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専門職向け#作業療法#リハビリ

最期まで「その人らしく」過ごすために ── ご家族ができること

終末期のご家族の「やりたいこと」を支えるために、作業療法士がどんなサポートをしてくれるのか、ご家族にできることは何かをわかりやすくまとめました。

📅 2026年5月4日 更新読了目安 25分

この記事のポイント

  • 終末期リハビリテーションの目的は「回復」ではなく「その人らしい時間」を支えること
  • 作業療法士は好きな活動の継続、家族との関わり支援、ポジショニングなど多面的に介入する
  • 本人の意思を尊重しつつ、多職種チームの中で「生活の質」を守る倫理的実践が求められる

終末期リハビリテーションとは何か

終末期のリハビリというと「回復するための訓練」を想像するかもしれませんが、終末期の目的はそれとは異なります。

終末期のリハビリは、ご本人が「その人らしく」過ごすための時間を支えることが目的です。多くの方が体の制限を感じながらも、「日常の活動を続けたい」と望んでいます。その願いに寄り添うのが、作業療法士の役割です。

「回復」ではなく「意味のある時間」を支える

終末期のリハビリの目標は、からだの機能を回復させることではありません。残された時間を「その人らしく」過ごすためのお手伝いです。

たとえば、長年続けてきた趣味を形を変えて楽しめるようにしたり、ご家族と穏やかに過ごせる環境を整えたり。ご本人が大切にしている「やりたいこと」を最期まで支えるのが作業療法士の専門性です。

具体的な介入例

1. 好きな活動の継続を支える

ご本人が好きだった活動を、形を変えてでも続けられるように工夫します。

  • 庭仕事が好きだった方には、ベッドのそばでの室内園芸を提案
  • 書道が好きだった方には、軽い筆ペンテーブルの角度調整で書ける環境を整備
  • 体力が限られている場合は、一番やりたいことに体力を温存する工夫を一緒に考えます

「何が好きだったか」「何をしているとき穏やかだったか」をご家族から教えていただくことが、大きな手がかりになります。

2. 家族との関わりを支援する

ご家族とご本人が穏やかに過ごせるよう、作業療法士がお手伝いします。

  • 一緒にできることを提案します(写真の整理、音楽を聴く、ハンドマッサージなど)
  • ご家族にできるケアの方法を具体的にお伝えします(手のマッサージ、クッションの当て方など)
  • ご家族の疲れやストレスにも気を配ります

研究では、ご家族がケアに参加することで、ご本人の幸福感が高まるだけでなく、ご家族自身の心のケアにもつながることがわかっています。「何かしてあげたい」という気持ちを、具体的な形にするお手伝いをします。

3. ポジショニングと安楽の確保

ご本人が楽な姿勢で過ごせるよう整えることは、とても大切なケアです。

  • クッションや枕の当て方を工夫するだけで、痛みがやわらぐことがあります
  • 呼吸が楽になる姿勢(上体を少し起こす、腕を支えるなど)を作業療法士が提案します
  • 床ずれの予防のための体の向きの変え方も、ご家族に具体的にお伝えします

クッションの置き方ひとつで、ご本人の苦痛が大きく変わることがあります。ぜひ作業療法士や看護師に相談してみてください。

多職種チームにおける作業療法士の位置づけ

終末期のケアは、医師、看護師、作業療法士など多くの専門家がチームで行います。その中で作業療法士は、「ご本人がどう過ごしたいか」という生活の視点をチームに伝える役割を担っています。

「この人は何をしているときに穏やかか」「どんな環境だと安心できるか」── ご家族が日頃感じていることを作業療法士に伝えていただくと、ケアに大きく活かされます。

終末期ケアにおける倫理的配慮

本人の意思決定の尊重

最も大切なのは、ご本人の意思を尊重することです。「もう何もしたくない」というのも立派な選択です。リハビリは「やらなければならないもの」ではなく、ご本人が望むときに望む形で提供されるものです。

ご家族の希望とご本人の希望が異なる場合もありますが、作業療法士はご本人の気持ちを丁寧に聴きながら、ご家族とも一緒に話し合います。

介入の利益と負担のバランス

「少しでも動いたほうがいい」「気分転換になるから」と思っても、ご本人にとっては負担になっている場合があります。ご本人が「つらい」と感じたらいつでもやめられることが大切です。

ご家族としては「もっとしてあげたい」気持ちがあると思いますが、そばにいるだけで十分な支えになっていることも多いです。

作業療法士自身のケア

事例で考える ── 終末期OT介入の実際

ある80代の女性は、毎朝仏壇に手を合わせることが日課でした。入院後、作業療法士がベッドのそばに小さな仏具を用意し、クッションで姿勢を整えることで、最期の数日まで朝のお祈りを続けることができました

ご家族は庭の花を持参し、一緒に花を飾る時間を共有しました。後にご家族は「あの時間があったから、母は最期まで母らしくいられた」と話されました。

ご家族だからこそ知っている「その人の大切にしていること」を、ぜひ作業療法士に伝えてください。

終末期OTに関わる主な参考文献・ガイドライン

ポイント
  • 終末期のリハビリは回復が目的ではなく、ご本人が「その人らしく」過ごすための支援です
  • 作業療法士は好きな活動の工夫、ご家族との時間づくり、楽な姿勢の調整をお手伝いします
  • ご本人の「やりたいこと」や「大切にしていること」を教えてください。それが最良のケアの手がかりになります
ご家庭でできること
  • ご本人が好きだったこと・日課にしていたことを作業療法士に伝えてください。ケアに大きく活かされます
  • ハンドマッサージや手を握ること、一緒に音楽を聴くことなど、ご家族にもできるケアはたくさんあります
  • 「何もしてあげられない」と感じても、そばにいること自体が大きな支えになっています

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