この記事のポイント
- 認知症の方の外出(徘徊)は「行動には理由がある」と理解し、安全を確保する視点が大切です
- GPS端末には専用機・スマホアプリ・靴型・お守り型など、さまざまなタイプがあります
- 多くの自治体がGPS端末の貸出・費用助成を行っており、無料で利用できる場合もあります
認知症の「徘徊」をどう捉えるか
認知症の方の外出行動(いわゆる「徘徊」)により、令和6年(2024年)には認知症またはその疑いを原因とする行方不明者届が1万8,121人分受理されています(出典: 警察庁「令和6年における行方不明者届受理等の状況」, 2025)。しかし、本人にとっては目的のある行動であることが多く、「昔の職場に行こうとしている」「家に帰りたい」といった理由が背景にあります。
OTは、ご本人の行動の意味を分析し、環境調整や活動提供により外出衝動を軽減するアプローチを行います。同時に、万が一の際に備えたテクノロジーの活用も、家族の安心を守る重要な手段です。
本記事では、GPS端末を中心とした見守りテクノロジーの種類と選び方を解説します。
認知症のご家族が一人で外出してしまうことに、不安を感じていませんか?
「徘徊」と呼ばれる行動ですが、ご本人にとってはちゃんとした理由があることがほとんどです。「昔の家に帰りたい」「仕事に行かなきゃ」など、ご本人なりの目的があるのです。
ただ、安全面での心配は大きいですよね。GPS端末を活用すれば、外出してしまったときにすぐに場所を確認でき、ご家族の不安をぐっと減らすことができます。
GPS端末の種類と特徴
1. 専用GPS端末(小型デバイス)
認知症の方の見守り専用に設計された小型端末です。
- メリット: 操作不要、小型軽量、バッテリーが長い(1週間〜1か月)
- デメリット: 月額利用料がかかる(500〜1,500円程度)
- 代表的な製品: ココセコム(セコム)、iTSUMO(アーバンテック)
- 位置精度: GPS+携帯電話基地局で数十m〜数百m
2. スマートフォンアプリ
既存のスマートフォンに位置情報共有アプリを入れて活用する方法です。
- メリット: 追加費用が少ない、多機能
- デメリット: 本人がスマホを持ち歩く必要がある、充電が必要、操作で混乱する可能性
- 代表的なアプリ: Life360、Googleファミリーリンク
3. 靴型・インソール型GPS
靴の中やインソールにGPS端末を内蔵するタイプです。
- メリット: 本人が外す心配がない、違和感が少ない
- デメリット: 専用の靴が必要、選べるデザインが限られる
- 代表的な製品: iTSUMO専用シューズ(アーバンテック)など、GPS端末を靴に内蔵できる認知症の方向けの専用シューズ
4. お守り型・キーホルダー型
お守りやキーホルダーの形をしたGPS端末です。
- メリット: 自然に持ち歩いてもらいやすい、抵抗感が少ない
- デメリット: 外してしまう可能性がある
- 工夫: 衣服に縫い付ける、バッグの底に入れるなど
5. QRコードシール・見守りステッカー
GPS端末ではありませんが、補助的な手段として有効です。
- 衣服や持ち物にQRコード付きのシールを貼る
- 発見者がスマホで読み取ると、家族に通知が届く
- 多くの自治体が無料で配布している
- 代表的なサービス: どこシル伝言板(東邦薬品)── 全国の自治体が見守りシール事業として導入
GPS端末にはいくつかのタイプがあります。ご家族の状況に合ったものを選びましょう。
小型GPS端末(専用機)
ポケットに入るくらいの小さな端末です。ボタン操作は不要で、持っているだけで位置がわかるのが特徴です。バッテリーも1週間以上持つものが多く、充電の手間も少なめです。
靴型GPS
靴の中にGPSが入っているタイプです。外してしまう心配がないのが最大のメリット。「端末を持たせても置いて出てしまう」という場合に向いています。
お守り型・キーホルダー型
お守りやキーホルダーの形をしたものなら、ご本人も自然に持ち歩いてくれることが多いです。
QRコードシール
GPSではありませんが、衣服に貼れるQRコード付きシールも便利です。見つけた方がスマホで読み取ると、ご家族に連絡が届きます。「どこシル伝言板」などのサービスを、多くの自治体が無料で配布しています。
ご本人がGPS端末を嫌がるのはよくあることです。「お守りだよ」「これを持っていると安心だからね」と自然に渡すのがコツです。衣服のポケットに入れておく、バッグの底に忍ばせるなどの方法もあります。靴型なら、ご本人が意識することなく使えます。
GPS端末の選び方
GPS端末を選ぶ際のポイントは以下の通りです。
選定の5つのポイント
- バッテリーの持ち: 充電頻度が少ないものが実用的(週1回以下が理想)
- 位置精度: GPS衛星に加え、Wi-Fi・携帯基地局を併用するものが精度が高い
- リアルタイム性: 位置情報の更新頻度(1分〜数時間と製品により異なる)
- 通知機能: 設定したエリアから出たときに自動通知(ジオフェンス機能)
