この記事のポイント
- きょうだい児は「寂しさ」「罪悪感」「将来へのプレッシャー」を抱えやすいが、自分から言い出せないことが多い
- 年齢によって反応が異なるため、発達段階に合わせた配慮が必要です
- 「きょうだいだけの時間」を意識的に作ることが、最も効果的な支援の一つです
見落とされがちな「きょうだい」の存在
障害のある子どもの支援において、きょうだい児(siblings)への配慮は見落とされがちです。
医療やリハビリの場面では、障害のある子ども本人と保護者が支援の対象になりますが、その兄弟姉妹の心理的ケアが十分に行われていないケースが少なくありません。
きょうだい児研究の第一人者であるDon Meyer氏は、きょうだい児を「忘れられた家族(forgotten family members)」と表現しています。OTとして、家族全体を見渡す視点からきょうだい児の支援を考えます。なお、障害のある子ども本人への作業療法の全体像は発達障害の子どもへの作業療法で詳しく解説しています。
障害のあるお子さんの兄弟姉妹のことを、「きょうだい児」と呼びます。
障害のあるお子さんのケアに時間とエネルギーを注いでいるうちに、きょうだいの気持ちに気づけなくなってしまうことがあります。きょうだい児は「忘れられた家族」と呼ばれることもあるほど、支援の手が届きにくい存在です。
でも、気づいた今からでも遅くありません。この記事では、きょうだい児が抱えやすい気持ちと、親御さんができる配慮についてお伝えします。
きょうだい児が抱えやすい感情
きょうだい児が経験しやすい心理的反応は、以下のように整理できます。
寂しさ・疎外感
親の関心や時間が障害のある子に集中するため、「自分は後回しにされている」と感じやすくなります。通院や療育の送迎で親が不在になる時間が長いことも、寂しさにつながります。
罪悪感
「自分は健康なのに申し訳ない」「きょうだいの障害は自分のせいでは」という不合理な罪悪感を抱くことがあります。特に幼少期は因果関係の理解が未熟なため、このような考えを持ちやすいです。
過剰な責任感・プレッシャー
「自分がしっかりしなければ」「親に迷惑をかけてはいけない」と感じ、「良い子」を演じる傾向があります。将来的にきょうだいの面倒を見なければならないという不安も生じます。
怒り・恥ずかしさ
きょうだいの障害に対する怒りや恥ずかしさを感じることがあり、そうした感情を持つこと自体にさらに罪悪感を覚えるという悪循環に陥ることがあります。
孤立感
「自分と同じ状況の子がいない」と感じ、周囲に話せない孤立感を抱えます。学校の友達にきょうだいのことを説明できず、距離を感じることもあります。
きょうだい児が心の中に抱えやすい気持ちを知っておきましょう。お子さん自身も、これらの気持ちをうまく言葉にできないことが多いです。
- 寂しさ: 「お母さん(お父さん)はいつもあの子のところにいる」「自分は後回し」と感じている
- 罪悪感: 「自分は元気なのに申し訳ない」「きょうだいの障害は自分のせいかも」と思ってしまう
- プレッシャー: 「自分はしっかりしないと」「迷惑をかけちゃいけない」と「良い子」を演じてしまう
- 怒り: きょうだいへの怒りを感じ、そう思う自分を責めてしまう
- 孤立感: 「同じ状況の子が周りにいない」「友達に話せない」と感じている
これらの感情は自然なものです
きょうだい児がこうした感情を持つことは、決して悪いことではありません。誰でもこのような状況に置かれれば同じように感じます。大切なのは、その気持ちを「話してもいい」と感じられる環境を作ることです。
年齢別にみるきょうだい児の反応
きょうだい児の反応は発達段階によって異なります。年齢に応じた理解と配慮が求められます。
幼児期(3〜6歳)
- 障害の理解が難しく、「自分のせいでこうなった」と考えることがある
- 赤ちゃん返りや攻撃的な行動で注目を引こうとする
- きょうだいの通院時に分離不安が生じる
学童期(7〜12歳)
- 障害について少しずつ理解するが、友達への説明に困る
- 「良い子」を演じて親に心配をかけまいとする
- 学校行事に親が来られないことへの寂しさ
