この記事のポイント
- 視覚認知障害とは、目は見えているのに脳の損傷により物の形・位置・意味を正しく認識できない状態です
- 形態認知障害、空間認知障害、物体失認など多様なタイプがあり、日常生活に大きな影響を及ぼします
- 作業療法士は評価に基づいて、回復を促すトレーニングと代償戦略の獲得を支援します
視覚認知障害とは
視覚認知障害とは、目は見えているのに、脳の損傷により物の形や位置を正しく理解できなくなる状態です。
たとえば、目の前にあるコップが「コップだ」とわからなくなったり、物の位置関係がつかめなくなったりします。
これは目の問題ではなく、脳の問題です。脳卒中や頭部外傷の後に起こることが多く、高次脳機能障害の一種です。
視覚認知障害の種類
視覚認知障害にはいくつかの種類があります。
形がわからなくなるタイプ
- 似た形の区別がつかない
- 柄のある食器の上の食べ物を見つけにくい
- 角度が変わると同じ物だとわからない
位置や方向がわからなくなるタイプ
- 物の上下・左右がわかりにくい
- 距離がつかめず、物を取りそこなう
- 慣れた場所でも道に迷う
物が何かわからなくなるタイプ
- 物の形は見えているが、それが何か(名前や使い方)がわからない
- 人の顔を見ても誰だかわからない
ヒント
ご本人は「見えている」と感じているため、自分の障害に気づきにくいことがあります。「なぜできないのか」がわからず、困惑していることも多いのです。
評価方法
作業療法士は、以下のような方法で視覚認知障害を評価します。
- 検査: 図形の模写、パズル、絵の識別などのテスト
- 生活場面の観察: 食事、着替え、移動などの実際の場面で困っていることを確認
検査の結果だけでなく、実際の生活でどんなことに困っているかを丁寧に確認することが大切にされています。
トレーニングアプローチ
「直す」練習
- パズルや間違い探し: 形を見分ける力を鍛えます
- 積み木やブロック: 空間をとらえる力を練習します
- 物の絵合わせ: 物を認識する力を高めます
「補う」工夫
- 触って確認する: 見てわからなくても、触ると「コップだ」とわかることがあります
- 言葉で確認する: 「丸くて持ち手がある → コップ」と、特徴を言葉にすると認識しやすくなります
- 物の置き場所を決める: いつも同じ場所に同じ物を置くことで、迷わなくなります
- 柄のない食器を使う: シンプルな食器の方が料理を認識しやすくなります
日常生活の中での練習
作業療法士は、料理や手芸などの実際の活動の中で練習を行います。テストのような練習だけでなく、生活に直結した訓練を大切にしています。
物の置き場所を変えないようにしてください。「いつもの場所にいつもの物がある」ことが、ご本人の安心と自立につながります。また、柄の多い食器より無地の食器の方が認識しやすくなります。
日常生活での代償戦略
日常で使える工夫
- 着替え: 服にタグで印をつけて前後を区別する。組み合わせをセットにして保管する
- 移動: 「右に曲がって3つ目のドア」のように、道順を言葉で覚える
- 食事: 無地でシンプルな食器を使う。お皿の数を減らす
- 買い物: キャッシュレス決済を活用する
視覚認知障害についてのまとめ
- 視覚認知障害は目の問題ではなく、脳の損傷により「見えているのに認識できない」状態です
- 形がわからない、位置がつかめない、物が何かわからないなど、さまざまなタイプがあります
- パズルや間違い探しなどの練習と、触って確認する・物の置き場所を決めるなどの工夫を組み合わせます
- ご家族は物の置き場所を変えない、柄のない食器を使うなどの環境調整で支援できます
- 作業療法士は、実際の生活場面でのリハビリを大切にし、日常生活の自立をサポートします
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士(OTR)
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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