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支援制度

知らないと損をする ― 病気やケガで使える支援制度まるわかりガイド【2026年版】

作業療法.net17分で読めます
#支援制度#保険・年金#作業療法

この記事のポイント

  • 病気やケガのとき、使える支援制度は想像以上に多い
  • 「あなたの状況」から使える制度を探せるマップを掲載
  • 作業療法士は、制度を暮らしにつなぐ専門家として活用できる

はじめに ― なぜ「知らない制度」が多いのか

「こんな制度があったなんて知らなかった」――病気やケガ、介護に直面したとき、多くの方がそう感じます。

実は、日本には病気やケガ、障害、介護に関連する支援制度が数多く存在します。にもかかわらず、必要な人に届いていないことが少なくありません。

その理由はいくつかあります。

  • 制度が縦割りになっている(医療・福祉・労働・年金がそれぞれ別の窓口)
  • 申請しないと利用できない「申請主義」が基本
  • 病気やケガの渦中にいると、制度を調べる余裕がない
  • 制度の名称が専門的で、自分が対象かどうかわからない

この記事では、あなたの「生活の困りごと」から使える制度を探せるように、OTの視点で支援制度を整理しました。すべてを一度に理解する必要はありません。今の状況に近いところから、読んでみてください。

あなたの状況から探す制度マップ

まずは、今のあなたに近い状況を選んでください。該当するセクションから読み進めると、使える可能性のある制度がわかります。

仕事を休んでいる・退職した方

仕事を休んでいる、あるいは退職を余儀なくされた方が使える制度です。

制度概要主な対象
傷病手当金休職中の給与の約2/3を最長1年6ヶ月支給健康保険加入の会社員
雇用保険(失業給付)退職後の生活費を支給雇用保険加入者
障害年金障害が残った場合に年金を受給年金加入者
就労移行支援就職に向けたトレーニングを受けられる18〜65歳の障害のある方

作業療法士はここで役立ちます: 「働きたいけれど、今の体で何ができるかわからない」という方に、作業療法士は生活全体を見ながら、復職に向けたステップを一緒に考えます。就労移行支援事業所には作業療法士が配置されていることもあります。

身体の障害が残った方

脳卒中や事故などで身体に障害が残った方が使える制度です。

制度概要主な対象
身体障害者手帳医療費助成・税減免・各種割引一定の障害がある方
障害年金障害等級に応じた年金支給初診日に年金加入
補装具費支給義肢・装具・車椅子等の費用支給身体障害者手帳所持者
介護保険訪問リハビリ・デイケア等40歳以上(特定疾病)/65歳以上

作業療法士はここで役立ちます: 退院後の生活で「自宅の段差が上れない」「お風呂に入れない」といった困りごとに対して、作業療法士は住環境の調整や自助具の選定を行います。介護保険の訪問リハビリテーションで自宅に来てもらうこともできます。

精神疾患・メンタルヘルスの問題がある方

うつ病、統合失調症、双極性障害、不安障害などの方が使える制度です。

制度概要主な対象
自立支援医療通院医療費の自己負担を3割→1割に軽減精神疾患で通院中の方
精神障害者保健福祉手帳税減免・公共料金割引・就労支援精神疾患が6ヶ月以上継続
障害年金障害等級に応じた年金支給初診日に年金加入
精神科デイケア日中の活動支援・社会復帰プログラム精神科に通院中の方

作業療法士はここで役立ちます: 精神科デイケアでは作業療法士が中心的な役割を担っています。「生活リズムを立て直したい」「人と話すのが怖い」といった悩みに対して、段階的な活動プログラムを通じて回復を支援します。

介護が必要になった方・その家族

ご自身やご家族に介護が必要になった場合に使える制度です。

制度概要主な対象
介護保険訪問介護・デイサービス・福祉用具貸与等65歳以上/40歳以上の特定疾病
高額介護サービス費月の自己負担が上限を超えた分を支給介護保険利用者
介護休業給付金介護のための休業中に給与の67%を支給雇用保険加入の労働者
特別障害者手当在宅で常時特別な介護が必要な方に月額約2.8万円20歳以上の重度障害者

作業療法士はここで役立ちます: 介護保険の認定調査を受ける際、「いつもは何とかできるけど、調子の悪い日もある」といった波のある状態を、作業療法士が評価書にまとめることで、実態に合った認定につながることがあります。また、ご家族の介護負担を軽減するための生活の工夫や環境調整も、作業療法士の得意分野です。

子どもの発達・不登校に悩む方

お子さんの発達や学校生活に不安を感じている保護者の方が使える制度です。

制度概要主な対象
児童発達支援未就学児への療育サービス0〜6歳の障害のある子ども
放課後等デイサービス放課後の療育・居場所支援就学中の障害のある子ども
特別児童扶養手当障害のある子どもの養育者に月額約3.6〜5.4万円20歳未満の障害児の養育者
教育支援センター(適応指導教室)不登校児童生徒の学習・相談支援不登校の小中学生

