この記事のポイント
- 今は狭き門ではありません。リハビリ職4職種合算の有効求人倍率は4.39倍(令和7年度)とされ、作業療法士協会の会員の88.4%が働いています(2025年3月末)
- ただし将来は「資格があれば安泰」とは言えません。2019年の厚生労働省の推計では、理学療法士・作業療法士の供給が需要を上回っており、2040年頃に約1.5倍になるとされています
- 門の広さは領域で違います。病院は最多、介護・訪問は需要が伸びる側、発達支援は配置義務がなく求人が施設数ほど多くありません
- 免許は1つで、領域を変える転職は制度上できます。数字はどれも平均と推計で、保証ではありません
「狭き門?」への短い答え
「就職が狭き門なのでは。転職はできるのだろうか」。作業療法士(OT: Occupational Therapist)を目指す高校生から、いちばん聞きにくそうに出てくる質問です。先に短く答えます。
今は狭くない。ただし将来は「資格があれば安泰」とは言えない。門の広さは、どの領域に行くかで変わる。
この記事は、需要側(今の求人)と供給側(将来の推計)の数字を両方並べます。片方だけ見せると嘘になるからです。どの数字も平均と推計で、あなたの就職を約束するものではありません。それでも、数字を知ってから選ぶ人のほうが、後で後悔しにくいと思っています。
「作業療法士で食べていけるのか」は、保護者の方が最も知りたい点だと思います。本記事では、現在の求人・年収・就業率と、2019年の厚生労働省による需給推計を並べて示します。いずれも平均値・推計値であり、個人の就職や収入を保証するものではありません。判断材料として、学校の就職実績の読み方もあわせて整理します。
需要側の数字 ── 今の求人
リハビリ職の有効求人倍率(4職種合算・令和7年度)
協会会員の就業率(2025年3月末)
国家試験合格者(2026年・第61回)
有効求人倍率4.39倍とは、求職者1人に対して約4件の求人がある状態です。ただしこの数字は、厚生労働省の職業情報提供サイトで理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士の4職種を合算した値とされており、作業療法士だけの政府統計はありません。同じサイトの平均年収443.6万円も同じ合算の平均で、個人の収入を保証するものではありません。
日本作業療法士協会の会員63,352人のうち、「働いている」と回答した人は55,984人(88.4%)です(2024年度会員統計資料 表8、2025年3月31日現在)。残りには学生や休職中の人が含まれます。毎年約5,000人が国家試験に合格して(2026年は4,947人)、この中に加わっていきます。
今の数字を見る限り、就職先がない状態ではありません。
| 指標 | 数値 | 出典・注記 |
|---|---|---|
| 有効求人倍率 | 4.39倍(令和7年度) | 厚生労働省 職業情報提供サイト jobtag。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士の4職種合算 |
| 平均年収 | 443.6万円(令和7年度) | 同上。4職種合算の調査平均。個人の収入を保証しない |
| 協会会員の就業率 | 88.4%(55,984人/63,352人) | 日本作業療法士協会 2024年度会員統計資料 表8(2025年3月31日現在) |
| 国家試験合格者 | 4,947人(2026年・第61回) | 厚生労働省 合格発表 |
現時点の指標では、求人は求職者数を大きく上回っています。ただし作業療法士単独の政府統計はなく、合算値である点にご注意ください。
供給側の数字 ── 将来の推計
ここからが、多くの進路サイトが書かない部分です。
