この記事のポイント
- 熱傷(やけど)は深度によって治療方針が異なり、深い熱傷ほど瘢痕拘縮のリスクが高まります
- 作業療法士は圧迫療法・スプリント・ROM訓練を組み合わせ、瘢痕拘縮を予防しながらADL再獲得を支援します
- 外見の変化に対するアピアランスケアと心理的サポートも、作業療法士の重要な役割です
やけどの治療とリハビリは「暮らし」につながっている
やけど(熱傷)は、日常生活の中で誰にでも起こりうるけがです。軽いやけどなら外来治療で治りますが、重いやけどでは長期の入院治療とリハビリテーションが必要になります。
やけどの治療で大切なのは、傷を治すだけではありません。傷跡が硬くなって関節が動きにくくなること(拘縮)を防ぎ、日常生活を取り戻すことが重要です。作業療法士(OT)は、この過程をサポートする専門家です。
熱傷の深度と治療の基礎知識
やけどには「深さ」があり、深いやけどほど治療が長くなり、傷跡が残りやすくなります。
- 浅いやけど: 赤くなる程度で、数日で治ります
- 中程度のやけど: 水ぶくれができ、1〜4週間かかります
- 深いやけど: 皮膚の全層が損傷し、植皮術(しょくひじゅつ)が必要になることがあります
深いやけどほど、傷跡が硬く縮んで関節が動きにくくなる「拘縮」のリスクが高まります。だからこそ、早い段階からのリハビリが大切です。
瘢痕拘縮の予防 ── OTの中核的役割
深いやけどの後、傷跡が硬く縮んで関節が動きにくくなることを瘢痕拘縮(はんこんこうしゅく)といいます。OTはこれを防ぐために、3つの方法を組み合わせます。
- 圧迫療法: 傷跡を押さえる専用の衣類(ガーメント)を長時間着用し、傷跡が盛り上がるのを防ぎます
- スプリント療法: 関節が曲がったまま固まらないように、専用の装具(スプリント)を作ります
- 関節を動かす訓練: 傷跡が硬くなる前から、少しずつ関節を動かす練習をします
お風呂に入ると傷跡がやわらかくなるため、入浴中や入浴直後は関節を動かす練習がしやすくなります。主治医やOTに許可をもらったうえで、お風呂の時間を上手に活用してみてください。
ADL支援 ── 日常生活を取り戻すために
やけどの後は、これまで当たり前にできていた日常の動作が難しくなることがあります。OTは一人ひとりの状況に合わせて、日常生活を取り戻すサポートをします。
- 手の動き: 食事、歯みがき、字を書くなどの動作を少しずつ練習します。必要に応じて使いやすい道具も提案します
- 着替え: 傷跡を圧迫するガーメントの着脱を含め、着替えの練習をします
- 入浴: 保湿剤を塗ったり、傷跡をマッサージしたりする方法もお伝えします
傷跡のある部位は圧迫ガーメントを着けていることが多いため、その上に着る服は伸縮性のある素材や、前開きのタイプが便利です。OTに相談すると、具体的なアドバイスがもらえます。
心理的ケアとアピアランスケア
やけどの後は、体の傷だけでなく心の傷も大きな課題です。特に顔や手など、人から見える部位のやけどでは、外見の変化にとまどい、外出が怖くなることがあります。
OTは以下のようなサポートも行います。
- カモフラージュメイク: 傷跡を目立たなくする化粧の方法をお伝えします
- 服装の工夫: 傷跡を自然にカバーする服の選び方を提案します
- 少しずつの外出: 安心できる場所から、少しずつ外出範囲を広げていきます
ヒント
受傷時の恐怖体験がフラッシュバックとして蘇ったり、強い不安が続いたりする場合は、心の専門家(精神科医やカウンセラー)に相談することをおすすめします。OTと心の専門家が連携してサポートします。
傷跡について「かわいそう」「大変だったね」と繰り返すよりも、「何か一緒にやりたいことある?」と前を向く声かけが力になります。ご本人のペースを尊重しつつ、日常の小さな楽しみを一緒に見つけてみてください。
社会復帰に向けて
やけどの治療は退院して終わりではありません。傷跡が落ち着くまでには1〜2年かかることがあり、その間も定期的にOTのサポートを受けることが大切です。
仕事への復帰についても、OTが職場環境の調整や必要な訓練を一緒に考えてくれます。焦らず、一歩ずつ進んでいきましょう。
ご本人・ご家族の方へ ── 大切なポイントのまとめ
- やけどの傷跡が硬く縮むのを防ぐために、早い段階からリハビリを始めることが大切です
- 圧迫ガーメントの装着やスプリントの使用は根気が要りますが、将来の関節の動きを守る大切なケアです
- 入浴時は傷跡がやわらかくなるため、関節を動かす練習のチャンスです
- 外見の変化に対するケア(カモフラージュメイクなど)もOTに相談できます
- 傷跡が落ち着くまで1〜2年かかります。焦らず、長い目でリハビリを続けてください
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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