この記事のポイント
- 病気やケガのとき、使える支援制度は想像以上に多い
- 「あなたの状況」から使える制度を探せるマップを掲載
- 作業療法士は、制度を暮らしにつなぐ専門家として活用できる
はじめに ― なぜ「知らない制度」が多いのか
「こんな制度があったなんて知らなかった」――病気やケガ、介護に直面したとき、多くの方がそう感じます。
実は、日本には病気やケガ、障害、介護に関連する支援制度が数多く存在します。にもかかわらず、必要な人に届いていないことが少なくありません。
その理由はいくつかあります。
- 制度が縦割りになっている(医療・福祉・労働・年金がそれぞれ別の窓口)
- 申請しないと利用できない「申請主義」が基本
- 病気やケガの渦中にいると、制度を調べる余裕がない
- 制度の名称が専門的で、自分が対象かどうかわからない
この記事では、ご家族の状況に合わせて使える制度を探せるように、わかりやすく整理しました。すべてを一度に理解する必要はありません。今いちばん近い状況のところから、読んでみてください。
あなたの状況から探す制度マップ
まずは、今のあなたに近い状況を選んでください。該当するセクションから読み進めると、使える可能性のある制度がわかります。
仕事を休んでいる・退職した方
仕事を休んでいる、あるいは退職を余儀なくされた方が使える制度です。
| 制度 | 概要 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 傷病手当金 | 休職中の給与の約2/3を最長1年6ヶ月支給 | 健康保険加入の会社員 |
| 雇用保険(失業給付) | 退職後の生活費を支給 | 雇用保険加入者 |
| 障害年金 | 障害が残った場合に年金を受給 | 年金加入者 |
| 就労移行支援 | 就職に向けたトレーニングを受けられる | 18〜65歳の障害のある方 |
- 傷病手当金の申請を手伝う: ご本人が体調不良で動けないとき、申請書類の準備を手伝ってあげましょう。会社の人事部や健保組合に家族が電話で問い合わせることもできます
- 「働きたい」気持ちを否定しない: 焦りは禁物ですが、就労支援の制度があることを伝えるだけで安心につながります
身体の障害が残った方
脳卒中や事故などで身体に障害が残った方が使える制度です。
| 制度 | 概要 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 医療費助成・税減免・各種割引 | 一定の障害がある方 |
| 障害年金 | 障害等級に応じた年金支給 | 初診日に年金加入 |
| 補装具費支給 | 義肢・装具・車椅子等の費用支給 | 身体障害者手帳所持者 |
| 介護保険 | 訪問リハビリ・デイケア等 | 40歳以上(特定疾病)/65歳以上 |
- 退院前に自宅の環境を確認する: 段差や手すりの有無を写真に撮っておくと、訪問リハビリのスタッフとの相談がスムーズです
- 介護保険の申請は早めに: 認定に約1ヶ月かかるため、退院が見えたら早めに市区町村の窓口へ相談しましょう
精神疾患・メンタルヘルスの問題がある方
うつ病、統合失調症、双極性障害、不安障害などの方が使える制度です。
| 制度 | 概要 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 自立支援医療 | 通院医療費の自己負担を3割→1割に軽減 | 精神疾患で通院中の方 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 税減免・公共料金割引・就労支援 | 精神疾患が6ヶ月以上継続 |
| 障害年金 | 障害等級に応じた年金支給 | 初診日に年金加入 |
| 精神科デイケア | 日中の活動支援・社会復帰プログラム | 精神科に通院中の方 |
- 自立支援医療の申請を一緒にする: 通院費が3割から1割になる制度です。市区町村の障害福祉窓口で申請できます
- 通院を見守る: 体調が悪い日でも通院を続けることが大切です。送り迎えや声かけが支えになります
介護が必要になった方・その家族
ご自身やご家族に介護が必要になった場合に使える制度です。
| 制度 | 概要 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 介護保険 | 訪問介護・デイサービス・福祉用具貸与等 | 65歳以上/40歳以上の特定疾病 |
| 高額介護サービス費 | 月の自己負担が上限を超えた分を支給 | 介護保険利用者 |
| 介護休業給付金 | 介護のための休業中に給与の67%を支給 | 雇用保険加入の労働者 |
| 特別障害者手当 | 在宅で常時特別な介護が必要な方に月額約2.8万円 | 20歳以上の重度障害者 |
- 認定調査では「悪い日」の様子も伝える: 調子が良い日だけで判断されると、実態より軽い認定になることがあります。普段の困りごとをメモしておきましょう
- 介護休業給付金を忘れずに: 介護のために仕事を休む場合、給与の67%が支給されます。勤務先の人事部やハローワークに相談してみてください