厚生労働省は2019年4月に「理学療法士・作業療法士の需給推計」を公表しました。その結論は、「PT・OTの供給数は、現時点においては、需要数を上回っており、2040年頃には供給数が需要数の約1.5倍となる」というものです。
この推計を読むときの注意が3つあります。
- 理学療法士と作業療法士を合わせた推計で、作業療法士だけの数字ではありません
- 養成校の定員が2011〜2017年の中央値のまま続くという前提で計算されています。その後、募集を停止した養成校もあり(日本作業療法士協会の一覧では204校210課程のうち13校が募集停止中、当サイト集計)、供給側の調整は反映されていません
- 需要は精神科の入院率や外来リハビリの実施率などで3つのケースに幅を持たせて推計されています。一つの数字ではありません
それでも、この推計が示す方向は無視できません。「資格を取れば一生安泰」とは、2019年の推計を見た人には言えないのです。だからこそ、どの領域で、どんな専門性で選ばれる人になるかが、これから作業療法士になる人の課題になります。
厚生労働省「理学療法士・作業療法士の需給推計について」(2019年4月)は、「PT・OTの供給数は、現時点においては、需要数を上回っており、2040年頃には供給数が需要数の約1.5倍となる」と結論づけています。
読み方の注意点は、①理学療法士と作業療法士の合算推計であること、②養成定員が2011〜2017年の中央値で維持される前提であり、その後の募集停止校(協会の養成校一覧204校210課程のうち13校、当サイト集計)は反映されていないこと、③需要は3つのケースで幅を持たせていること、の3点です。方向として、将来の供給過剰が公的に示されている点は、進路判断の前提として共有してください。
門の広さは、領域で違う
「就職できるか」を一言で答えられないのは、作業療法士の働く場所が8つあって、それぞれ事情が違うからです。
病院
最多の就職先です(勤務先が分かる会員の69.0%)。新卒の多くはここから始めます。急性期・回復期・精神科でそれぞれ求人があります
介護施設・訪問
2019年の需給推計でも、介護分野の需要は介護保険の受給者数の伸びに合わせて増える側に置かれています。高齢化とともに求人が続く領域です
子どもの発達支援
施設数は伸びていますが(児童発達支援14,855か所・放課後等デイサービス22,643か所、2024年10月)、作業療法士の配置義務がなく、求人は施設数ほど多くありません。児童福祉法関連施設で働く会員は1,330人です
精神科
法律上、精神の障害を対象に明記しているリハビリ職は作業療法士だけです。精神科病院で働く会員は4,799人で、他職種と競合しにくい領域です
行政・企業・学校
人数は少なく、募集も不定期です。経験を積んでから移る人が多い領域です
つまり、「病院で経験を積んで、行きたい領域に移る」が現実的な道筋になっている人が多いのです。発達支援の現場の実情は病院だけじゃない ── OTが働く場所と作業療法士の1日 ── 発達支援の現場からに書きました。
地域による差もあります。都市部と地方で求人の数も内容も違いますが、これを示す公的な統計は限られています。志望する地域の求人は、ハローワークの職業紹介や作業療法士協会の求人情報で、高校生のうちから眺めておくことができます。
領域別の求人状況は、病院が最多(勤務先が判明している会員の69.0%)、介護・訪問は需要が伸びる側、発達支援は施設数の増加に対して配置義務がなく求人が限定的、精神科は作業療法士固有の領域、行政・企業・学校は少数、と分かれます。「病院で経験を積んでから希望領域へ移る」経路が一般的です。地域差を示す公的統計は限られるため、志望地域の求人はハローワークや協会の求人情報で確認してください。
転職はできる?
