この記事のポイント
- 多発性硬化症(MS)の疲労は通常の疲れとは異なる「中枢性疲労」で、休んでも回復しにくい特徴があります
- エネルギー保存の4P(計画・ペース配分・優先順位・姿勢)を活用して、限られたエネルギーを賢く使います
- 暑さに弱い「ウートフ現象」への対策として、体温管理が日常生活の質を大きく左右します
多発性硬化症(MS)の疲労は「普通の疲れ」ではない
多発性硬化症(MS)の方が抱える疲労は、普通の「疲れ」とはまったく違います。
- 突然やってくる: 「電池が切れたように」急に動けなくなります
- 休んでも回復しにくい: 一晩寝ても疲れが取れないことがあります
- 暑いと悪化する: お風呂や夏の暑さで症状が一時的にひどくなります
- 頭も疲れる: 考える力や集中力も低下します
この疲労は「怠けている」のではなく、脳の中で起きている神経の問題です。周囲の理解がとても大切です。
注意
「がんばれば大丈夫」「気合いが足りない」は禁句です。MS の疲労は意志の力で乗り越えられるものではありません。ご本人が「疲れた」と言ったら、それは本当に限界のサインです。
エネルギー保存の4P
限られたエネルギーを賢く使うための4つの工夫を紹介します。
1. 計画する(Planning)
- 1日の「エネルギー通帳」をイメージしてください。使えるエネルギーには限りがあります
- 大変な活動(お風呂、買い物など)は元気な午前中に行う
- 「今日やらなくてもいいこと」を決めることも大切です
2. ペースを配る(Pacing)
- 30分活動したら15分休むなど、こまめに休憩を入れる
- 疲れてから休むのではなく、疲れる前に休むのがコツ
- 掃除は一度にやらず、今日はリビング、明日はキッチン、と分けて行う
3. 優先順位をつける(Prioritizing)
- やることを「必須」「重要」「できれば」に分ける
- やらなくてもいいことは思い切ってやめる
- 「やりたいこと」にエネルギーを残すことを大切にする
4. 姿勢を工夫する(Positioning)
- 立ってやらなくていい作業は座ってやる(料理、アイロンがけ)
- 重い物は持ち上げず、滑らせる・転がす
- 作業台の高さを調整して、無駄な力を使わないようにする
1日のエネルギーを10ポイントとして、各活動に何ポイント使うか書き出してみてください。例: 入浴=3ポイント、買い物=3ポイント、料理=2ポイント。合計が10を超えないように計画すると、夕方にエネルギーが残ります。
ウートフ現象と温度管理
暑さに注意が必要です
MSの方は、体温が少し上がるだけで症状が一時的に悪化することがあります。これをウートフ現象と言います。
温度管理のコツ
- お風呂: ぬるめ(38〜39℃)で短時間に。シャワー椅子を使うと楽です
- 夏の外出: 冷却ベスト、ネッククーラー、日傘を活用する
- 室内: エアコンを我慢しない。25℃前後に設定しましょう
- 料理: 火を使わないメニュー(電子レンジ調理)を活用する
ヒント
ウートフ現象で症状が悪くなっても、体温が下がれば元に戻ります。「悪化した!」と慌てず、涼しい場所で休みましょう。ただし、数日以上症状が続く場合は再発の可能性があるため、主治医に相談してください。
活動ペーシングの実践例
1日のスケジュールの例
- 午前中: 元気なうちに大変な活動(入浴、買い物)を済ませる
- 午後: 30分〜1時間の昼寝を取り入れる
- 夕方以降: 軽い活動にとどめる
疲労日記のすすめ
毎日、疲れの程度を10段階で記録してみてください。「何をしたら疲れやすいか」「何時頃疲れが出るか」のパターンが見えてきます。
MSの疲労管理で大切なポイント
- MSの疲労は「怠け」ではなく、脳の中で起きている神経の問題です。周囲の理解が大切です
- エネルギー保存の4P(計画・ペース・優先順位・姿勢)を活用して、限られたエネルギーを賢く使いましょう
- 「疲れる前に休む」が鉄則。こまめな予防的休息を習慣にしてください
- 暑さで症状が悪化する「ウートフ現象」に注意。エアコンや冷却グッズを活用しましょう
- 作業療法士と一緒に、あなたに合ったエネルギー管理プランを作りましょう
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士(OTR)
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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