本文へスキップ
作業療法.net
家族支援#家族支援#作業療法#メンタルヘルス

脳卒中後に「やる気が出ない」ご家族へ

脳卒中後の「やる気が出ない」は甘えではなく脳の変化が原因。うつとアパシーの違い、家族が気づくサイン、声かけのコツを作業療法士の視点から解説します。

📅 2026年5月26日 更新読了目安 15分

この記事のポイント

  • 脳卒中後に約30%の方がうつを経験します。「やる気が出ない」は甘えではなく脳の変化が原因です
  • うつとアパシー(意欲低下)は似ていますが異なる状態で、対応も変わります
  • 「頑張って」は逆効果になることがあります。活動を通じた段階的なアプローチが効果的です

「なぜリハビリを頑張ってくれないの」── その疑問の答え

脳卒中の後、「やる気が出ない」「何もしたくない」と言うご家族を見て、「なぜ頑張ってくれないの」と感じていませんか。

実は、脳卒中後に約30%の方が「うつ」を経験すると報告されています。これは「甘え」や「怠け」ではなく、脳の変化が原因で起こるものです。

作業療法士(OT)は、活動を使って少しずつやる気を引き出すアプローチを専門としています。

脳卒中後うつとアパシーの違い

「やる気が出ない」状態には、実は2つの種類があります。

うつ ── 「つらい」「悲しい」と感じている

  • 気分が落ち込み、悲しい気持ちが続く
  • 「自分はだめだ」「迷惑をかけている」と思ってしまう
  • 眠れない、食欲がないなどの体の変化もある

アパシー ── 「何も感じない」「何もしたくない」

  • 自分から何かしようとしない
  • 喜びも悲しみも感じにくくなっている
  • 以前好きだったことにも興味を示さない

2つの大きな違いは、うつの場合は「つらい」という苦しさがあるのに対し、アパシーの場合は本人が困っているように見えないことです。どちらも脳の変化が原因であり、本人の意志の問題ではありません。

家族が気づくサイン

以下のようなサインが2週間以上続く場合は、担当の医師やOTに相談してください。

  • リハビリを嫌がるようになった
  • 「どうせ良くならない」と繰り返し言う
  • テレビや好きだったことに興味を示さない
  • 表情が乏しくなった
  • 食事の量が明らかに減った
  • 夜眠れない、または日中ずっと寝ている
  • 「死にたい」「いなくなりたい」という言葉が出る

「死にたい」という発言があった場合

「死にたい」「いなくなりたい」という発言があった場合は、すぐに主治医に伝えてください。これは緊急のサインです。話を否定したり叱ったりせず、「そう感じているんだね」と受け止めたうえで、速やかに専門家につないでください。

「頑張って」はなぜ逆効果なのか

ご家族としては「頑張って」と励ましたくなりますが、うつやアパシーの状態では逆効果になることがあります。

  • うつの方はすでに「頑張れない自分」を責めています。「頑張って」は「まだ足りない」と受け取られてしまいます
  • アパシーの方はやる気の仕組みそのものが障害されているため、「頑張って」と言われてもどうしていいかわかりません

代わりにこんな声かけを

  • 「そばにいるよ」 ── 存在そのものを伝える
  • 「つらいんだね」 ── 気持ちを受け止める
  • 「今日は一緒に〇〇してみない?」 ── 具体的で小さな提案
  • 「昨日より〇〇ができたね」 ── 小さな変化に気づいて伝える
ご家庭でできること

「頑張って」→「そばにいるよ」。「リハビリしないと」→「今日は一緒に散歩でもする?」。「なんでやらないの」→「つらいときは休んでいいよ」。声かけを少し変えるだけで、ご本人の受け取り方が大きく変わります。完璧な言葉を探す必要はありません。「あなたのことを気にかけている」という気持ちが伝われば十分です。

作業療法士のアプローチ

OTは「まずやる気を出してからリハビリ」ではなく、「活動をすることで少しずつやる気が出てくる」という考え方でアプローチします。

小さな活動から始める

  • 好きだったことや、少しでも興味がありそうなことから始めます
  • 5分程度の短い活動から始め、少しずつ時間を延ばしていきます
  • 「できた」と感じられる課題を選びます

役割を見つける

  • 「自分には役割がある」と感じることで意欲が生まれます
  • お孫さんに絵を描いてあげる、植物の水やりをするなど、小さな役割から始めます

ご家族と一緒に取り組む

  • ご家族に声かけの方法や関わり方のコツを伝えます
  • 自宅での過ごし方を一緒に考えます
  • 困ったことがあれば、いつでも相談できます

家族自身のケアも大切です

「やる気が出ない」ご家族を支えるのは、とても大変なことです。

  • 一人で抱え込まないでください。担当のOTや医師に、ご自身のつらさも伝えてください
  • 同じ経験をしている方と話せる家族会への参加も助けになります
  • 介護から離れる時間を意識的につくりましょう。休むことは「サボり」ではありません

ご家族が元気でいることが、ご本人にとっても大きな支えになります。


ポイント

免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。

関連記事