できます。作業療法士の免許は1つで、病院でも介護施設でも発達支援でも同じ免許で働けます。領域を変える転職は制度上可能で、病院で数年働いてから発達支援や訪問に移る人もいれば、その逆もいます。
転職率のような統計は協会の会員統計にはありませんが、免許が領域共通である以上、「最初の職場が一生の職場」になる仕組みではありません。領域を変えるときの考え方は作業療法士の転職ガイドにあります(現役向けの記事です)。
ただし、行きたい領域に求人が少なければ、転職の門もそのぶん狭くなります。発達支援に行きたい人ほど、病院での経験を「回り道」ではなく「土台」として考えておくと、道が広がります。
免許は分野共通で、領域変更は制度上可能です。転職率の公的統計はありませんが、病院での経験を経て他領域へ移る経路は一般的です。希望領域の求人量によって転職の難易度は変わります。
「やめとけ」と検索した人へ
「作業療法士 やめとけ」と検索窓に打ったことがある人へ。不安なまま調べている夜のあなたは、進路を真剣に考えている人です。「やめとけ」の理由として挙がるものを、数字と事実で確かめます。
給料が低い
4職種合算の平均年収は443.6万円とされています(令和7年度)。平均であって保証ではなく、領域や地域、経験年数で幅があります。数字の読み方は年収の記事にまとめています
就職が厳しい
今の有効求人倍率は4.39倍(4職種合算)で狭き門ではありません。将来は2019年の推計で供給過剰の方向が示されています。両方が事実です
体力がきつい
領域で大きく違います。介助のある領域では腰痛が多いという調査があり、厚生労働省の指針は人力での抱え上げを原則禁じています。体力より体の使い方と道具です
人間関係が大変
作業療法士は常に他職種と組んで働きます。チームで働く仕事にはチームの難しさがあり、これはどの職種にも共通です
年収の数字は作業療法士の年収・給料のリアルに、体力の話は作業療法士に体力は必要ですかに、他職種との関係は作業療法士・理学療法士・言語聴覚士の違いに書いています。
「安泰」も「絶対就職できる」も言いません
「国家資格だから一生安泰」とは言えません。2019年の国の推計が供給過剰の方向を示しているからです。「発達領域なら絶対に就職できる」とも言えません。配置義務がなく、求人は施設数ほど多くないからです。この記事で言えるのは、今の求人は多いこと、将来は専門性で選ばれる人になる必要があること、そして数字はどれも平均と推計だということまでです。
怖い情報ごと知ってから選ぶ人を、この記事は信用しています。
「やめとけ」と検索結果に出る理由は、給料・就職・体力・人間関係の4つに集約されます。給料は4職種合算の平均443.6万円(保証ではない)、就職は現在4.39倍で将来は供給過剰の推計、体力は領域差が大きく指針と道具で対応、人間関係は多職種協働に固有の難しさ、というのが事実の整理です。「安泰」「絶対就職できる」のいずれも当サイトでは言いません。
よくある質問
新卒の就職先はどこが多いですか
病院です。勤務先が分かる会員の69.0%が病院で働いています(日本作業療法士協会 2024年度会員統計資料、2025年3月末)。急性期・回復期・精神科など、病院の中でも種類が分かれます。各職場の1日は病院だけじゃない ── OTが働く場所から読めます。
養成校の「就職率100%」はどう見ればいいですか
分母を確認してください。「就職希望者のうち」なのか「卒業生全員のうち」なのかで意味が変わります。国家試験に合格しなかった人が分母から外れていることもあります。複数年の数字と、就職先の内訳(病院・介護・その他)をあわせて見ると、その学校の実態が分かります。特定の学校の優劣ではなく、公表情報の読み方の話です。
地方でも求人はありますか
あります。ただし数と内容は地域で違い、これを示す公的な統計は限られています。志望する地域のハローワークの求人や、作業療法士協会の求人情報を高校生のうちから眺めておくと、現実が見えます。
作業療法士の仕事は将来なくなりますか
2019年の需給推計では、需要そのものは高齢化にともなって2040年まで増える見通しで、なくなる方向ではありません。問題は供給がそれ以上に増える推計になっていることです。仕事がなくなるのではなく、選ばれる人とそうでない人の差が出る、という読み方が近いと思います。
学校の就職実績はどう読めばよいですか
「就職率」の分母(就職希望者か卒業生全員か)、国家試験不合格者の扱い、複数年の推移、就職先の内訳を確認してください。特定校の優劣ではなく、公表情報の定義を揃えて比較することが重要です。
需給推計が供給過剰なら、目指さないほうがよいですか
推計は理学療法士との合算で、養成定員の据え置きを前提にしています。需要自体は2040年まで増える見通しです。「目指さない」ではなく、「専門性で選ばれる人になる前提で目指す」という読み方を、本人と共有してください。
まとめ