- 自分自身の休息も大切に: 介護する側が倒れてしまっては元も子もありません。デイサービスやショートステイを活用して、休む時間をつくりましょう
子どもの発達・不登校に悩む方
お子さんの発達や学校生活に不安を感じている保護者の方が使える制度です。
| 制度 | 概要 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 児童発達支援 | 未就学児への療育サービス | 0〜6歳の障害のある子ども |
| 放課後等デイサービス | 放課後の療育・居場所支援 | 就学中の障害のある子ども |
| 特別児童扶養手当 | 障害のある子どもの養育者に月額約3.6〜5.4万円 | 20歳未満の障害児の養育者 |
| 教育支援センター(適応指導教室) | 不登校児童生徒の学習・相談支援 | 不登校の小中学生 |
- まず市区町村の窓口に相談する: 「うちの子に合う支援はありますか?」と聞くだけで大丈夫です。受給者証の申請方法も教えてもらえます
- お子さんの「できること」に目を向ける: 苦手なことばかり気になりがちですが、得意なことや好きなことが支援のヒントになります
経済的支援制度 ― お金の不安を軽くする
病気やケガの治療中に大きな不安となるのがお金の問題です。以下の制度で経済的な負担を軽減できる可能性があります。
傷病手当金
会社員や公務員が病気やケガで連続3日以上仕事を休んだ場合、4日目から最長1年6ヶ月、給与のおよそ3分の2が支給される制度です。
- 対象 — 健康保険(協会けんぽ・組合健保)の被保険者
- 条件 — 業務外の病気・ケガで労務不能、連続3日間の待期期間あり
- 申請先 — 加入している健康保険の保険者(会社の健保組合または協会けんぽ)
- 注意点 — 国民健康保険には原則としてこの制度がありません
障害年金
病気やケガにより生活や仕事に制限がかかる場合に受給できる年金制度です。障害等級(1〜3級)に応じて支給されます。
- 対象 — 初診日に国民年金または厚生年金に加入していた方
- 条件 — 初診日から1年6ヶ月後の「障害認定日」に一定の障害状態
- 申請先 — お住まいの年金事務所、または市区町村の国民年金窓口
- ポイント — 精神疾患(うつ病、統合失調症等)も対象になります。「障害年金=身体障害」ではありません
高額療養費制度
1ヶ月の医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。
- 対象 — すべての公的医療保険の加入者
- 上限額の目安 — 年収約370万円以下の場合、月額約57,600円
- 申請先 — 加入している健康保険の保険者
- ポイント — 事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、窓口での支払いが上限額までに抑えられます
自立支援医療(精神通院医療)
精神疾患の通院治療にかかる医療費の自己負担を3割から1割に軽減する制度です。
- 対象 — 精神疾患で継続的に通院が必要な方
- 条件 — 医師の診断書が必要
- 申請先 — お住まいの市区町村の障害福祉窓口
- ポイント — 薬局での薬代やデイケア利用料も対象。所得に応じた月額上限もあります
生活支援制度 ― 暮らしを支える
経済面だけでなく、実際の暮らしを支えるサービスも多くあります。
介護保険
40歳以上の方が利用できる、暮らしを支える総合的なサービス制度です。65歳以上は原因を問わず、40〜64歳は特定疾病(脳卒中、がん末期など16疾病)が原因の場合に利用できます。
主なサービス例:
| サービス種別 | 内容 | 頻度の目安 |
|---|---|---|
| 訪問リハビリテーション | OT・PTが自宅を訪問しリハビリ | 週1〜2回 |
| 通所リハビリ(デイケア) | 施設に通ってリハビリ | 週1〜3回 |
| 訪問介護(ヘルパー) | 入浴・食事・掃除等の生活援助 | 必要に応じて |
| 福祉用具貸与 | 車椅子・特殊寝台・歩行器等のレンタル | 継続 |
| 住宅改修 | 手すり設置・段差解消等(上限20万円) | 1回 |
利用開始までの流れ:
- お住まいの市区町村の介護保険窓口に要介護認定の申請
- 認定調査(調査員が自宅を訪問し、心身の状態を確認)
- 要支援1・2または要介護1〜5の認定結果を受け取り
- ケアマネジャーと相談し、ケアプランを作成
- サービスの利用開始
障害者総合支援法によるサービス
障害のある方の日常生活と社会参加を支援する制度です。身体・知的・精神障害、難病の方が対象です。
居宅介護(ホームヘルプ)
就労移行支援
就労継続支援(A型・B型)
グループホーム
日中活動支援
障害者手帳
障害者手帳を取得すると、さまざまな公的サービスや割引が利用できます。
| 手帳の種類 | 対象 | 主なメリット |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 身体機能に永続する障害 | 医療費助成、税控除、公共交通割引 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 精神疾患が6ヶ月以上 | 税控除、公共料金割引、就労支援 |
