け方
お子さんの不器用さが気になったら、以下の窓口に相談してみてください。
| 相談先 | こんなとき |
|---|---|
| 小児科・かかりつけ医 | まず最初の相談窓口に |
| 児童精神科・発達外来 | 専門的な診断が必要なとき |
| 発達支援センター | OTの評価や療育を受けたいとき |
| 学校の特別支援コーディネーター | 学校での配慮をお願いしたいとき |
ヒント
「こんなことで相談していいのかな」と思う必要はありません。お子さんが困っているなら、それだけで相談する十分な理由になります。
使える制度については支援制度まるわかりガイドもあわせてご確認ください。
お子さんの「できない」には理由があります。それは練習不足でも、怠けでもありません。
DCDという特性を理解し、道具の工夫やスモールステップで「できた」を積み重ねていくことが大切です。一人で悩まず、作業療法士に相談してみてください。お子さんの「できた」を一緒に増やしていく専門家がいます。
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。