思春期(13〜18歳)
- きょうだいの存在を友人に隠したい気持ちと罪悪感の葛藤
- 将来の介護責任への不安が具体化する
- 自分の進路選択に影響(「近くの大学に行かなければ」等)
きょうだい児の反応は、年齢によって異なります。
幼児期(3〜6歳ごろ)
- 障害のことがわからず、「自分が何かしたから?」と思うことがある
- 赤ちゃん返りをしたり、わざと困ることをして注目を引こうとする
小学生(7〜12歳ごろ)
- 少しずつ障害のことを理解するが、友達にどう説明するか悩む
- 親に心配をかけまいと「いい子」になろうとする
- 学校行事に親が来られないと寂しく感じる
中学生・高校生(13〜18歳ごろ)
- きょうだいのことを友達に言いたくない気持ちと、そう思う自分への罪悪感
- 「将来、自分がきょうだいの面倒を見なきゃいけないの?」という不安
- 進路選択への影響(「遠くの大学には行けない」など)
親ができる配慮 ── 5つのポイント
ポイント1: きょうだいだけの時間を作る
最も効果的で、最もシンプルな支援は、きょうだい児と親が1対1で過ごす時間を作ることです。
- 週に1回、30分でもよい
- 特別なことをする必要はない(一緒に散歩、買い物、おやつを食べるなど)
- 「あなたのための時間」であることを明確に伝える
この時間は、きょうだい児にとって「自分は大切にされている」と実感できる貴重な機会です。
最も効果的なのは、きょうだいと親が2人だけで過ごす時間を作ることです。
- 週に1回、30分でもかまいません
- 特別なことをしなくても大丈夫です(一緒に散歩する、おやつを食べるなど)
- 「今日はあなたとの時間だよ」と伝えてあげてください
「余裕ができたら」と思っていると、なかなか時間は作れません。カレンダーに「きょうだいタイム」と書き込んで、予定として確保しましょう。短い時間でも、定期的であることが大切です。
ポイント2: 感情を否定しない
きょうだい児が怒りや寂しさを表現したとき、その感情を否定しないことが重要です。
- ×「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから我慢して」
- ×「そんなこと言わないで」
- ○「寂しかったんだね」
- ○「怒りたくなる気持ち、わかるよ」
ネガティブな感情を表出できる安全な場を家庭の中に作ることが、きょうだい児の心理的健康を守ります。
きょうだい児が怒りや寂しさを口にしたとき、その気持ちを否定しないでください。
- ×「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから我慢して」
- ×「そんなこと言わないの」
- ○「寂しかったんだね」
- ○「怒りたくなる気持ち、わかるよ」
気持ちを受け止めてもらえた経験が、お子さんの心を守ります。
ポイント3: 障害について正直に説明する
きょうだい児の年齢に応じて、障害について正直に、わかりやすく説明することが大切です。
- 幼児期: 「○○ちゃんは体の△△が動きにくいから、お手伝いが必要なんだよ」
- 学童期: 障害名とその特徴を簡潔に説明する
- 思春期: 将来の見通し(支援制度やグループホームなど)を含めて話す
情報がないことが不安を大きくします。「何を聞いてもいいよ」という姿勢を示すことが重要です。
きょうだい児の年齢に合わせて、障害のことを正直に、わかりやすく伝えてください。
- 小さい子には: 「○○ちゃんは体の△△が動きにくいから、お手伝いが必要なんだよ」
- 小学生には: 障害の名前や特徴をやさしく説明する
- 中高生には: 将来の見通し(使える制度やサポートなど)も含めて話す
わからないことが不安を大きくします。「何でも聞いていいよ」と伝えてあげてください。親御さん自身が障害の特性を理解しておくと説明しやすくなります。たとえばADHDの子どもへの対応の工夫や自閉スペクトラム症の「感覚の世界」も参考にしてください。
ポイント4: 過度な役割を担わせない
きょうだい児に「小さな介護者」の役割を過度に担わせない配慮が必要です。
