この記事のポイント
- 床ずれは「同じ姿勢で長時間圧迫される」ことで発生する。予防の基本は体位変換
- 2時間ごとの体位変換と、適切なクッションの使用が最も効果的な予防策
- 皮膚の観察を毎日行い、赤みが消えない場合は早期に専門家に相談する
床ずれはなぜできるのか
褥瘡(じょくそう)は、体重による持続的な圧迫で皮膚や皮下組織が虚血性壊死を起こす状態です。
褥瘡発生のメカニズムは以下の通りです。
- 圧迫: 体重が骨突出部に集中し、毛細血管が閉塞する
- ずれ力(shear force): 皮膚表面と深部組織のずれにより血管が損傷する
- 摩擦: 皮膚表面の損傷
- 湿潤: 汗や尿による皮膚の浸軟(maceraction)
好発部位は仙骨部、踵部、大転子部、坐骨結節部です。これらの骨突出部では、少ない面積に体重が集中するため、褥瘡が発生しやすくなります。
床ずれ(褥瘡)は、体の同じ場所が長時間圧迫され続けることで、皮膚やその下の組織が傷つく状態です。
褥瘡ができやすい場所は、骨が出っ張っている部分です。
- お尻の中央(仙骨部)── 仰向けで寝ているとき
- かかと ── 仰向けで寝ているとき
- 腰の横(大転子部)── 横向きで寝ているとき
- くるぶし ── 横向きで寝ているとき
これらの場所を定期的にチェックすることが大切です。
体位変換の基本
体位変換の頻度
エビデンスに基づくガイドラインでは、2時間ごとの体位変換が推奨されています。ただし、体圧分散マットレスを使用している場合は4時間まで延長できるとする報告もあります。
体位の種類
- 仰臥位(背臥位): 仙骨部・踵部に圧がかかる
- 30度側臥位: 大転子への圧迫を避けつつ、体圧を分散
- 90度側臥位: 大転子に圧が集中するため避けるべき
- 腹臥位: 可能な場合、仙骨部の除圧に有効
- セミファウラー位: 30度以上の頭部挙上はずれ力が増大するため注意
30度側臥位のつくり方
- 背部にクッションまたは枕を入れ、体幹を約30度傾ける
- 下側の肩を少し前に出す
- 上側の足の膝を軽く曲げ、足の間にクッションを挟む
- 大転子に圧がかかっていないことを確認する
何時間ごとに体の向きを変えればいいか
基本は2時間ごとです。ただし、特殊なマットレスを使っている場合は、もう少し間隔をあけられることもあります。OTやナースに確認してください。
体の向きの変え方
仰向けと横向きを交互に変えるのが基本です。
注意
横向きにするとき、真横(90度)にしないでください。腰の骨に体重が集中して、床ずれの原因になります。斜め30度くらいが安全です。
30度の横向きの作り方
- 背中にクッションを入れて、体を少し斜めに傾ける
- 両足の間にもクッションを挟む
- 腰の横の骨が圧迫されていないことを手で確認する
2時間ごとの体位変換は大変です。体圧分散マットレス(エアマットレス)を使えば、間隔を延ばせる場合があります。介護保険でレンタルできるので、ケアマネジャーに相談してみてください。
クッションの種類と使い方
クッションの種類
| 種類 | 特徴 | 適応 |
|---|---|---|
| ウレタンフォーム | 安価、加工しやすい | 一般的なポジショニング |
| ゲルクッション | 体圧分散性に優れる | 車椅子での座位保持 |
| エアクッション | 圧力調整可能 | 高リスク患者 |
| ビーズクッション | 体形にフィット | 関節拘縮がある場合 |
クッションの配置ポイント
- 仰臥位: 踵の下にクッションを入れ、踵を浮かせる(floating heel)
- 側臥位: 背部と足の間にクッションを配置
- 座位: 座面に体圧分散クッション、背部にも支持を入れる
- 骨突出部の直下にはクッションを置かない(ドーナツ型クッションは禁忌)
クッションにはいくつかの種類があります。
- ウレタンクッション: 一般的で使いやすい。体の下に敷いて圧力を分散
- ジェルクッション: 柔らかく、体の形に合わせてフィットする
- エアクッション: 空気の量で硬さを調整できる
- ビーズクッション: 体の形にぴったり合う
クッションの使い方のコツ
- かかとの下にクッションを入れて、かかとを浮かせる
- 横向きのとき、足の間にクッションを挟んでくるぶしを保護する
- ドーナツ型クッションは使わない(穴の周りに圧力が集中して逆効果です)
注意
ドーナツ型クッションは床ずれ予防によいと思われがちですが、穴の周囲に圧力が集中するため、逆効果です。使用は避けてください。
皮膚の観察ポイント
毎日の皮膚チェックが床ずれの早期発見に欠かせません。
- おむつ交換や入浴のときに、骨が出っ張っている部分を観察する
- 赤くなっている部分を見つけたら、指で軽く押してみる
- 押して白くなれば一時的な赤み(まだ大丈夫)
- 押しても赤みが消えなければ、床ずれの始まり(すぐに専門家へ)
褥瘡の早期発見には、ブランチテスト(指押し法)が有用です。発赤部位を指で3秒間圧迫し、解除後に白くならない(non-blanchable erythema)場合は、NPUAP分類のStage Iに該当します。
日常的な皮膚観察を介護者に指導し、早期の段階で報告してもらう体制を整えることが重要です。
体圧分散マットレスの選び方
在宅で使用する体圧分散マットレスは、褥瘡リスクに応じて選定します。
- 低リスク: 高密度ウレタンフォームマットレス
- 中リスク: 二層式エアマットレス
- 高リスク: 圧切替型エアマットレス(alternating pressure)
介護保険の福祉用具レンタル対象であり、月額数百円〜数千円で利用できます。
床ずれのリスクが高い方には、体圧分散マットレス(エアマットレスなど)の使用が推奨されます。
体圧分散マットレスは介護保険でレンタルできます。自己負担は月額数百円程度です。ケアマネジャーに相談すると、ご本人の状態に合ったものを選んでもらえます。
まとめ ── 床ずれ予防のポイント
- 2時間ごとの体位変換が基本。体圧分散マットレスがあれば間隔を延ばせる場合もあります
- 横向きは真横(90度)ではなく、30度の傾きで。腰の骨への圧迫を避けます
- かかとの下にクッションを入れ、かかとを浮かせましょう
- ドーナツ型クッションは逆効果。使用は避けてください
- 毎日の皮膚チェックで赤みを早期発見。消えない赤みは床ずれの始まりです
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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