作業療法士はここで役立ちます: 児童発達支援や放課後等デイサービスには、作業療法士が在籍している事業所があります。「箸がうまく使えない」「教室でじっと座っていられない」といった困りごとに対して、遊びを通じた発達支援を行います。

経済的支援制度 ― お金の不安を軽くする

病気やケガの治療中に大きな不安となるのがお金の問題です。以下の制度で経済的な負担を軽減できる可能性があります。

傷病手当金

会社員や公務員が病気やケガで連続3日以上仕事を休んだ場合、4日目から最長1年6ヶ月、給与のおよそ3分の2が支給される制度です。

  • 対象: 健康保険(協会けんぽ・組合健保)の被保険者
  • 条件: 業務外の病気・ケガで労務不能、連続3日間の待期期間あり
  • 申請先: 加入している健康保険の保険者(会社の健保組合または協会けんぽ)
  • 注意点: 国民健康保険には原則としてこの制度がありません

障害年金

病気やケガにより生活や仕事に制限がかかる場合に受給できる年金制度です。障害等級(1〜3級)に応じて支給されます。

  • 対象: 初診日に国民年金または厚生年金に加入していた方
  • 条件: 初診日から1年6ヶ月後の「障害認定日」に一定の障害状態
  • 申請先: お住まいの年金事務所、または市区町村の国民年金窓口
  • ポイント: 精神疾患(うつ病、統合失調症等)も対象になります。「障害年金=身体障害」ではありません

高額療養費制度

1ヶ月の医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。

  • 対象: すべての公的医療保険の加入者
  • 上限額の目安: 年収約370万円以下の場合、月額約57,600円
  • 申請先: 加入している健康保険の保険者
  • ポイント: 事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、窓口での支払いが上限額までに抑えられます

自立支援医療(精神通院医療)

精神疾患の通院治療にかかる医療費の自己負担を3割から1割に軽減する制度です。

  • 対象: 精神疾患で継続的に通院が必要な方
  • 条件: 医師の診断書が必要
  • 申請先: お住まいの市区町村の障害福祉窓口
  • ポイント: 薬局での薬代やデイケア利用料も対象。所得に応じた月額上限もあります

生活支援制度 ― 暮らしを支える

経済面だけでなく、実際の暮らしを支えるサービスも多くあります。

介護保険

40歳以上の方が利用できる、暮らしを支える総合的なサービス制度です。65歳以上は原因を問わず、40〜64歳は特定疾病(脳卒中、がん末期など16疾病)が原因の場合に利用できます。

主なサービス例:

サービス種別内容頻度の目安
訪問リハビリテーションOT・PTが自宅を訪問しリハビリ週1〜2回
通所リハビリ(デイケア)施設に通ってリハビリ週1〜3回
訪問介護(ヘルパー)入浴・食事・掃除等の生活援助必要に応じて
福祉用具貸与車椅子・特殊寝台・歩行器等のレンタル継続
住宅改修手すり設置・段差解消等(上限20万円)1回

利用開始までの流れ:

  1. お住まいの市区町村の介護保険窓口に要介護認定の申請
  2. 認定調査(調査員が自宅を訪問し、心身の状態を確認)
  3. 要支援1・2または要介護1〜5の認定結果を受け取り
  4. ケアマネジャーと相談し、ケアプランを作成
  5. サービスの利用開始

障害者総合支援法によるサービス

障害のある方の日常生活と社会参加を支援する制度です。身体・知的・精神障害、難病の方が対象です。

  • 居宅介護(ホームヘルプ): 自宅での入浴・食事等の介護
  • 就労移行支援: 一般企業への就職を目指すトレーニング(原則2年間)
  • 就労継続支援(A型・B型): 働く場の提供と支援
  • グループホーム: 共同生活の場での支援
  • 日中活動支援: 日中の居場所と活動の提供

障害者手帳

障害者手帳を取得すると、さまざまな公的サービスや割引が利用できます。

手帳の種類対象主なメリット
身体障害者手帳身体機能に永続する障害医療費助成、税控除、公共交通割引
精神障害者保健福祉手帳精神疾患が6ヶ月以上税控除、公共料金割引、就労支援
療育手帳知的障害税控除、各種福祉サービス

手帳の取得は任意であり、取得したからといって不利益を受けることはありません。「手帳を持つこと」と「障害を受け入れること」は別のことです。制度を使うための道具として、必要に応じて検討してみてください。

