この記事のポイント
- 手の腱損傷は、手術後のリハビリの進め方が回復の質を大きく左右します
- スプリント(装具)で腱を保護しながら、段階的に指を動かす訓練を行います
- 回復には3〜6か月かかりますが、焦らず段階を踏むことが最も大切です
手の腱とは
腱(けん)は、筋肉と骨をつなぐひも状の組織です。手には指を曲げるための腱(手のひら側)と、指を伸ばすための腱(手の甲側)があります。
ガラスや刃物で手を切ったときや、スポーツ中のけがで腱が切れてしまうことがあります。腱が切れると、指が思うように動かせなくなります。
手の腱の治療とリハビリは専門的な知識が必要で、ハンドセラピストと呼ばれる手の専門の作業療法士(OT)が担当します。
手術後のリハビリの流れ
手の腱の手術後は、段階を踏んでリハビリを進めることがとても大切です。早すぎると修復した腱が再び切れるリスクがあり、遅すぎると腱が周囲の組織にくっついて(癒着)動きが悪くなります。
回復の4つの段階
- 保護期(手術後〜4週間): スプリント(装具)をつけて腱を守りながら、OTの指導のもとで小さな動きを始めます
- 段階的運動期(4〜8週間): スプリントの使用を徐々に減らし、自分の力で指を動かす練習を増やします
- 抵抗運動期(8〜12週間): 軽い物を握る練習など、少しずつ力を使う練習を始めます
- 復帰期(12週間〜6か月): 日常生活の動作を段階的に再開し、仕事やスポーツへの復帰を目指します
注意
回復の段階を自己判断で飛ばさないでください。「もう大丈夫そう」と感じても、腱の強度が十分に回復していない時期に無理をすると、再断裂のリスクがあります。必ずOTや主治医の指示に従いましょう。
スプリント(装具)の役割
スプリントは、手術で修復した腱を守るための装具です。OTがプラスチックの素材を使って、一人ひとりの手の形にぴったり合わせて作ります。
スプリントの役割は3つあります。
- 腱を守る: 修復した腱に無理な力がかからないようにします
- 正しい位置を保つ: 指や手首を適切な角度に保ちます
- 安全に動かす: 保護しながら、リハビリに必要な動きを可能にします
スプリントは通常4〜8週間つけておく必要があります。つけたり外したりする方法、お手入れの仕方はOTがくわしく教えてくれます。
スプリントは水に濡らしたら柔らかい布で拭いて乾かしましょう。熱いお湯や直射日光に当てると変形することがあるので注意してください。かゆみや痛みを感じたら、我慢せずにOTに相談してください。
日常生活での注意点
手術後〜4週間:術側の手は使わない時期
- スプリントをつけたまま生活します(お風呂のときだけ外します)
- けがをした手は使わず、反対の手だけで生活します
- 着替えは、けがをした側の腕から先に通し、脱ぐときは反対側から
4〜8週間:少しずつ使い始める時期
- コップや歯ブラシなど、軽い物を持つことから始めます
- 包丁や鍋など力が必要な動作はまだ控えます
8〜12週間:力を使う動作を再開する時期
- ペットボトルのふた開けや箸の使用を少しずつ再開します
- 食器洗いや掃除機がけなど、軽い家事が可能になります
12週間以降:ほとんどの動作が可能に
- 日常生活の多くの動作ができるようになります
- 重い物を持つ作業は6か月くらいを目安に段階的に再開します
OTから教わった指の運動は、1回に長時間やるよりも、1日に何度か短い時間で行うほうが効果的です。朝・昼・晩の食後など、時間を決めておくと忘れにくくなります。
回復を妨げる要因と対処法
回復がうまくいかないと感じたら
リハビリの過程で、以下のようなことが起きる場合があります。
- 指の動きが思ったほど回復しない: 腱が周りの組織にくっついている(癒着)可能性があります。OTに相談して、運動の方法を見直しましょう
- 再び腱が切れた感じがする: 急に指が動かなくなった場合は、すぐに病院に連絡してください
- 指が硬くて動きにくい: 関節が硬くなっている可能性があります。OTが改善のための訓練やスプリントを調整します
手が思うように使えないことで気持ちが落ち込むのは自然なことです。回復には時間がかかりますが、OTと一緒に一歩ずつ進めていきましょう。
ヒント
手の腱損傷のリハビリは、けがの種類や手術の方法によって進め方が異なります。この記事で紹介した期間はあくまで目安です。実際のリハビリは、担当のOTや主治医と相談しながら進めてください。
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。