- 本人の受容性: 持ち歩いてもらえるか、外してしまわないか
認知症の重症度による選択の目安
| 段階 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 軽度 | スマホアプリ、小型GPS | 自分で持ち歩ける |
| 中等度 | お守り型、キーホルダー型 | 自然に持たせやすい |
| 重度 | 靴型、衣服内蔵型 | 外す心配がない |
選ぶときのチェックポイント
- 充電はどのくらい持つ? → 週1回以下の充電で済むものが楽です
- どのくらい正確に場所がわかる? → GPSだけでなくWi-Fiも使うタイプが正確です
- エリアから出たら通知が来る? → 自宅から離れたら自動通知が届く機能(ジオフェンス)があると安心
- 本人が持ってくれそう? → これが一番大切です
認知症の進み具合で選ぶ
- 初期: スマホアプリや小型GPSでOK
- 中期: お守り型やキーホルダー型がおすすめ
- 進行している場合: 靴型が安心(外す心配がない)
費用と自治体の助成制度
GPS端末にかかる費用
- 本体価格: 5,000〜15,000円(購入の場合)
- 月額利用料: 500〜1,500円程度
- 初期費用: 契約事務手数料が必要な場合あり
自治体の助成制度
多くの自治体が、認知症高齢者の見守りを目的としたGPS端末の貸出や費用助成を行っています。
- 無料貸出: GPS端末を無料で貸し出す自治体
- 費用助成: 月額利用料の全額または一部を補助する自治体
- 初期費用の補助: 本体購入費用を助成する自治体
助成の有無や条件は自治体により異なるため、地域包括支援センターに問い合わせることを推奨します。
その他の見守りサービス
- 認知症高齢者等SOSネットワーク: 行方不明時に警察・地域住民が協力して捜索する仕組み
- 見守りキーホルダー: 連絡先を記載したキーホルダーの配布(自治体による)
- 認知症サポーター: 地域の見守りの目を増やす取り組み
GPS端末の費用
- 本体: 5,000〜15,000円くらい
- 毎月の利用料: 500〜1,500円くらい
自治体の助成を使えば無料になることも
多くの自治体で、GPS端末の無料貸出や費用の補助を行っています。
- 端末を無料で貸してくれる自治体
- 毎月の利用料を全額補助してくれる自治体
- 本体の購入費を助成してくれる自治体
お住まいの地域でどんな制度があるかは、地域包括支援センターに電話で聞いてみてください。
地域包括支援センターは、高齢者の暮らしに関する相談を無料で受けてくれる窓口です。GPS端末の助成だけでなく、認知症の方の見守りネットワークへの登録、介護保険の相談なども一緒にできます。お住まいの市区町村のホームページで連絡先を調べられます。
GPS以外にもできること
GPS端末はあくまで「万が一の備え」です。OTの視点では、外出行動そのものへのアプローチも重要です。
環境調整
- 玄関にセンサーライトやチャイムを設置し、外出に気づけるようにする
- ドアの鍵を本人が開けにくいタイプに変更する(ただし緊急避難ができるよう配慮)
- 目印になるものを玄関先に配置し、帰宅しやすくする
活動の提供
- 日中の活動量を増やすことで、外出衝動が軽減する場合がある
- 散歩の時間を決めて、付き添いで定期的に外出する
- デイサービスの利用で日中の過ごし方を充実させる
地域の見守り体制
- 近隣住民への声かけ: 認知症であることを伝え、見かけたら教えてもらえるよう頼む
- 行きつけの店に協力を依頼する
- 警察への事前届出: 特徴や写真を登録しておく
GPS端末だけに頼るのではなく、いくつかの対策を組み合わせるのが効果的です。
- 玄関にドアセンサーをつけて、開いたらスマホに通知が届くようにする
- 日中の散歩を日課にして、外出したい気持ちを満たす
- ご近所の方に「認知症の家族がいるので、見かけたら教えてください」と伝えておく
- 警察に事前届出: 特徴や写真を登録しておくと、行方不明時の捜索がスムーズです
認知症の方の外出行動は、ご家族にとって大きな不安の原因です。OTは環境調整や活動支援を通じて外出衝動の軽減に取り組むと同時に、GPS端末などのテクノロジー活用を提案し、ご家族の精神的負担の軽減にも貢献します。テクノロジーと環境調整の両輪で、安心できる暮らしを支えていきましょう。
まとめ ── 見守りテクノロジーで安心を
- GPS端末には専用機・靴型・お守り型など、さまざまなタイプがあります
- ご本人が自然に持ち歩けるタイプを選ぶことが一番大切です
- 自治体のGPS端末貸出・費用助成を利用すれば、負担を減らせます
- GPS端末だけでなく、ドアセンサーや地域の見守りと組み合わせると効果的です
- まずは地域包括支援センターに相談してみてください
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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