この記事のポイント
- 育児と介護が同時に重なる「ダブルケア」は推定25万人以上が直面している
- 晩婚化・晩産化により、今後さらに増加が見込まれる社会的課題
- 作業療法士の視点から「やらなくていいこと」を見つけ、暮らしの優先順位を整理する方法を紹介
- 育児側・介護側それぞれで使える支援制度と相談先をまとめて解説
ダブルケアとは何か
ダブルケアとは、育児と介護が同時に重なっている状態のことです。推定25万人以上の方がこの状況に直面しています。
晩婚化・晩産化の影響で、30代〜40代の子育て中に親の介護が始まるケースが増えています。「どちらも中途半端になっている気がする」「自分の時間がまったくない」と感じていませんか。
作業療法士(OT)は、暮らし全体を見渡して「何を優先し、何を手放すか」を一緒に考えてくれる専門家です。
ダブルケア当事者が直面する困難
ダブルケアの大変さは、一つひとつのケアの負担だけではありません。複数の困難が同時に押し寄せることが、当事者を追い詰めます。
- 時間が足りない: 子どもの送迎と親の通院が重なり、やりくりが限界に
- 体がつらい: 抱っこと介助の繰り返しで、腰痛や疲労が慢性化する
- 自分を責めてしまう: 「どちらにも十分なことができていない」という罪悪感
- 相談相手がいない: ママ友に介護の話はしづらく、介護仲間に育児の話も合わない
- お金の不安: 介護費用と教育費が同時に発生する
これは作業バランスが大きく崩れた状態です。まずは「崩れている」と認識することが、立て直しの第一歩になります。
注意
ダブルケアの当事者はうつ病のリスクが高いことが報告されています。「最近、涙が止まらない」「何をしても楽しくない」「眠れない日が続いている」といった症状がある場合は、かかりつけ医や精神科への相談をためらわないでください。
暮らしの優先順位づけ ── 「やらなくていいこと」を見つける
「全部やる」をやめていい
ダブルケアの渦中にいると、「もっと頑張らなければ」と思いがちです。しかし、本当に必要なのは「やらなくていいこと」を見つけることです。
日々の活動を3つに分けてみてください。
- 必ずやること: やらないと安全や健康に直結するもの(子どもの食事、親の薬の管理など)
- 誰かに頼めること: 他の人やサービスに任せられるもの(掃除、買い物、送迎など)
- 今はやめること: この時期はやらなくてよいもの(完璧な手料理、季節の行事の準備など)
「手を抜く」のではなく「手を離す」と考えてみてください。全部を一人で抱える必要はありません。
紙を3つに区切り、「必ずやること」「頼めること」「今はやめること」を書き出してみてください。冷蔵庫に貼っておくと、忙しいときに「これは今日やらなくていい」と判断する助けになります。パートナーや家族と共有すれば、役割分担の話し合いもしやすくなります。
育児側で使える支援制度
育児の負担を軽くする制度はたくさんあります。知っているだけで、選択肢が広がります。
- 保育園の優先入所: 「親の介護をしている」ことが保育の必要性として認められる自治体が多いです。役所の保育課に相談してみてください
- ファミリーサポートセンター: 地域の方が子どもの送迎や預かりをしてくれる仕組みです。1時間数百円程度で利用できます
- 一時預かり: 保育園などで一時的に子どもを預かってもらえます。「介護の日だけ」という使い方もできます
- 子育てショートステイ: 数日間、施設で子どもを預かってもらえる制度です。介護が集中するときに使えます
介護側で使える支援制度
介護の負担を軽くする制度も積極的に活用しましょう。
- 介護保険サービス: 要介護認定を受けると、ヘルパーさんの訪問やデイサービスが使えます。ケアマネジャーに「育児もしている」と必ず伝えてください
- ショートステイ: 親を短期間施設に預かってもらえます。育児に集中したい時期や、自分の休息のために使えます
- 地域包括支援センター: 高齢者の総合相談窓口です。介護保険の申請から地域のサービス紹介まで対応してくれます。ダブルケアの相談も受け付けています
- 介護休業・介護休暇: 法律で認められた制度です。職場に相談してみてください
ケアマネジャーとの面談では、次の3つを伝えましょう。(1)「育児と介護を同時にしている」こと、(2) 子どもの保育園や学校の送迎時間、(3) 自分が特に大変な曜日や時間帯。これを伝えることで、デイサービスの曜日やヘルパーの訪問時間を育児スケジュールに合わせて調整してもらいやすくなります。
セルフケアの重要性 ── 自分のための時間を確保する
育児も介護も「自分を犠牲にして当然」と思っていませんか。
自分を大切にすることは、わがままではありません。むしろ、あなたが倒れたら育児も介護も立ち行かなくなります。自分のケアは、家族へのケアを続けるための土台です。
- 週に1回、30分でも「自分だけの時間」を確保する
- 完璧を目指さず、「今日はこれだけできた」と自分を認める
- 同じ立場の方とつながる(ダブルケアの当事者会やSNSのコミュニティなど)
- つらいときは、遠慮なく相談窓口に電話する
「自分の時間なんて取れない」という方へ。まずは5分だけ試してみてください。好きな飲み物をゆっくり味わう、窓の外をぼんやり眺める、好きな音楽を1曲聴く。たった5分でも「自分のための時間」があると、気持ちの余裕が少し戻ってきます。
相談先と支援ネットワーク
家族だけで抱え込まず、相談できる場所を知っておきましょう。
| 相談先 | 対象 | 内容 |
|---|---|---|
| 地域包括支援センター | 高齢者とその家族 | 介護全般の相談、介護保険の申請支援 |
| 子育て世代包括支援センター | 妊産婦・子育て家庭 | 育児全般の相談、支援制度の紹介 |
| 市区町村の福祉課 | すべての住民 | ダブルケアに関する横断的な相談 |
| 社会福祉協議会 | すべての住民 | ファミリーサポートや地域の支援情報 |
| よりそいホットライン | どなたでも | 0120-279-338(24時間無料) |
育児と介護の相談窓口は別々のことが多いのが現状です。まずはお住まいの市区町村の福祉課に「育児と介護の両方で困っている」と伝えてみてください。両方の制度を横断的に案内してくれる場合があります。
使える制度については支援制度まるわかりガイドもあわせてご確認ください。
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。