この記事のポイント
- 高齢者がデジタル機器に困るのは「やる気がない」のではなく、加齢に伴う認知・身体機能の変化が背景にあります
- 教える側が「なぜ難しいのか」を理解することが、効果的な支援の第一歩です
- 段階的な教え方、画面設定の工夫、詐欺対策で安心してデジタル機器を使えるようになります
デジタル格差が生む「孤立」
「お父さん、LINEで写真送ってよ」「お母さん、マイナンバーカードでオンライン申請して」。こんなお願いをしても、「やり方がわからない」「怖い」と断られてしまうことはありませんか。
デジタル機器が使えないと、家族とのコミュニケーションや行政サービスの利用に不便を感じる場面がどんどん増えています。
高齢のご家族にスマホの使い方を教えるには、「なぜ難しいのか」を理解することが大切です。
高齢者がデジタル機器に困る理由
高齢のご家族がスマホに苦手意識を持つのには、しっかりとした理由があります。
見えにくい・操作しにくい:
- 小さな文字やアイコンが見えにくい
- タッチスクリーンが指の乾燥で反応しないことがある
- 細かい操作(スワイプ、ピンチ)が難しい
覚えにくい:
- 操作手順を覚えながら実行するのが大変
- 新しい用語(タップ、スワイプ、アプリ)が多すぎる
- あるアプリのやり方を覚えても、別のアプリに応用しにくい
怖い・不安:
- 「変なところを押して壊してしまうのでは」という恐怖
- 「何度聞いても覚えられないと呆れられるのでは」という遠慮
- 詐欺やウイルスへの不安
ヒント
「何回教えても覚えてくれない」のは、やる気がないからではありません。加齢に伴う自然な変化が背景にあります。この理解が、イライラしない教え方の出発点です。
段階的な教え方
高齢のご家族にスマホを教えるときの5つのコツをお伝えします。
教えることを1つに絞る
- 1「LINEのメッセージを送る」だけ、に集中
- 2あれもこれも同時に教えない
手順書を作る
- 3大きな文字で操作手順を書いたカードを作る
- 4画面の写真を印刷して貼ると、さらにわかりやすい
本人にやってもらう
- 5代わりにやってあげず、ご本人の指で操作してもらう
- 6隣に座って「次はここを押して」と声で案内する
翌日に復習する
- 7教えた翌日に「昨日のあれ、やってみて」と促す
- 83回連続でできたら次のステップへ
「できた!」を一緒に喜ぶ
- 9できたことを褒める(当たり前だと思わない)
- 10成功体験が次の学習意欲につながる
- 手を奪って代わりにやらない ── 本人の学びになりません。2. 「前にも教えたでしょ」と言わない ── 萎縮して聞けなくなります。3. 専門用語を使わない ── 「タップ」は「軽くトンと触る」、「スワイプ」は「指でスーッと滑らせる」と言い換えましょう。
画面設定の工夫
スマホの設定を少し変えるだけで、格段に使いやすくなります。ぜひ以下の設定をしてあげてください。
- 文字を大きくする: 設定画面から文字サイズを「最大」に
- 画面を明るくする: 見やすい明るさに調整
- 使わないアプリを隠す: ホーム画面には本当に使うアプリだけ並べる
- 家族への電話ボタンを配置: ホーム画面にワンタッチで電話できるようにする
- 余計な通知をオフに: ポップアップが出ると混乱するので、必要なものだけ残す
ヒント
タッチペンを使うと、指の乾燥で画面が反応しない問題を解決できます。100円ショップでも購入でき、操作が格段にスムーズになります。
詐欺対策
スマホを使い始めると、詐欺のリスクにも気をつける必要があります。以下のルールをご家族で共有してください。
- 知らない番号からのメッセージのリンクは絶対に開かない
- 「ウイルスに感染しました」という画面が出ても、電話しない
- 名前や住所、カード番号を入力するときは必ず家族に相談
- 困ったらすぐ家族に聞く(これが最も大切なルール)
何か困ったときにすぐ連絡できるよう、ご家族の電話番号を大きく書いたカードをスマホケースに挟んでおきましょう。「変な画面が出たら、このカードの番号に電話してね」と伝えておけば安心です。
OTが関われる場面
スマホの使い方がどうしても覚えられない場合は、作業療法士(OT)に相談するのも一つの方法です。
- 視力や手指の動きに合わせた機器の選び方や設定のアドバイス
- ご本人の覚えやすさに合わせた手順書の作成
- タッチペンやタブレットスタンドなど、使いやすくする道具の提案
お住まいの地域で「シニア向けスマホ教室」を開催している場合もあります。地域包括支援センターや社会福祉協議会に問い合わせてみてください。
高齢者のデジタルリテラシー支援のポイント
- スマホが使えないのは「やる気がない」のではなく、加齢に伴う自然な変化が背景にあります
- 1回に教えることは1つだけ。手順書を作り、本人の手で操作してもらいましょう
- 文字サイズの拡大やホーム画面の整理など、設定の工夫で格段に使いやすくなります
- 詐欺対策は「困ったら家族に聞く」ルールの徹底が最重要です
- 「できた!」という成功体験を一緒に喜ぶことが、次の学びへの意欲になります
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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