この記事のポイント
- 感覚ダイエットとは、子どもに必要な感覚刺激を日課の中に計画的に組み込む方法
- 7つの感覚系(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚・前庭覚・固有受容覚)のバランスを整えることで、覚醒レベルが安定する
- 朝・登校前・放課後・就寝前など、生活の場面ごとに取り入れられる具体的な活動がある
「感覚ダイエット」という考え方
「感覚ダイエット」という言葉を聞いたことはありますか? 食べ物の「ダイエット」とは違います。
食事のバランスを考えるように、お子さんに必要な感覚の刺激を、毎日の生活の中にバランスよく取り入れるという考え方です。
「落ち着きがない」「ぼーっとしている」「切り替えが苦手」。こうした様子の背景に、感覚の過不足があることがあります。適切な感覚刺激を生活に組み込むことで、お子さんが「ちょうどいい状態」で過ごしやすくなります。
作業療法士(OT)が、お子さん一人ひとりに合った感覚ダイエットのプログラムを考えてくれます。
7つの感覚系を知る
人間には7つの感覚があります。よく知られている5つに加えて、2つの「隠れた感覚」があります。
よく知られている5つは視覚(見る)・聴覚(聞く)・触覚(触れる)・味覚(味わう)・嗅覚(嗅ぐ)です。
そして、あまり知られていない2つがあります。
- 前庭覚(バランスの感覚): 頭の動きや傾きを感じる感覚。ブランコや滑り台で刺激されます
- 固有受容覚(力の感覚): 筋肉や関節にかかる力を感じる感覚。重いものを持ったり、ジャンプしたりすると刺激されます
この2つの「隠れた感覚」が、お子さんの「落ち着き」や「集中」に大きく関わっています。
覚醒レベルとは?
お子さんの状態を「車のエンジン」にたとえてみましょう。
- エンジンが低い: ぼんやりしている、動きが遅い、やる気が出ない
- エンジンがちょうどいい: 集中できている、落ち着いている
- エンジンが高い: そわそわ、興奮、じっとしていられない
感覚が敏感なお子さんや鈍感なお子さんは、この「エンジン」の調整が自分だけでは難しいことがあります。感覚ダイエットは、適切な感覚刺激でエンジンを「ちょうどいい」状態に整える方法です。
日課に組み込む感覚ダイエット ── 場面別の活動例
朝(目覚め・準備)
朝は「エンジンを上げる」活動がおすすめです。
- ストレッチ: 布団の上で体を伸ばす
- ジャンプ: その場で10回ジャンプ
- 壁押し: 両手で壁を10秒間グーッと押す
- 噛みごたえのある朝ごはん: リンゴ、パンの耳、グラノーラなど
朝ごはんによく噛む食べ物を取り入れるだけでも、目覚めの効果があります。
登校前
家を出る前に、こんな工夫ができます。
- リュックに少し重さを入れる: 水筒や本を入れて、適度な重さを感じながら歩く
- 歩いて登校する: 歩くこと自体が感覚の刺激になります
- 深呼吸: 玄関で3回大きく深呼吸してから出発
リュックの重さは意外と効果的です。適度な重さを背中に感じることで、体が安定し落ち着きやすくなります。ただし重すぎは禁物。体重の10%程度が目安です。
放課後
学校から帰ったお子さんは、感覚的に疲れていることがあります。
落ち着きたいときは:
- クッションに体をぎゅっと押しつける
- 毛布にくるまる
- 膝に重いクッションを載せる
発散したいときは:
- 公園でブランコ、鬼ごっこ
- 自転車に乗る
- 粘土や砂遊び
お子さんが帰宅後にまず静かな場所で一人になりたがる場合、それは「感覚の充電」をしているのかもしれません。無理に話しかけず、少し時間をあげてください。
就寝前
寝る前は「エンジンを下げる」活動がおすすめです。
- 布団サンドイッチ: 毛布で体をぎゅっと包む
- マッサージ: 肩や背中をゆっくりさすったり押したり
- お風呂: ぬるめのお湯にゆっくり浸かる
- 照明を落とす: 就寝30分前からテレビ・タブレットを消す
- ゆっくりした揺れ: 抱っこでゆらゆら、ロッキングチェア
重い毛布(ウェイテッドブランケット)は、体にやさしい重さがかかることで安心感が生まれ、眠りにつきやすくなるといわれています。
まずは1日の中で1〜2つの活動から始めてみましょう。
- 朝: ジャンプ10回 + 噛みごたえのある朝食
- 帰宅後: 公園で15分遊ぶ or 毛布にくるまって10分休む
- 寝る前: 布団サンドイッチ + マッサージ
お子さんの反応を見ながら、合うものを残し、合わないものは変えていきましょう。「正解」は一人ひとり違います。
感覚ダイエットの注意点
感覚ダイエットを試すときの注意点です。
- 合う・合わないは子どもによって違います: お子さんの反応をよく観察してください
- 回転する遊びは慎重に: くるくる回る遊びは刺激が強いので、やりすぎに注意。気持ち悪くなることがあります
- 触覚が敏感な子には予告を: 「背中をさするよ」と声をかけてから触れましょう
- 定期的に見直す: 成長とともに必要な刺激は変わります
注意
感覚ダイエットは万能な方法ではありません。お子さんの感覚の特性は一人ひとり異なります。インターネットの情報だけで自己流に実施せず、できればOTに相談して、お子さんに合ったプログラムを一緒に作ることをおすすめします。
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。