- 求人は今、求職者を大きく上回っています(4職種合算の有効求人倍率4.39倍・令和7年度)。協会会員の9割近くが働いています
- 一方で国の2019年推計は、理学療法士・作業療法士を合わせた供給が将来需要を上回る方向を示しています。「資格があれば安泰」とは言えません
- 就職の難しさは行き先で変わります。病院が入口になる人が最も多く、介護・訪問は需要が増える側、発達支援は配置義務がない分だけ求人が少なめです。免許は共通なので、あとから領域を変える道もあります
数字はどれも平均と推計で、保証ではありません。それでも、知ってから選んでください。次は作業療法士の年収・給料のリアルで、お金の数字の読み方を確認してみてください。
- 現在の指標: 有効求人倍率4.39倍・平均年収443.6万円(いずれも4職種合算の調査値)、協会会員の就業率88.4%。求人は求職者を大きく上回っています
- 将来の推計: 2019年の厚生労働省推計では、理学療法士・作業療法士の供給が需要を上回り、2040年頃に約1.5倍(養成定員据え置きの前提・需要は3ケース)。「安泰」とは言えません
- 領域で門の広さが違い、発達支援は配置義務がなく求人が限られます。学校の就職実績は分母と複数年で読んでください
- 数字を「保証ではなく材料」として共有する: 求人倍率・年収・需給推計の3点を、この記事の表ごと本人と見てください
- 「食べていけるの?」を「どの領域で?」に変える: 領域で求人の実情が違います。本人が行きたい領域と、病院で経験を積む道筋を一緒に確認してください
- 学校選びでは就職率の分母を聞く: オープンキャンパスで「就職率の分母」「国家試験不合格者の扱い」「就職先の内訳」を質問すると、実態が見えます
- 厚生労働省「理学療法士・作業療法士の需給推計について」(2019年4月・理学療法士・作業療法士需給分科会資料)
- 厚生労働省 職業情報提供サイト jobtag「作業療法士」(有効求人倍率・平均年収。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士の合算値)
- 日本作業療法士協会「2024年度日本作業療法士協会会員統計資料」表8 就業状況別会員数・表10-1 領域別会員数(2025年3月31日現在)
- 厚生労働省「第61回理学療法士国家試験及び第61回作業療法士国家試験の合格発表について」(2026年)
- 日本作業療法士協会「作業療法士養成校一覧」(募集停止校の数は当サイト集計)
- 厚生労働省「令和6(2024)年社会福祉施設等調査の概況」
- e-Gov法令検索「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準」
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、就職・収入・進路の保証を構成するものではありません。求人倍率・年収は複数職種を合算した調査平均、需給推計は2019年時点の一定の仮定にもとづく推計値です。最新の情報は各機関の公式サイトでご確認ください。
よくある質問
- 作業療法士の就職は狭き門ですか?
- 今は狭き門ではありません。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士を合算した有効求人倍率は4.39倍(令和7年度・厚生労働省 職業情報提供サイト)とされ、日本作業療法士協会の会員の88.4%が働いています。ただし2019年の厚生労働省の推計では、理学療法士・作業療法士の供給が需要を上回り、2040年頃に約1.5倍になるとされています。将来は「資格があれば安泰」とは言えません。
- 作業療法士は転職できますか?
- できます。免許は1つで、病院・介護施設・訪問・精神科・発達支援のどの領域でも通用します。領域を変える転職は制度上可能で、病院で経験を積んでから他の領域に移る人もいます。ただし発達支援など配置義務のない領域は求人が施設数ほど多くありません。
- 作業療法士の年収はいくらですか?
- 厚生労働省の職業情報提供サイトでは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士の4職種を合算した平均年収は443.6万円(令和7年度)とされています。調査による平均値であり、個人の収入や特定の領域の収入を保証するものではありません。
- 「作業療法士 やめとけ」と検索して不安です
- 不安なまま調べていること自体が、進路を真剣に考えている証拠です。「やめとけ」の理由として挙がるのは給料・就職・体力・人間関係で、それぞれ数字と事実で確かめられます。怖い情報ごと知ってから選んでください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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