相談窓口一覧 ― まずここに連絡を

「自分がどの制度を使えるかわからない」という方は、まず以下の窓口に相談してみてください。制度の専門家が、あなたの状況に合った支援を一緒に考えてくれます。

窓口対応内容連絡先
市区町村の福祉窓口障害福祉・介護保険・生活困窮お住まいの市区町村役場
地域包括支援センター高齢者の介護・生活全般の相談お住まいの地域の担当センター
障害者相談支援事業所障害福祉サービスの利用相談市区町村に問い合わせ
年金事務所障害年金の申請相談日本年金機構
協会けんぽ・健保組合傷病手当金・高額療養費保険証に記載の連絡先
ハローワーク就職支援・雇用保険お住まいの地域のハローワーク

相談のコツ: 「何を聞けばいいかわからない」と感じても大丈夫です。「病気で仕事を休んでいて、お金のことが不安です」「退院後の生活が心配です」など、困っていることをそのまま伝えるのが一番です。窓口の担当者が、あなたに合った制度を一緒に探してくれます。

作業療法士は「制度を生活につなぐ」専門家です

支援制度は「知っている」だけでは使えません。自分の生活のどこに制度を当てはめればいいのか、複数の制度をどう組み合わせればいいのか――ここが難しいところです。

作業療法士は、あなたの「暮らし全体」を見ながら、制度を実際の生活につなぐお手伝いをしています。

作業療法士が得意な3つのこと

1. 生活から制度を見つける

作業療法士は「制度の一覧」からではなく、「あなたの生活の困りごと」から出発します。

例えば、「お風呂に一人で入れなくなった」という困りごとがあれば、次のような制度の組み合わせを提案できます。

  • 介護保険の住宅改修で浴室に手すりを設置
  • 福祉用具貸与でシャワーチェアをレンタル
  • 訪問リハビリで安全な入浴動作を一緒に練習

2. 複数の制度を組み合わせる

一つの制度だけでは解決しないことも、複数の制度を組み合わせることで暮らしが大きく変わることがあります。

例: うつ病で休職中の方の場合

  • 傷病手当金で休職中の収入を確保
  • 自立支援医療で通院費の負担を軽減
  • 精神科デイケアで生活リズムを立て直し
  • 就労移行支援で復職に向けたトレーニング

これらを時系列で組み合わせ、回復のステップに合わせて段階的に活用していきます。

3. 申請の準備をサポートする

障害年金や介護認定の申請では、日常生活の状態を正確に伝えることが重要です。作業療法士は、あなたの生活を客観的に評価し、「できること」と「難しいこと」を整理した情報を提供できます。

「調子がいい日はできるけれど、悪い日は全くできない」といった波のある状態も、作業療法士の評価があれば、実態に即した申請につながりやすくなります。

よくある質問

Q. 制度を使うのに費用はかかりますか?

制度によって異なります。傷病手当金や障害年金の申請自体に費用はかかりません。介護保険サービスは原則1〜3割の自己負担がありますが、所得に応じた上限額が設定されています。自立支援医療を利用すれば、精神科の通院費を1割負担に軽減できます。

Q. 複数の制度を同時に使えますか?

はい、多くの場合は可能です。例えば、傷病手当金を受給しながら自立支援医療を利用したり、障害年金を受給しながら就労移行支援を利用したりできます。ただし、一部の制度には併給調整があるため、窓口で確認することをおすすめします。

Q. 家族が代わりに申請できますか?

多くの制度で家族による代理申請が可能です。特に本人が入院中や体調が不安定な場合は、ご家族が窓口に相談することをためらわないでください。委任状が必要な場合もありますので、事前に窓口に電話で確認しておくとスムーズです。

Q. 申請してからどのくらいで使えますか?

制度によって異なります。自立支援医療は申請当日から使えることもあります。介護保険の認定結果は申請から約1ヶ月かかりますが、認定前でも暫定的にサービスを利用開始できます。障害年金は審査に3〜4ヶ月程度かかることがあります。

まとめ

支援制度は「知っている人だけが使える」仕組みになっているのが現実です。しかし、これらの制度はすべて、病気やケガ、障害と向き合うあなたの暮らしを支えるためにあります。

すべてを一度に申請する必要はありません。まずは今いちばん困っていることに対応する制度から、一つずつ利用してみてください。

わからないことがあれば、市区町村の福祉窓口や地域包括支援センターに相談してみてください。そして、退院後の生活やリハビリに不安があれば、担当の作業療法士に「使える制度はありますか?」と聞いてみてください。作業療法士は、制度の情報を暮らしの中に落とし込むことが得意な専門家です。


免責事項: 当サイトの情報は2026年3月時点の一般的な制度概要を紹介するものであり、個別の受給可否を保証するものではありません。制度の詳細や最新の情報については、各窓口に直接お問い合わせください。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。