この記事のポイント
- 認知症の方の外出行動(徘徊)には、本人なりの理由や目的があります
- 行動を無理に止めるのではなく、背景を理解し「安全に歩ける環境」を整えることが大切です
- GPS機器や地域の見守りネットワークなど、複数の安全策を組み合わせましょう
「徘徊」という言葉が見落としていること
「徘徊」と言うと、目的もなくうろうろしているイメージがあるかもしれません。でも実は、ご本人なりの理由があることがほとんどです。
- 昔の家に帰ろうとしている(記憶の中の「家」に向かっている)
- 仕事に行こうとしている(働いていた頃の記憶が蘇っている)
- 落ち着かない、不安(今いる場所に安心感がない)
- 体を動かしたい(ずっと座っていることが不快)
ご本人にとっては「意味のある行動」なのです。それを理解した上で、安全に過ごせる工夫を考えることが大切です。
外出行動が起きやすい状況を知る
外出行動が起きやすいタイミングがあります。
- 夕方: 日が暮れる時間帯に「家に帰らなきゃ」と不安になる
- 環境が変わったとき: 引っ越しや入院の後
- することがないとき: 日中ずっとぼんやりしていた日
- 体の不快感があるとき: 便秘、痛み、暑さ・寒さ
- 叱られた後、否定された後
パターンがわかると、事前に防ぐ工夫ができるようになります。
夕方に落ち着かなくなる場合は、15時〜16時頃から好きだった音楽をかけたり、おやつの準備を一緒にしたりして、「楽しい活動」で気持ちを切り替える工夫が効果的です。暗くなる前に部屋の照明を明るくしておくことも助けになります。
外出行動への対応 ── やってはいけないこと・やってほしいこと
やってはいけないこと
注意
以下の対応は逆効果になることがあります。
- 鍵をかけて閉じ込める: パニックや不穏を助長し、窓から出ようとする危険がある
- 「ダメ」「どこに行くの!」と叱る: 本人の不安や混乱が増す
- 身体を無理に押さえる: 興奮状態を悪化させる
- 嘘をついて騙す: 信頼関係が損なわれる
やってほしいこと
- 話に合わせる: 「仕事に行く」と言われたら「お仕事ですか、今日はお休みの日ですよ」と穏やかに
- 一緒に歩く: 短い散歩に付き添い、自然に家に戻る
- 気をそらす: 「お茶を入れたので飲みませんか」と声をかける
- 体の不快をチェック: トイレ、お腹が空いていないか、暑くないかを確認
「止める」のではなく「安全に導く」と考えてみてください。
安全を守るための環境調整
家の中でできる工夫
- 玄関にセンサーチャイム: ドアが開いたら音で知らせてくれます
- 外出用の靴を隠す: 室内履きだけ見える場所に置く
- 玄関に鏡を置く: 鏡に映った自分を見て、立ち止まることがあります
- ドアノブにカバー: 開け方がわかりにくくなります
機器を活用する
- GPS端末: 靴の中に入れるタイプや首からかけるタイプがあります
- 見守りセンサー: ベッドから離れたり、玄関を通ったりすると通知が届きます
地域の力を借りる
- 地域包括支援センターに登録しておく
- 近所の方に事情を伝えておく: 見かけたら連絡をもらう
- 服の内側に名前と連絡先を縫い付けておく
GPS端末は「本人が身につけてくれるか」が最大のポイントです。首からかけるタイプを嫌がる方は多いので、靴のインソールに内蔵するタイプがおすすめです。自治体によっては購入費用の助成がありますので、地域包括支援センターに相談してみてください。
万が一のときの対応
外出してしまったときのために、事前に手順を決めておくことが大切です。
- まず自宅の周辺を確認(よく行く場所、昔の家の方向)
- 警察に連絡(早く届け出るほど見つかりやすくなります)
- 地域包括支援センターに連絡
- 最新の顔写真を準備しておく(日頃からスマートフォンで撮っておく)
見つかったときは、叱らずに「よかった、心配したよ」と伝えてください。
「歩くこと」自体を安全に楽しめる工夫
外出行動を完全に防ぐのではなく、「安全に歩ける機会」をつくることも大切です。
- 毎日の散歩を習慣にする(決まった時間、決まったルートで)
- デイサービスで歩く時間をつくってもらう
- 家の中で歩けるスペースを確保する
「歩きたい」という気持ち自体は自然なことです。それを安全に満たしてあげる工夫を考えてみてください。
ご家族の方へ ── 大切なポイントのまとめ
- 外出行動には本人なりの理由があります。「問題行動」と捉えず、背景を理解しましょう
- 閉じ込めたり叱ったりするのは逆効果です。話に合わせ、安全に導く対応を心がけてください
- GPS端末やセンサーチャイムなど、複数の安全策を組み合わせましょう
- 地域包括支援センターに登録し、近所の方にも事情を伝えておくと安心です
- 「安全に歩ける機会」を積極的につくることで、外出衝動が和らぐこともあります
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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