この記事のポイント
- 障害のある方の就職後1年以内の離職率は約3割とされ、「就職=ゴール」ではありません
- 就職後に起きやすい困りごとは対人関係・体調管理・通勤疲労・業務量の変化の4つに集約されます
- 作業療法士は作業分析・環境調整・生活全体の視点から就労定着を支援します
- 睡眠・食事・余暇・服薬管理など生活面のサポートが定着の土台になります
- 就労定着支援事業所や障害者就業・生活支援センターとの多機関連携が継続就労の鍵です
はじめに ── 就職後1年の「壁」
障害のあるご家族が就職できたとき、とても嬉しいものです。しかし、就職はゴールではなくスタートです。
実は、障害のある方が就職してから1年以内に離職する割合はおよそ3割と言われています。「働き続ける」ためには、就職後のサポートがとても大切です。
この記事では、就職後に起きやすい困りごとと、ご家族にできるサポートについてお伝えします。
就職後に起きやすい困りごと
就職後1〜3か月経つと、疲れがたまり困りごとが出やすくなります。大きく分けて4つあります。
職場の人間関係がうまくいかない
暗黙のルールがわからない、相談のタイミングがつかめない、「配慮してもらっている」と感じて無理をしてしまう、といったことが起きやすいです。
体調を崩しやすくなる
生活リズムが変わることで、疲れがたまったり、薬を飲み忘れたりすることが増えます。休日に寝込んでしまう日が増えたら注意が必要です。
通勤で疲れてしまう
満員電車の刺激や長時間の移動は、大きな体力の消耗につながります。通勤だけでエネルギーを使い果たしてしまうこともあります。
仕事の量が変わる
慣れてきたと判断されて仕事が増えたり、新しい業務が加わったりすることがあります。ご本人は「期待に応えたい」と思って断れないことが多いです。
就労定着支援事業とは
どんな制度が使えるの?
就労定着支援という制度があり、就職後6か月から最大3年間利用できます。
支援員が月1回以上面談をしてくれて、職場とご本人の間に入って調整してくれます。生活面の相談にも乗ってもらえるので、ご家族の負担を減らすことにもつながります。
利用を検討する場合は、担当のケースワーカーや相談支援専門員に聞いてみてください。作業療法士の3つの強み
作業療法士はどんな支援をしてくれるの?
作業療法士(OT)は、仕事の場面だけでなく生活全体を見て支援してくれる専門家です。
たとえば「仕事が遅い」という悩みに対して、どの部分でつまずいているかを細かく分析し、手順書をつくる・周りの環境を調整するといった具体的な対策を考えてくれます。
「月曜に遅刻が多い」という問題も、休日の過ごし方や睡眠の問題が原因かもしれないと、生活全体から原因を探ってくれます。
生活面のサポート ── 定着の土台をつくる
家庭での生活サポートが「働き続ける」土台になります
仕事を長く続けるためには、家での生活を整えることがとても大切です。
- 睡眠リズムを整える — 毎日決まった時間に寝て起きる習慣を一緒に意識しましょう。寝る前のスマートフォンの使い方も見直せるとよいです
- 朝食を一緒に食べる — 朝食は1日のエネルギーの源です。簡単なものでもよいので、朝食をとる習慣をサポートしてください
- 休日の過ごし方を一緒に考える — 休日に寝込んでしまう日が多い場合は、軽い外出や楽しみの活動を一緒に計画してみましょう
- 服薬を見守る — お薬の飲み忘れがある場合は、服薬カレンダーやアラームの活用を提案してみてください
支援機関との連携 ── ひとりで支えない
ご家族だけで抱え込まないでください
就労定着を支えるのは、ご家族だけの責任ではありません。複数の専門機関がチームで支える仕組みがあります。
- 就労定着支援事業所: 就職後の困りごとを一緒に解決してくれます
- 障害者就業・生活支援センター(なかぽつ): 仕事と生活の両方を長期的に支えてくれます
- 主治医: 体調管理や薬の調整を行ってくれます
困ったことがあれば、まずは担当の支援員や相談窓口に連絡してみてください。「ちょっと気になることがある」くらいの段階で相談するほうが、問題が大きくなる前に対処できます。
まとめ
障害のあるご家族が「働き続ける」ためには、職場だけでなく家庭での生活を整えることが大切です。
- 就職後1〜3か月は特に疲れがたまりやすい時期です。体調の変化に気を配ってあげてください
- 睡眠・食事・休日の過ごし方を一緒に整えることで、仕事を続ける土台ができます
- 困ったときは就労定着支援事業所やなかぽつセンターなど、専門機関に早めに相談しましょう
- 何より大切なのは、ご本人の「働きたい」という気持ちを尊重することです
- 帰宅後に「今日はどうだった?」と声をかける習慣をつくりましょう。無理に聞き出さなくても、話を聞いてもらえる安心感がご本人の支えになります
- 休日に寝込む日が増えたら、一緒に短い散歩に出るなど、軽い活動を提案してみてください
- 支援機関の連絡先を冷蔵庫など目につく場所に貼っておくと、いざというときにすぐ相談できます