この記事のポイント
- ホームレス状態は「作業剥奪」──住居・仕事・人間関係など、意味ある活動のすべてが奪われた状態です
- 作業療法士はADLの回復、社会資源への接続、就労準備を通じて「暮らしの再構築」を支援します
- 英国・豪州など海外ではホームレス支援におけるOTの役割が確立されつつあり、日本での展開が期待されます
「作業」を奪われるということ
ホームレス状態にあるということは、住む場所がないだけではありません。入浴、食事、仕事、趣味、人とのつながり──日常生活のほぼすべてが失われている状態です。
作業療法の世界では、このような状態を「作業剥奪(さぎょうはくだつ)」と呼びます。作業療法士(OT)は、この状態から一つずつ「暮らし」を取り戻すお手伝いをする専門家です。
ホームレスに至る背景を理解する
ホームレス状態になる背景はさまざまです。
- 仕事を失った: リストラや病気で働けなくなった
- 住む場所を失った: 保証人がいない、家賃が払えなくなった
- 家族との関係が断たれた: 頼れる人がいなくなった
- 心の病気や依存症: 統合失調症やアルコール依存症などが未治療のままだった
これらが重なり合って、「一つの不幸が次の不幸を呼ぶ」悪循環に陥ってしまうのです。ホームレス状態は「自己責任」ではなく、適切な支援があれば回復できます。
OTの介入 ── 暮らしの再構築
OTはホームレス状態にある方の支援を、段階的に行います。
まずは信頼関係から
支援の第一歩は、「この人は信頼できる」と思ってもらうことです。OTは炊き出しや巡回活動に参加して、まずは顔を覚えてもらうところから始めます。
日常生活を取り戻す
住む場所が確保できたら、基本的な生活を立て直していきます。
- 入浴や洗濯の習慣を取り戻す
- 食事の準備を練習する
- 生活リズムを整える
- お金の管理を練習する
必要な支援につなげる
- 病気の治療が必要な場合は医療機関につなげます
- 生活保護や障害福祉サービスの手続きをサポートします
- 地域の居場所やサロンへの参加を促します
働く準備をする
生活が安定してきたら、働くための準備を始めます。時間を守る練習、身だしなみを整えること、人とのコミュニケーションの練習などを行い、就労支援機関と連携して仕事探しをサポートします。
ホームレス状態にある方やそのご家族は、お住まいの地域の福祉事務所や、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間無料)に相談できます。
海外の実践例に学ぶ
海外では、ホームレス支援にOTが積極的に関わっています。
- イギリス: 医療制度の中にホームレス支援チームが組み込まれ、OTが配置されています
- オーストラリア: OTの専門団体がホームレス支援の役割を公式に認めています
- アメリカ・カナダ: OTの新しい活動領域として注目されています
日本でもこうした取り組みが広がることが期待されています。
日本における課題と展望
日本では、ホームレス支援にOTが関わる機会はまだ少ないのが現状です。しかし、OTの「日常生活を取り戻す」という専門性は、ホームレス支援にとても役立つものです。
今後は、生活困窮者自立支援法に基づく支援の中でOTが活躍する場面が増えていくことが期待されています。
この記事のポイント ── まとめ
- ホームレス状態は住む場所だけでなく、日常生活のほぼすべてが失われた状態です
- OTはまず信頼関係を築き、日常生活の立て直しから段階的に支援します
- 医療機関や福祉サービスなど、必要な支援につなげるお手伝いもします
- 生活が安定したら、働くための準備も段階的にサポートします
- 困ったときは福祉事務所やよりそいホットライン(0120-279-338)に相談できます
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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