| 療育手帳 | 知的障害 | 税控除、各種福祉サービス |
手帳の取得は任意であり、取得したからといって不利益を受けることはありません。「手帳を持つこと」と「障害を受け入れること」は別のことです。制度を使うための道具として、必要に応じて検討してみてください。
相談窓口一覧 ― まずここに連絡を
「自分がどの制度を使えるかわからない」という方は、まず以下の窓口に相談してみてください。制度の専門家が、あなたの状況に合った支援を一緒に考えてくれます。
| 窓口 | 対応内容 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 市区町村の福祉窓口 | 障害福祉・介護保険・生活困窮 | お住まいの市区町村役場 |
| 地域包括支援センター | 高齢者の介護・生活全般の相談 | お住まいの地域の担当センター |
| 障害者相談支援事業所 | 障害福祉サービスの利用相談 | 市区町村に問い合わせ |
| 年金事務所 | 障害年金の申請相談 | 日本年金機構 |
| 協会けんぽ・健保組合 | 傷病手当金・高額療養費 | 保険証に記載の連絡先 |
| ハローワーク | 就職支援・雇用保険 | お住まいの地域のハローワーク |
相談のコツ: 「何を聞けばいいかわからない」と感じても大丈夫です。「病気で仕事を休んでいて、お金のことが不安です」「退院後の生活が心配です」など、困っていることをそのまま伝えるのが一番です。窓口の担当者が、あなたに合った制度を一緒に探してくれます。
作業療法士は「制度を生活につなぐ」専門家です
支援制度は「知っている」だけでは使えません。自分の生活のどこに制度を当てはめればいいのか、複数の制度をどう組み合わせればいいのか――ここが難しいところです。
作業療法士は、ご家族の「暮らし全体」を見ながら、制度を実際の生活につなぐお手伝いをしています。
作業療法士に相談するとこんなことができます
困りごとから制度を見つけてくれる「お風呂に一人で入れなくなった」と相談すると、手すりの設置(介護保険)、シャワーチェアのレンタル(福祉用具貸与)、入浴の練習(訪問リハビリ)など、複数の制度を組み合わせた解決策を提案してくれます。
申請に必要な情報を整理してくれる障害年金や介護認定の申請では、日常の状態を正確に伝えることが大切です。「調子がいい日はできるけれど、悪い日はまったくできない」といった波のある状態も、作業療法士が評価してくれると、実態に合った申請につながりやすくなります。
よくある質問
Q. 制度を使うのに費用はかかりますか?
制度によって異なります。傷病手当金や障害年金の申請自体に費用はかかりません。介護保険サービスは原則1〜3割の自己負担がありますが、所得に応じた上限額が設定されています。自立支援医療を利用すれば、精神科の通院費を1割負担に軽減できます。
Q. 複数の制度を同時に使えますか?
はい、多くの場合は可能です。例えば、傷病手当金を受給しながら自立支援医療を利用したり、障害年金を受給しながら就労移行支援を利用したりできます。ただし、一部の制度には併給調整があるため、窓口で確認することをおすすめします。
Q. 家族が代わりに申請できますか?
多くの制度で家族による代理申請が可能です。特に本人が入院中や体調が不安定な場合は、ご家族が窓口に相談することをためらわないでください。委任状が必要な場合もありますので、事前に窓口に電話で確認しておくとスムーズです。
Q. 申請してからどのくらいで使えますか?
制度によって異なります。自立支援医療は申請当日から使えることもあります。介護保険の認定結果は申請から約1ヶ月かかりますが、認定前でも暫定的にサービスを利用開始できます。障害年金は審査に3〜4ヶ月程度かかることがあります。
まとめ
- ご本人が動けないときは、家族が窓口に相談したり申請を代行できる
- まずはいちばん困っていることに対応する制度を1つだけ使ってみる
- 迷ったら市区町村の福祉窓口か地域包括支援センターに電話する
- 担当の作業療法士がいれば「使える制度はありますか?」と聞いてみる
- 保険証を手元に用意する: 保険証に記載されている保険者(協会けんぽ・健保組合)の連絡先が、傷病手当金や高額療養費の問い合わせ先です
- 困りごとを箇条書きにする: 「お金が不安」「退院後の生活が心配」「介護で疲れている」など、思いつくまま書き出してみましょう。窓口での相談がスムーズになります
- お住まいの地域包括支援センターを検索する: 「○○市 地域包括支援センター」で検索すると、担当の窓口が見つかります
免責事項: 当サイトの情報は2026年3月時点の一般的な制度概要を紹介するものであり、個別の受給可否を保証するものではありません。制度の詳細や最新の情報については、各窓口に直接お問い合わせください。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。