この記事のポイント
- 多職種カンファレンスは、医師・看護師・OT・PT・SW等が情報を共有し、方針を決める場です
- OTはICFの枠組みで「活動」と「参加」の視点から情報を整理して報告します
- 「現状報告」だけでなく「具体的な提案」をセットにすることが効果的です
カンファレンスはチーム医療の要
多職種カンファレンスは、異なる専門職が一堂に会し、患者・利用者の情報を共有し、治療・支援の方針を決定する場です。OTにとって、自分の専門性を発揮し、チーム内での存在感を示す最も重要な機会の一つです。
しかし、「何を報告すればいいかわからない」「他職種の前で発言するのが緊張する」「提案しても採用されない」といった悩みを抱えるOTは少なくありません。
本記事では、カンファレンスの種類から効果的な報告と提案の技術まで、実践的に解説します。
リハビリに関わる専門家たちが集まって、ご本人の状態や今後の方針を話し合う場を「カンファレンス」といいます。
参加するのは、医師、看護師、作業療法士(OT)、理学療法士(PT)、ソーシャルワーカーなどです。ご本人やご家族が参加を求められることもあります。
カンファレンスの種類と特徴
入院中のカンファレンス
- 入院時カンファレンス: 入院後早期に行い、初期評価結果と治療方針を共有
- 定期カンファレンス: 週1回程度、進捗の確認と計画の見直し
- 退院前カンファレンス: 退院先の環境、必要なサービス、家族指導の内容を検討
在宅・施設でのカンファレンス
- サービス担当者会議: ケアマネジャーが主催。ケアプランの作成・見直し時に開催
- 退院前合同カンファレンス: 病院スタッフと在宅スタッフが情報を引き継ぐ
- 地域ケア会議: 困難事例の検討、地域課題の抽出
その他
- リハビリテーションカンファレンス: OT・PT・ST間での専門的な検討
- 家族カンファレンス: 家族を交えた方針決定の場
カンファレンスにはいくつかの種類があります。
- 入院中の定期カンファレンス: リハビリの進み具合を確認する
- 退院前カンファレンス: 退院後の生活やサービスについて話し合う
- サービス担当者会議: 在宅サービスの内容を決める(ケアマネジャーが主催)
ご家族が参加を求められるのは、主に退院前カンファレンスやサービス担当者会議です。
ICFでOTの情報を整理する
カンファレンスでの報告を効果的にするには、情報の整理の仕方が重要です。OTにはICF(国際生活機能分類)の枠組みを使った整理が最も適しています。
心身機能・身体構造
- 関節可動域、筋力、感覚、認知機能などの評価結果
- 改善点と残存している課題
活動(ADL・IADL)
- できる活動(能力)としている活動(実行状況)の区別
- 具体的な動作の自立度(FIM、Barthel Indexなどの評価尺度)
- 活動制限の原因分析
参加
- 社会的役割の状況(家庭内の役割、仕事、趣味、地域活動)
- 参加の制約となっている要因
環境因子
- 物理的環境(自宅の構造、福祉用具)
- 人的環境(家族の介護力、サポート体制)
- 制度的環境(利用できるサービス)
個人因子
- 本人の希望、価値観、ライフスタイル
- リハビリへのモチベーション
ヒント
ICFの枠組みで整理すると、OTの視点が明確になるだけでなく、他職種にとっても理解しやすい報告になります。特に「できる活動」と「している活動」の区別はOTならではの重要な視点です。
OTはカンファレンスで、ご本人の生活全体について報告します。
- 体の状態: 手足の動き、筋力、感覚など
- 日常生活の動作: 食事、着替え、トイレ、入浴などがどのくらいできるか
- 社会参加: 趣味や外出、人との交流の状況
- 環境: ご自宅の構造や家族のサポート体制
- ご本人の希望: 「こうなりたい」という気持ち
OTの報告のコツ
SOAP形式を活用する
カンファレンスでの報告は、簡潔さが求められます。SOAP形式を応用すると整理しやすくなります。
- S(Subjective): 本人の訴え、希望「自宅のトイレに一人で行きたいとのこと」
- O(Objective): 客観的評価データ「FIM排泄: 移乗4点→5点、下衣操作3点→4点」
- A(Assessment): 専門的な分析「手すりがあれば見守りレベルで可能。下衣操作は座位バランスの改善で向上の余地あり」
- P(Plan): 具体的な計画「座位バランス訓練を継続。退院前に自宅トイレへの手すり設置を提案」
報告の3つの原則
1. 数値で示す「良くなってきています」ではなく「FIM排泄が入院時の3点から現在5点に改善」と数値で示します。他職種は「良くなっている」の基準がわからないため、客観的な数値が信頼の基盤になります。
2. 生活場面に落とし込む「ROM改善」ではなく「肩の可動域が改善し、棚の上の食器に手が届くようになった」と生活場面での変化として伝えることで、他職種にも家族にもイメージが伝わります。
3. 「できる」と「している」を区分する「リハ室ではできるが、病棟ではやっていない」という情報は、退院後の生活を予測する上で極めて重要です。この区分はOTの専門性を最もわかりやすく示せるポイントです。
