この記事のポイント
- 切断の原因は外傷・糖尿病・がんなどさまざまで、義肢の種類も能動義手・筋電義手・装飾義手など多岐にわたります
- 作業療法士は義手操作訓練・ADL訓練・ファントムペイン対処を通じて、日常生活の再建を支援します
- 義肢を「使いこなす」だけでなく、義肢なしでも生活できる方法を含めた柔軟な支援を行います
切断という現実と、その先にある暮らし
手や足を失うことは、ご本人にとってもご家族にとっても、大きな衝撃です。しかし、切断は「終わり」ではなく、新しい暮らし方の「始まり」でもあります。
切断の原因はさまざまです。糖尿病による血流障害、事故、がんの治療など、いろいろなケースがあります。どのような理由であっても、作業療法士(OT)が義手や義足を使った日常生活の再建をサポートします。
義肢の種類を知る
義肢(ぎし)にはいくつかの種類があります。
義手の主な種類
- 能動義手: 肩や腕の動きを使って手先を開閉する義手です。比較的シンプルで丈夫です
- 筋電義手: 腕の筋肉の微弱な電気信号で動く義手です。より細かい動きができます
- 装飾義手: 見た目を自然に近づけることを目的とした義手です
義足について
義足は切断した位置によって形が異なります。OTは義足を着けた状態での着替えや入浴など、日常生活の動作を練習するサポートをします。歩く練習は理学療法士(PT)が主に担当します。
義手訓練 ── OTの専門領域
義手を使いこなすには、段階的な練習が必要です。OTが一つずつ丁寧にサポートします。
まずは断端(切断した部分)のケアから
手術の後、まずは切断した部分(断端)のケアから始めます。むくみを取り、形を整え、触れられることに慣れていきます。
義手の操作を練習する
義手の着け外しから始まり、手先を開いたり閉じたりする基本操作、そして実際の生活場面での使い方へと段階的に進みます。
両手を使う動作の練習
片方の手を失った場合、もう片方の手を中心に、義手を補助として使う方法を練習します。紙を押さえて字を書く、ビンのフタを開けるなど、日常的な動作を一つずつ練習していきます。
最初から完璧を目指す必要はありません。まずは「できそうなこと」から始めて、少しずつレベルを上げていくのがコツです。ご家族も一緒に練習に参加すると、ご本人の励みになります。
ADL訓練 ── 義肢がなくてもできることを増やす
OTは義手や義足を使った練習だけでなく、義手・義足を外しているときの生活の工夫も教えてくれます。入浴やお休みの際は義肢を外すことが多いため、どちらの場面でも生活できるようにすることが大切です。
- 便利な道具の紹介: 片手で使えるまな板、吸盤付きブラシなど、暮らしを助ける道具はたくさんあります
- 着替えの工夫: 片手でも着脱しやすい服の選び方や、ボタンの代わりにマジックテープを使う工夫などを提案します
- 安全な入浴方法: 義足を外した状態でも安全に入浴できるよう、シャワーチェアの活用法などを指導します
ファントムペイン(幻肢痛)への対処
切断した後、もう存在しないはずの手や足に痛みを感じることがあります。これを幻肢痛(げんしつう)といいます。多くの方が経験するもので、決して「気のせい」ではありません。
OTは以下のような方法で幻肢痛の軽減をサポートします。
- ミラーセラピー: 鏡を使って脳に「手足がある」という情報を送り、痛みを和らげる方法です
- 断端のマッサージ: 切断した部分を優しくマッサージすることで感覚を整えます
- 好きな活動に集中する: 何かに集中していると痛みが和らぐことがあります
ヒント
幻肢痛がつらい場合は、遠慮なく主治医に相談してください。お薬による治療とリハビリを組み合わせることで、痛みを軽減できることが多いです。
「気のせいだよ」と言わず、痛みを認めてあげてください。断端を温めたり、軽くさすったりすることで楽になることがあります。ただし、主治医やOTに相談してから行ってください。
社会復帰 ── 仕事・趣味・コミュニティへ
義手や義足を使った生活に慣れてきたら、仕事や趣味、社会活動への復帰を考えていきます。
- 仕事への復帰: OTが仕事に必要な動きを分析し、義肢を使って仕事ができるよう訓練します。職場の環境調整についてもアドバイスします
- スポーツや趣味: 義足ランニングや水泳など、切断後も楽しめるスポーツはたくさんあります
- 車の運転: 義手や義足での運転が可能かを評価し、必要な車の改造を提案してくれます
- 仲間との出会い: 同じ経験をした方々との交流の場(ピアサポート)も紹介してもらえます
ご本人・ご家族の方へ ── 大切なポイントのまとめ
- 義手や義足は種類が多く、ご本人の生活に合ったものを選ぶことが大切です
- 義手の操作は段階的に練習します。焦らず一つずつできることを増やしていきましょう
- 義肢を外しているときの生活の工夫も大切です。便利な道具がたくさんあります
- 幻肢痛は「気のせい」ではありません。つらいときは遠慮なく医師やOTに相談してください
- 仕事やスポーツ、運転など、切断後も多くの活動に挑戦できます
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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