この記事のポイント
- ハンドセラピーは手・手関節・前腕の疾患やケガに対する専門的リハビリテーション領域
- 対象疾患は骨折、腱損傷、末梢神経損傷、腱鞘炎など多岐にわたり、作業療法士はスプリント作製・ROM訓練・浮腫管理・ADL訓練を包括的に実施
- 回復過程を理解し、時期に応じた適切な介入とセルフケアを組み合わせることが早期の社会復帰につながる
ハンドセラピーとは何か
ハンドセラピーとは、手のケガや病気に対する専門的なリハビリのことです。作業療法士が中心となって行います。
手は小さいながらも骨が28本もあり、腱や神経が密集しています。そのため、わずかなケガでも日常生活に大きな支障が出ることがあります。回復期間は多くの場合3〜6か月程度ですが、ケガの種類によって異なります。
ハンドセラピーの主な対象疾患
手のリハビリが必要になる主なケガ・病気は次のとおりです。
- 骨折:転倒で手をついたときの手首の骨折(橈骨遠位端骨折)が多いです。ギプスや手術の後、関節が固くなりやすいため早めのリハビリが大切です
- 腱の損傷:刃物などで指の腱が切れると、指の曲げ伸ばしができなくなります。手術後の管理が回復を大きく左右します
- 神経の損傷:しびれや力の入りにくさが出ます。神経の回復は1日約1mmととてもゆっくりで、長い目で見たリハビリが必要です
- 腱鞘炎:手の使いすぎで腱に炎症が起こります。安静とスプリント(固定する装具)が基本です
作業療法士の介入内容
作業療法士が行う手のリハビリには、主に4つの内容があります。
- 関節を動かす練習:固くなった関節を少しずつ動かせるようにします
- スプリント(装具)の作製:手に合わせて個別に作る固定具で、保護や関節の改善に使います
- むくみの管理:手を心臓より高い位置に保つ、圧迫する包帯を巻くなどして、むくみを減らします
- 日常生活の動作練習:箸を使う、ボタンを留める、字を書くなどの練習を段階的に行います
回復過程の目安
手のケガの回復には時間がかかります。焦らないことが大切です。
- 最初の2週間:炎症を抑え、安静にする時期。むくみのケアが重要
- 2〜6週間:少しずつ指を動かす練習を始めます。スプリントを付けながら行います
- 6週間以降:筋力の回復訓練や日常生活の動作練習を本格的に始めます
回復の目安は、手首の骨折で3〜6か月、腱の損傷で4〜6か月、神経の損傷は半年〜2年以上かかることもあります。
自宅でできるセルフケア
自宅でのセルフケアが回復の速さを大きく左右します。
やっていただきたいこと- 作業療法士に教わった自主練習を、指定された回数で毎日続ける
- 寝るときは手を心臓より高くする(枕の上に乗せる)とむくみが引きやすくなります
- 手術の傷あとは、安定したら保湿クリームを塗って柔らかく保つ
- 「調子がいいから」と自己判断で運動を強くしないでください。特に腱の損傷では再断裂のリスクがあります
- 急な腫れ、強い痛み、指先のしびれが出たら、すぐに担当医に連絡してください
多職種連携の重要性
- 手のケガの回復には時間がかかりますが、焦らず段階的に進めることが大切です
- 自宅での自主練習とむくみのケアが、回復の速さを大きく左右します
- 自己判断で運動の強さを変えないこと。必ず作業療法士や主治医に相談してください
- リハビリの最終目標は「手が動くこと」ではなく、「その手で日常生活を取り戻すこと」です
- 作業療法士に教わった自主練習のメニューを紙に書いて、見えるところに貼っておくと忘れにくいです
- 寝るときは手を枕の上に乗せて、心臓より高い位置に保つとむくみが引きやすくなります
- 「急な腫れ・強い痛み・しびれ」が出たら迷わず病院へ連絡してください
参考文献
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- Court-Brown, C. M., & Caesar, B. (2006). Epidemiology of adult fractures: A review. Injury, 37(8), 691–697.
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