報告時間の目安
カンファレンスでのOTの報告時間は3〜5分が一般的です。限られた時間で効果を最大化するために、事前に報告内容をメモにまとめておきましょう。
OTはカンファレンスで、ご本人の状態を具体的な生活の場面に置き換えて報告します。
例えば「手の動きが良くなった」ではなく、「棚の上の食器に手が届くようになった」「ボタンの留め外しが一人でできるようになった」というように伝えます。
効果的な提案の技術
カンファレンスでの発言が「報告」で終わってしまうOTは少なくありません。チームのなかで存在感を示すには、報告に加えて「提案」をセットにすることが重要です。
提案の4ステップ
ステップ1: 根拠を示す「評価の結果、○○が確認されました」と、提案の根拠となるデータを示します。
ステップ2: 課題を明確にする「そのため、退院後に○○の場面で困難が予想されます」と、具体的な課題を提示します。
ステップ3: 具体的な解決策を提示する「つきましては、○○を提案します」と、実行可能な解決策を示します。
ステップ4: 他職種への協力依頼を添える「看護師さんには病棟での○○の見守りをお願いしたい」と、他職種が具体的に何をすればよいかを伝えます。
提案が採用されやすくなるポイント
- 本人・家族の希望とリンクさせる: 「ご本人が○○を希望されているため」
- 退院後の生活に結びつける: 「退院後は○○の場面が想定されるため」
- リスクとメリットの両方を伝える: 「○○のリスクはありますが、△△のメリットが見込めます」
- 代替案も用意する: 「難しければ、別の方法として○○も考えられます」
注意
提案が却下されることもあります。それでも、OTとしての専門的見解を発信し続けることが重要です。「提案しない」よりも「提案して議論になる」ほうが、チームの質は確実に上がります。
OTはカンファレンスで、ご本人の生活をより良くするための具体的な提案を行います。
- 退院後に必要な住宅改修(手すりの設置、段差の解消など)
- 生活を楽にする福祉用具の提案
- ご家族の介助方法のアドバイス
- 退院後に利用できるサービスの情報提供
家族がカンファレンスに参加するとき
退院前カンファレンスやサービス担当者会議には、家族が参加することがあります。OTとして、家族が安心して参加できるよう以下の配慮をしましょう。
- 専門用語を使わない: 「FIM5点」ではなく「見守りがあれば一人でできるレベル」
- 家族の質問時間を確保する: 専門職の報告で時間がなくならないよう配慮
- 家族の不安に先回りする: 「退院後に○○が心配かもしれませんが」と家族の気持ちを代弁
- 書面で残す: カンファレンスの内容を要約したメモを渡す
カンファレンスに参加する際は、次のことを覚えておいてください。
- わからない言葉は遠慮なく質問してください。専門用語がわからなくて当然です
- 不安なことは何でも伝えてください。「退院後のトイレが心配」「夜中の介助が不安」など
- ご本人やご家族の希望を伝えてください。「こうなりたい」「これは困る」という声がチームの方針に反映されます
- メモを取ってOKです。内容を書面でもらえるか聞いてみてください
退院前カンファレンスに参加する前に、伝えたいことをメモしておくと安心です。「自宅のトイレに手すりがない」「夜中に一人でトイレに行けるか心配」「仕事があるので日中の介護は難しい」など、日常の具体的な不安を書き出してみてください。
カンファレンスの事前準備チェックリスト
カンファレンスの前に、以下を確認しておきましょう。
- 最新の評価データを整理したか
- 「できる活動」と「している活動」の区別を明確にしたか
- 本人・家族の希望を確認したか
- 具体的な提案を用意したか
- 他職種への協力依頼事項を明確にしたか
- 報告時間の目安(3〜5分)に収まる内容に絞ったか
- 専門用語を生活場面の言葉に置き換えたか
事前準備の質が、カンファレンスでの発言の質を決めます。「準備8割、本番2割」の意識で臨みましょう。
多職種カンファレンスは、OTの専門性をチームに伝え、利用者の生活を豊かにするための提案を行う重要な場です。ICFの枠組みでの情報整理、数値と生活場面での報告、そして「報告+提案」のセットを意識することで、チーム内でのOTの存在感は確実に高まります。
多職種カンファレンス ── 大切なポイントのまとめ
- カンファレンスはチーム医療の要。OTの専門性を示す最も重要な機会です
- ICFの枠組みで「活動」「参加」の視点から情報を整理すると伝わりやすくなります
- 数値と生活場面を使い、「できる活動」と「している活動」を区別して報告しましょう
- 「報告+提案」のセットで発言し、具体的な解決策と他職種への協力依頼を添えます
- ご家族がカンファレンスに参加する際は、わからないことは遠慮なく質問してください
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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