- お手伝いをお願いするのは適度に(年齢相応の範囲で)
- 「やらなければならない」ではなく「やってくれるとうれしい」という伝え方を
- きょうだい児自身の予定(友達との遊び、部活など)を優先してよいことを伝える
ヤングケアラーの問題にもつながるため、きょうだい児の負担には十分な注意を払います。
きょうだい児に介護やお世話の役割を背負わせすぎないよう気をつけましょう。
- お手伝いは年齢に合った範囲で
- 「やらなきゃダメ」ではなく「やってくれたらうれしいな」と伝える
- きょうだい自身の予定(友達との遊び、部活など)を優先してよいと伝える
ヤングケアラーに注意
きょうだいのケアを日常的に担っている子どもは「ヤングケアラー」に該当する場合があります。お子さんが自分の時間を持てているか、学校生活に支障が出ていないか、定期的に確認してください。
ポイント5: きょうだい支援の場につなぐ
同じ立場のきょうだい児と出会えるシブリングサポートの場が全国に広がっています。
- しぶたね(NPO法人しぶたね): 病気や障害のあるきょうだいを持つ子どものための活動を全国展開
- きょうだい会: 成人したきょうだい児のための自助グループ
- シブリングサポーター研修: 支援者向けの研修プログラム
「同じ経験をしている子がいる」と知ること自体が、きょうだい児の孤立感を大きく和らげます。
同じ立場の子どもたちと出会える場があります。
- しぶたね(NPO法人しぶたね): 全国できょうだい児向けのイベントや活動を行っています
- きょうだい会: 大人になったきょうだい児のためのグループもあります
「同じ気持ちの子がいるんだ」と知るだけで、お子さんの心が軽くなることがあります。お住まいの地域で活動があるか、調べてみてください。
OTの視点からのきょうだい児支援
OTはきょうだい児支援において、以下の視点から貢献できます。
家族全体の作業バランスの評価
家族一人ひとりの作業バランスを評価し、きょうだい児が過度な負担を抱えていないか確認します。きょうだい児自身の「遊び」「学び」「休息」の時間が確保されているかを重視します。
療育場面でのきょうだい児の参加
障害のある子の療育にきょうだい児を巻き込むことで、きょうだいの理解を深める機会を作ります。一緒に遊ぶ活動を通じて、自然な形できょうだい関係を育むことができます。
環境調整
家庭内の物理的・時間的環境を調整し、きょうだい児が「自分のスペース」「自分の時間」を持てるよう提案します。
保護者への支援
保護者自身がきょうだい児のケアに目を向ける余裕を持てるよう、介護負担の軽減や支援サービスの活用を提案します。
OT(作業療法士)は、きょうだい児の支援にも関わることができます。
- 家族全体のバランスを見る: きょうだい児が遊びや休息の時間を持てているか確認します
- きょうだいで一緒にできる活動の提案: 療育の場面にきょうだいが参加できる機会を作ります
- 家庭環境の調整: きょうだい児が「自分のスペース」を持てるよう提案します
- 親御さんへのサポート: 親御さん自身に余裕を持ってもらうための工夫を一緒に考えます
きょうだい児は「支援の対象」として見落とされがちですが、家族支援においてOTが果たすべき重要な役割の一つです。障害のある子どもだけでなく、家族全員の「暮らし」を見渡す視点が、作業療法の強みです。
きょうだい児の支援についてのまとめ
- きょうだい児は寂しさ・罪悪感・プレッシャーを抱えやすいですが、自分から言い出せないことが多いです
- 年齢に応じた説明と配慮が必要です。「何を聞いてもいいよ」という姿勢を示しましょう
- きょうだいだけの時間を週1回でも作ることが、最も効果的な支援の一つです
- 怒りや寂しさを表現したとき、その気持ちを否定しないでください
- しぶたね等のシブリングサポートの場で、同じ立場の子と出会える機会があります
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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